ノーマライゼーション…、それは「障がい者を特別視するのではなく、障がいのない人と同じように社会で暮らしていけるようにしよう」という考え方である。そのような社会を目ざす取り組みの一つとなるイベントに参加した。
少し時間は経ったが10月1日(土)午後、北翔大学円山キャンパスにおいて、NPO法人三角山と北翔大学が主催する「いっしょにね!文化祭」が開催された。
「いっしょにね!文化祭」とは、副題に「障がいのあるひと ないひと いっしょに楽しむ発表会」と題して、その傍に「ダンス、歌、バンド演奏などのステージ発表、絵画、工芸品などの作品展示など日々の研鑽の成果を発表しあう場」と説明されていた。
私は主としてステージ発表を見続けた。ステージ発表は13の個人、団体が出場し、12時から15時30分過ぎまで発表が続くという長丁場だった。
発表した個人、グループをステージ名と発表内容を順に記すと…、
① タートルズ(医療法人老蘇会) バンド演奏
② ムーチョ(生活介護事業所) 楽器演奏【映像出演】
※ ムーチョのみんなは映像に撮っての演奏だった。
③ 吉田重子(盲人) 朗読
④ ユニバーサルカフェminna 音楽演奏【遠隔出演】
⑤ ぽっかぽっか ‘s トランペットピアノの演奏
⑥ モリンかわっぱ 馬頭琴とギターの弾き語り
※ ギターの弾き語りの方はプロとしても活動中、と伺った。
⑦ あいのさとアクターズ(知的障がい者のグループ) 演劇
⑧ NPO法人 iCareほっかいどう チームALSと放課後ディばおばぶの子どもたち(ALS患者のユニット) ハーティオルゴールを使った音楽演奏【映像出演】
⑨ 北翔大学 & ファッションマジック2022(北翔大学学生) ユニバーサル・ファッションショー
⑩ こころや(NPO法人ライフ 生活介護施設) 演劇と音楽
⑪ 医療法人稲生会(医療的ケアが必要な患者と介助スタッフ) 劇、歌、事業所紹介【ハイブリット出演】
⑫ スマイルキッズ & 布上道代タップダンスクリエーション 障がい者のタップダンス
⑬ Na Hoa Hula Anela(障がいのある方、足・腰が弱っている方のフラダンスチーム) フラダンス
とさまざまな障がいを抱えた方々が、さまざまなパフォーマンスを披露したステージ発表だった。
発表された方のいつくかを紹介すると、③の「吉田重子さん」は盲人であるが、点字翻訳機を用いての朗読だったが、とてもスムーズに聞きやすい朗読だった。最近札幌市内で朗読会が数多く行われているが、そこに出演しても遜色ないものだった。
⑤の「ぽっかぽっか ‘s」は、トランペットピアノの演奏だったが、トランペットの鈴木由紀さんは長年トランペットを続けてきたそうだが、不慮の事故に遭い右手、左足が不自由となったが、残った右手一本で演奏活動を続けているそうだ。音楽的技量も人に聴いてもらえる技量を備えていると思えた。
私が最も感動したのは⑩の「こころや」の演劇である。出演者のほとんどは知的障がい者ではないかと思われたが、彼らはナレーターを含めて全てを自分たちで演じていて、少数の介護所の職員が最小限の補助をするだけだった。ナレーターの方のナレーションは一生懸命に語っているのだが、正直に言って私には聞き取れなかった。しかし、ステージ背面にナレーションが表示されたので問題はなかった。他の出演者も自分が出来る範囲内で懸命に演じている姿が見ている者の心を打った。
その他のステージも自ら持っている能力を精一杯発揮しようとしている姿が印象的だった。
近年、東京パラリンピックが開催されたこともあり障がいを持つ方たちのパラスポーツが脚光を浴びている。これは障がいをもって生まれた人、事故などで障がい者になった方たちが残された機能をフルに発揮して競う姿が人々の共感を呼んでいるのだが、芸術分野とて同じことだと思う。障がいを負ったことをものともせずに懸命に一つの道を究めようとする姿は見ている者の胸を打つ。
※ ステージ最後は「世界で一つだけの花」を出演者たちと会場が一緒になって歌い上げた。
私は正直に吐露して、まだまだ障がい者に対する理解が十分ではないと告白せざるを得ない。というのもこれまで私の周りでそうした方に出会うことが少なかったからだと思う。しかし、今回このイベントに参加して社会には実にさまざまな障がいを持った方がいることを再確認した。ノーマライゼーション社会を目ざして先導的に活動しているNPO法人三角山や北翔大学の取組みに注目するとともに、私自身も障がい者に対する眼差しこれまで以上深めたいと考えた。私自身が近い将来、高齢者というある種の障がい者の仲間入りをするのだから…。
※ ステージの外では展示が行われていたが、残念ながら私はじっくりと見る時間がなかった。