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直感を養って生きる

2017年08月28日 | 読書
 刑事ドラマによくあるセリフとして「刑事の勘ってやつだ」といった類がある。古臭い手法の代表的な場面で使われ、ある時は嘲笑の対象となったりするが、結局犯人にたどり着くことが多いのは、視聴者もどこかで「勘」に正しさを求めているからだ。長いキャリアが培うという面はあるにしろ、勘とは直感のことだ。


(2017.8.26 OOMAGARI №2 遠く三日月を背に)

2017読了86
 『直感はわりと正しい~内田樹の大市民講座』(内田樹 朝日文庫)

 2008年から14年までの雑誌連載がまとめられた。「時評」と言うべき内容なので、その面では9年も前のことは古いとされる話題であろう。しかし著者自ら「文庫のためのあとがき」に記すように「細部ではいろいろと『お門違い』なことを書いていますけど、大筋において変わっていない現実もある」ことに気づく。


 この間に東日本大震災という未曽有の危機に瀕した国を、そう評価することに対して、どう向き合うか。内田ファンならずとも多少読み込んでいる人ならば承知だろうが、著者の言う「強い現実」とは「戦後の日本はアメリカの属国であり、主権国家ではない」こと。そしてそれを直視していないということである。


 最も痛烈と感じたのは、2013年に映画監督オリバー・ストーン氏が日本を批判したスピーチだ。どのマスメディアも取り上げなかったそれは、日本の素晴らしい文化を称えた後こう結んでいる。「けれども、私はただ一人の政治家も、ただ一人の総理大臣も、平和と道徳的正しさを代表したところを見たことがありません


 仮に一典型に過ぎないとしても、それを伝えないマスメディアしか存在しないということは、やはり属国的な気配が濃厚だ。ここでキャリアを培っている私たちは、その点を自覚しながらもっと「直感」を養わねばならない。「ヒラメキで判断できる力が人間には備わっている(はずである)」という著者の言葉を信じて。