素人さんでも十分に私たちを楽しませてくれる実力を備えている方もいることを教えられた落語会だった。一方で、落語の聴き方に一考を要する必要があるのでは、という一面もみられた「札幌落語倶楽部」の落語会だった。
“再び” とタイトル名に付けたが、「札幌落語倶楽部」の落語会の初めての体験は3月6日(日)に聴いた「ひな祭り寄席」である。この時は拙ブログでもレポしたが出演者は(ゲストの一人を除いて)全て女性だった。今回(3月27日〈日〉)の出演者は「段落落語の会 其の二」と銘打って全てが男性だった。会場は前回と同じUHBのレストラン「N1厨房」だった。
その出演者とは、綴屋段落、綴屋「 。」(つづりやかぎかっこ)、泉屋春之輔の三人である。その三人については綴屋段落さんが「ご挨拶」と称して事前にパンフをいただいていた中で触れている。まず段落さんご自身は小学校の先生を長い間務められ今春退職された方ということだった。綴屋「 。」さんは現在41歳で現役の小学校の先生だそうだ。高座名からもうかがえるように段落さんと、「 。」さんは師弟関係のような関係だという。「師弟関係のような関係」とは、「 。」さんは札幌落語倶楽部には属しておらず、今回もゲスト的な出演のようだった。つまり「 。」さんは、段落さんから落語に関わって大きな影響を受けたが、現在は独自の立場で落語の修養に励んでいるらしい。一方、泉屋春之輔さんはこの4月から中学校2年生と札幌落語倶楽部きっての若手で、まだ落語修養の緒に就いたばかりの方ということだった。
当日の「香盤」は以下のとおりだった。
「香盤」という言葉が珍しかった。そこで調べてみると、落語界において「香盤」とは序列を表す言葉だという。そういう目で見ると、なるほど段落、「 。」、春之輔の順に登場し、酉に段落が登場して締める形となっている。普通の落語の会では出演順と演目を表すのは「番組」と称されると思うのだが…。
さて肝心の落語の方だが、主宰(?)する綴屋段落さんはさすがにベテランらしく落ち着いた話しぶりなのだが「マクラ」の部分では「段落落語の会」の事情だとか、言い訳的なことがその大部分を占めていたのが気になった。「本題」の方はさすがという感じだったが、そこで気になったのが聴く側の態度についてだった。(後述します)
対して「 。」さんは、「マクラ」でも客を笑わせ、「本題」もキレのいい噺方で後半の部分の出来も秀逸だった。演題の「初天神」は私も良く知っている噺なのだが、「 。」さんらしい「初天神」となっていた。
春之輔さんはまだまだ初々しい。「マクラ」はほとんどなく、直ぐに「本題」に入っていったが、「本題」に入るとよく練習も重ねたらしくスピーディに話が進み、最後の「落ち」もなかなかだった。
※ 札幌落語倶楽部の落語の会の様子です。
さて、「聴く側の態度」についてだが、段落さんの噺になると会場のある一団が無意味とも思える高い声での笑い声を発するのだ。あまりにもそのことが繰り返されるものだから、私はすっかり冷めてしまい、段落さんの噺にも集中できなくなってしまった。彼女たちはきっと段落さんの熱烈なファンなのに違いない。だから段落さんを応援しようとする気持ちがあのような高笑いを繰り返したのだと思われる。演者を応援したいという気持ちは分からないではない。しかし、その思いが会場全体の雰囲気を壊してしまうことに心を配ってほしいなぁ、と思えた「札幌落語倶楽部」の落語の会だった。