白神山地の西側に位置する「十二湖」は実際には三十三の沼が存在するが名称は「十二湖」である。その命名の由来は諸説あるらしいが、私はそのうち二十の沼を訪れることができた。一方、日本キャニオンの方は旅日記でも触れたが、緑一色の光景の中に突如あられわれた白い針峰が連続する様は素晴らしかったがネーミングに一工夫ほしいと思った。
三十三の沼がありながら「十二湖」と命名されたことについて、「十二湖ビジターセンター」のスタッフに伺ったところ、諸説あるらしいが最も有力に説として「宝永元年(1704年)にこの地を襲った大地震によって沢がせき止められ、地盤が陥没してそこに水が溜まりたくさんの沼が形成されたが、その際崩れた山の中腹(現在大崩と呼ばれている)から眺めたときに大きな沼が十二見えたことから命名されたという説が有力です」とのことだった。その際に小さな沼は森の中に隠れて見えなかったということだ。
※ 十二湖散策の出発点とした「十二湖ビジターセンター」です。ここでマップを入手した。
私はこの日(10月18日)、「十二湖ビジターセンター」で入手した「十二湖散策マップ」を参考にして、ビジターセンターを出発点にして数種ある散策コースの中からできるだけ多くの沼を訪れるコースを選択してトレッキングに出発した。
※ 「王池東湖」です。
ビジターセンターに至るまで車を停め①「王池東湖」、②「王池西湖」、③「越口の池」(ビジターセンターの脇にある)を写真に収めた。ここからはトレッキングで車道を歩き④「中の池」、⑤「落口の池」、⑥「がま池」、⑦「鶏頭場の池」を訪れた。続いては澄み渡る美しいブルー色の水面が広がっていることから十二湖の中でも最も有名な⑧「青池」に至った。青池の手前には駐車場(有料)があり、そこからは簡易舗装もされていることから多くの観光客が訪れていた。私が訪れた時は晴れてはいたのだが、池を囲む木々の葉が太陽光を遮っていたためか、思ったほど鮮やかさには欠けるかなぁ、というのが率直な印象だった。ここまでは主として車道脇に池が広がっていることから、多くの人が目にする池である。
※ ビジターセンターの横にあった「越口の池」です。
※ 水たまりと見紛う「がま池」です。
※ ここが有名な「青池」です。
しかし、青池を過ぎると俄然登山モードの山道となる。前後には誰一人として歩いている者はいない。そんな山奥深くにあったのが⑨「四五郎の池」である。しかし、この「四五郎の池」には水が溜まっていなかった。融雪期とか大雨のときだけ現れる池なのだろうか?続いて現れた⑩「長池」は文字通り川のように長い池だった。次々と池が現れる。⑪「子宝の池」、⑫「埋釜の池」、⑬「石穀の池」と続く。これらの池はいずれも散策道の脇に現れたが、次の⑭「道芝の池」、⑮「小夜の池」は散策道を外れたところに存在した。特に「小夜の池」はいつになったら池が現れるのか山坂を上り下りした末にようやく到達したが、この「小夜の池」は私の目には「青池」以上に鮮やかなブルー色に映った。
※ 青池を過ぎると道幅も狭く、上り下りがあり登山モードです。
※ 水が枯れてしまった「四五郎の池」です。
※ 細長い形をした「長池」です。
※ 苦労の末に辿り着いた「小夜の池」はきれいな群青色でした。
その後も池は次々と現われた。⑯「八光の池」、⑰「日暮の池」、⑱「仲道の池」、この頃になると車道が近くなってきたせいか、トレッカーの方々とすれ違うことが多くなった。スタート地点の「十二湖ビジターセンター」に近くなったところには⑲「沸壺の池」があったが、この池の水の青さも印象的だった。
※ 特に説明はなかったが、間違いなくブナの巨木です。
※ 最も素晴らしい水の色に見えた「沸壺の池」です。
「沸壺の池」から車道に出ると、途中に「十二湖庵(茶屋)」があった。ここは訪れた人に無償で抹茶を提供していた。(協力金という名の募金を募っていたが)私も赤い緋毛氈に座り抹茶を一杯いただいた。(募金の方も心ばかり協力した)
※ トレッキング途中にあった「十二湖庵(茶屋)」です。
※ お茶うけまで用意された抹茶が提供されました。
そこからビジターセンターに戻り、車をピックアップして「日本キャニオン」に向かった。日本キャニオンの入り口となる駐車場のところに私にとって最後となった⑳「八景の池」が広がっていた。
結局、私は三十三の池があるうち、二十の池を目にすることができた。その印象としては確かに次々と現われる池の表情がそれぞれ違っていて興味深かった。しかし、「池」と称するようにその規模は総じて小さなものが多かったように感じた。唯一「湖」の名称を冠した「王池東湖・西湖」は確かに他の池よりは規模が大きく「湖」と称していることも分かるような気がした。心残りはできれば三十三の池を全て巡ってみたかったことだ。ビジターセンターには三十三の沼全てを訪れるマップが存在していなかったこともあり断念せざるを得なかった。
次に「日本キャニオン」である。駐車場からは約15分ほど坂を上ったところに「日本キャニオン展望所」があった。深い森の中に突然現れた凝灰岩の白い岩肌は確かに奇観である。坂道を上ってきた誰もがその光景を見た時に「わー、きれい」と歓声を上げていたが、その気持ちは分かる気がした。しかし、旅日記でも触れたが奇観は奇観であるが、本物のグランドキャニオンと比較するとその規模があまりにも小さい。せめて視界に入る全てが白い岩肌というのであれば…。もう少し工夫を凝らしたネーミングにすべきでは、と考えるのは私だけだろうか?
※ 駐車場から急斜面を上って「日本キャニオン」に向かいます。
※ 日本キャニオンの二景です。
「十二湖」と「日本キャニオン」……、それぞれの体力に応じて楽しみ方はいろいろ広がっている、という意味では多くの人たちを呼び込むことのできる観光地的要素を備えた地域だった。