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桜と絵本と豆乳と

乱読する晩秋

2016年11月25日 | 読書
『使える!「徒然草」』(齋藤 孝 PHP新書)

 齋藤孝と言えば「上達論」。この新書もそれが半分以上だろう。著者がたくさんの書籍で挙げてきたことを「徒然草」の記述で確かめているというとらえ方もできる。ただ「徒然草」は、もう一つ上の人生観を深める古典でもあり、兼好の「心のエネルギー」という視点にも結びつく。これもまた、齋藤らしい切り口だ。


『教師をやめて、ちんどん屋になった!』(カチューシャ安田  無明舎出版)

 著者とは直接の面識はないが、昔、民教研の集会に参加した頃に何度か一緒になった記憶がある。音楽教師は私には憧れの対象である。それはある面で自由度の高い印象からくるのだが、この自伝的な著を読むと音楽を愛するゆえの苦悩も感じられる。教師よりちんどん屋が「音楽を広めやすい」という結論もありか。



『養生の実技 ~つよいカラダでなく』(五木寛之 角川ONEテーマ21)

 小説家というより「伝道師」「教祖」といった表現が似合う著者だ。似たようなテーマの本も読んだ。この本では「医学も、法律も、教育も、人間を普遍的な同一の存在とみなすことから出発する」という一節が心に響く。「養生」とはあくまで個であり、それゆえ「自分を感じる」に徹することは重要で、かつ難しい。


『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』(速水健朗  朝日新書)

 実に興味深く読んだ。この題名が意味するところは、「何を選び、何を食べるか」は政治選択であるということ。それも些細なことではない。著者が左翼、右翼を位置づけるために示した「食のマトリックス」の指標は、縦軸に「健康志向⇔ジャンク志向」横軸に「地域主義⇔グローバリズム」である。まず自分を定めよ。