狭山湖幻想

この秋一番の冷え込みとなった霜月朔日。いつものように早朝の多摩湖へと向けて漕ぎ出した。霜月らしい空気の中、家を出たとき「今日は久しぶりに六道山に行くか」とひとりごちた。
日を追って秋色に染まる景色の中、息をはずませ走って行く。多摩湖自転車道から六道山への分かれ道にさしかかるところで、何かに誘われるように狭山湖堰堤方面へと行き先を変更した。
朝陽の方向へと進むとふいに眩い光につつまれた。

いつも走っている道なのに、冷えた大気はいつもと何かが違う。そんなメッセージを心で受信しながら走り続けた。そして多摩湖自転車道を離れ、狭山湖堤防へ。

夜が明けて間もない狭山湖は…、

一瞬「幻を見ているのか？」と思ってしまう程の美しさだった。私ごときに写真で表現することはできない。
絶え間なく駆けていく季節とそれに追い越されまいと自転車で駆けていく自分がシンクロしているようでなんだか少し、こそばゆい気持ちになりながら来た道をゆっくりと帰って行った。

夜露が色づき始めた木々からポタポタと流れていた。

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