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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

興味深かった道総研オープンフォーラム

2024-10-01 16:31:42 | 講演・講義・フォーラム等
 えっ?ニンジンが木質化するって?カボチャの軸切りってそんなに大変なんだぁ?等々、私が知らなかった農産物の生産現場の苦労と、その苦労を改善・改良する北海道総合研究機構のスタッフの創意工夫の様子を聴いた。

     

 9月27日(金)午後、かでるホールで開催された「第8回 道総研オープンフォーラム」に参加し、研究者たちのお話を聴いた。
 フォーラムは、北大副学長の横田篤氏の基調講演と、北海道総合研究機構スタッフの研究事例6本を聴く構成となっていた。研究事例の方は2部構成となっていたのだが、私は所用のため第1部のみをお聞きして会場を後にしたため、基調講演と事例発表の第1部のみのレポとなる。
 基調講演は北大副学長の横田篤氏「北海道の未来を見据えた北海道大学の取り組み~SDGsを中心に~」題して講演された。北海道大学が以前から「Sustainable Campus(持続可能な社会の構築に貢献する大学)」を標榜していたことは知っていたが、その思想は全国的に見ても他大学よりはいち早く取り組んだことを横田氏は強調されていた。またそれだからこそ、その後の研究においても着実にその歩みを続けていること話されていたと理解した。ただ講演の内容がどうしても総花的な印象が拭えず、聴いていた私には北海道大学の特徴的な取り組みを伺えなかったような印象に終わった。横田氏がSustainable Campusの北大におけるまとめ役的立場にいらっしゃる方のため致し方のない面もあったのかと思われた。

   
   ※ 講演をする横田北大副学長です。

 ということで、私の関心はむしろ北海道総合研究機構のスタッフによる具体的な研究内容・成果の方に関心が向けられた。
 その研究内容・成果の発表の第一は「隠れた不良品を紫外光でクッキリ識別~木質化ニンジン判別装置の開発~」の発表だった。
 私たち消費者は、ニンジンの芯の部分が木のように固く木質化するなどということはまったく知らなかった。ところが生産農家によると、生産するニンジンの芯の部分が木質化し、食材としては不適となるニンジンが一定数あり、それを選別することが課題となっていたということだ。
 道総研のスタッフは、その選別のために振動式、超音式、X線式(CT検査)、近赤外光式と可能性がありそうなありとあらゆる方式を試したものの思うような成果が挙げられなかったという。その末に紫外光式という方法を見出すことで識別率84.2%まで成績を向上させることができたそうだ。さらに現在はその紫外光式にAIを用いることによって性能の向上を図っているということだった。生産者の苦労、その苦労を軽減させようと奮闘する道総研のスタッフの地道な努力の姿を見た思いだった。
 続いては「つらい収穫作業を省力化~カボチャ軸切りハサミの開発~」についての研究成果の発表だった。こちらの苦労は私でも想像できる。あのカボチャの軸がいかに固いかは、私たちの手に届いてからも容易に想像できる。あの硬い軸を切り落とすには相当な力が必要で重労働を伴うことは私にも良く分かる。その軸切リハサミの性能を向上させ、かつ安全性を高めたハサミの開発に取り組んだということだ。ハサミの性能向上と安全性の確保という二律背反的な要求は研究スタッフにとっても難問だったようだが、苦心の末生産者からも満足してもらえる性能のハサミの開発ができたという報告だった。

   
   ※ 道総研のスタッフが開発したカボチャの軸切ハサミです。

 三つ目の報告は、「シイタケ生産の現場が代わる~新栽培技術とAI選別による省力化~」と題する発表だった。
 シイタケ栽培は、以前は原木栽培が主だったが、現在はそのほとんどが菌床栽培に移行しているという。その菌床栽培の場合、シイタケが菌床の上面だけでなく、横面からも伸びてくるため収穫作業が大変なのだという。さらにはシイタケの場合は製品の等級が細分化(8段階?)しているため、等級判別に多くの時間を要するという困難さがあったそうだ。
 その問題について道総研のスタッフは、トレーを培地に敷設することによって上面発生を促すように工夫したということだ。(この仕組みについて、私は良く理解できなかった)
 また、等級判別に関してはAIを活用することにより、大まかな判別が可能となり、生産者の省力化に寄与できるようになったとの発表だった。

   
   ※ シイタケの等級識別機は実演がされていました。写真の機会は3段階に識別していました。

 三つの発表を伺い、私たちの目に見えぬところで、多くの技術開発が進められていることに改めて気付かされた。現在、農業生産者は高齢化、生産人口の減少が深刻であるとも聞く。生産の効率化、省力化に北海道総合研究機構のスタッフが日夜取り組んでいることの一端を知ることができた貴重な機会だった。
 道総研では、研究の一端を道庁ロビーで「ランチタイムセミナー」と称して定期的に市民に発信してくれていたが、今回のように本格的に広く道民にアピールする「オープンセミナー」もとても良い試みだと思う。これからも機会が合ったら拝聴し、道総研の動きを知り、理解したいと思っている。


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