N響(NHK交響楽団)といえば、その実力、人気ともに日本で三本の指に入るオーケストラである。そのN響メンバーの6人による極上の響きがKitaraの大ホールに満ちた素敵な夜だった…。
時系列的には昨日の投稿と逆になったが今夜がクリスマスイブということにちなみ入れ替えてみた。「NHKクリスマスクラシックコンサート」は12月22日(水)夜札幌コンサートホールKitaraで、ジェイコム札幌とNHKの主催で開催された。
幸運なことに私は過去に4度(2014年,2015年、2016年、2018年)も同趣旨のN響選抜メンバーによるコンサートを聴いている。過去のそれはこの時期の開催ではなかったため「NHKカジュアルクラシックコンサート」と銘打ったコンサートだった。
今回のメンバーは、高橋希〈ピアノ〉、松田拓之〈バイオリン、ビオラ〉、大宮臨太郎〈バイオリン〉、松田麻美〈バイオリン〉、宮坂拡志〈チェロ〉、二山都〈オーボエ〉の6人だったが、高橋希、松田拓志の両名は5回すべてに、大宮臨太郎、松田麻美の二人はうち4回に出演しているというように、かなり馴染みの方々が出演されていた。
松田 拓之 大宮 臨太郎
宮坂 拡志 二山 都
コンサートはまずプログラムにはなかった「きよしこの夜 Kitaraバージョン」の演奏から始まった。続いて演奏された曲目は…
◇夢はひそかに(映画「シンデレラ」より)/アル・ホフマン
◇ビューティ・アンド・ザ・ビースト(映画「美女と野獣」より)/アラン・メンケン
◇ア・ホール・ニュー・ワールド(映画「アラジン」より)/アラン・メンケン
◇ゴールトベルク変奏曲(室内楽版)/バッハ
◇12月のLove song/GACKT
◇ハッピー・クリスマス/ジョン・レノン
( 休 憩 )
◇クリスマス・ジャズ・メドレー
◇15の即興曲から「エディット・ピアフを讃えて」/フランシス・ブーランク
◇ガブリエルのオーボエ/エンニオ・モリコーネ
◇ピアノ三重奏曲 第4番変ロ長調Op.11「街の歌」/ベートーベン
◇バッサカリア/ヘンデル
◇ピアノ五重奏 変ホ長調作品44/ロベルト・シューマン
〈アンコール〉◇ホワイト・クリスマス/アーヴィング・バーリン
演奏された曲目を見てコンサートの雰囲気が想像できないだろうか?クリスマスを意識しながらも、これまでのカジュアルさを感ずるコンサートが想像できるのではないかと思われる。演奏するメンバーもどこかリラックスして演奏しているように感じられたが、演奏そのものは確かな技量に裏打ちされた素晴らしいものだった。その中から私自身が特に印象に残った演奏を記すと…、
まず、「ゴールトベルク変奏曲」だった。これは私がオームストラの音の中でも特に弦楽器の響きが好きだということがその理由である。この曲は弦楽器三重奏ということでバイオリン、ビオラ、チェロだけの演奏だったことが私には特に心地良く耳に入ってきたのだった。
次は「ガブリエルのオーボエ」であるが、作曲のエンニオ・モリコーネはオーボエの特徴を十二分に活かした曲作りに成功した曲ではないかと思われるほど素敵な曲だった。
そして三つめは、このコンサートの特徴の一つなのだが、曲の合間に演奏者がかわるがわる曲紹介などのMCを務めることも特徴の一つとなっていて、それがまた演奏する側と聴く側の垣根を低くする要因となっていると私は思っている。そうした中、ジョン・レノン作曲の「ハッピー・クリスマス」の演奏前に松田拓之さんが「この曲は、ジョン・レノンがベトナム戦争に従軍しているアメリカ軍兵士に贈った曲です」と紹介し、「当時のアメリカ軍の平均年齢は何歳だったと思いますか?」と客席に問うたのだ。そして「実は従軍していた兵士の平均年齢は19歳だったのです」と紹介された。
ジョン・レノンの歌声で聴く「ハッピー・クリスマス」もいいが、クラシックのインスツルメントで聴く「ハッピー・クリスマス」も趣が違って良かった。20歳にも満たないアメリカの若者がベトナムの奥地で自らの運命が明日をもしれないという状況の中で、どのような気持ちでこの「ハッピー・クリスマス」を聴いたのかと思うと、私の中で他の曲とはまつたく違った曲として聴こえてきたのだった…。
今年のクリスマスは今まで以上に素晴らしいプレゼントをいただいたような気持ちになり、珍しく一緒にコンサートを聴いた妻と満足感に浸りながら家路に就いたのだった…。