こゝの御城のでくる前だつたか御 ここの御城の出来る前だったか御
先々代様のおほせによつておらあ下津 先々代様の仰せに依って俺は下津
さんけらいのしゅうと大阪とあづち 様ご家来衆と大阪と安土
表にいくことになつた 表に行くことになつた
それは熊本の城下をおたてになる それは熊本の城下をおたてになる
ためだつた 下津さんなもとはなんでも ためだつた 下津さんは元は何でも
京のおくげさんのすゑのお方げな な 京都の御公家さんの末のお方だった
にことであつちのお寺におんなはつた 何事であっちのお寺に居られたのを
つば御先々代様が (以下空白) 御先々代様が
このお方はなか このお方は中
なかもちこみのふかい方であつたがぼ 々持ち込み(?)の深い方であったが坊
んさんであつたのを御先々代様がぜひとも 様であったのを御先々代様が是非とも
といふてさそうて京からこつちにつれてお出でになつた と言ってお誘いになり京都からこちらへ連れてお出でになった
ときいておつた と聞いて居った
御なんどのこつは一さいこの方にまかせきり 御納戸の事は一切この方に任せきり
であつたとかでここに御城下のでけ であつたとかでここに御城下が出来
るやうになつたつはこの人のすゝめな る様になったのはこのお人が勧めなさ
はつたことがもとだつたげな った事が元であつた
そも/\府中じやどうしてんこうしてん ば そもそも府中ではどうしてもこうしても場
しょがせまかけんこつちにうつしになつた 所が狭かったからこちらに御移しになった
がそれから古町に町がはじめた がそれから古町に町が出来始めた
次第でこの一方はお城をおこさにや 次第でこの一方で御城を興さねば
ならんちゅうふうになつてきたと 成らないという風に成ってきたと
きひておつた 聞いて居った