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桜と絵本と豆乳と

参参参(十四)少々のブラッシュアップ

2023年04月03日 | 読書
 先月末までに読了した3冊。どれもささやかなヒントをもらえた気がする。


『明日の子供たち』(有川浩 幻冬舎)

 児童養護施設を舞台とした小説。営業職のサラリーマンを3年で辞め指導員になった三田村の着任から書き出されている。施設の職員、子どもたち、それぞれの現実と背景を織り込みながら話が進む。三田村の認識は、多くの読者と共通するだろう。施設の子を「可哀そう」と感じ優しさをかけたいとごく自然に思う者の言動は、個別的な関わりだけでなく、将来の展望や国の施策にまで影響を及ぼしていると知らされる。「親に捨てられた」のではなく「子供を育てる能力のない親がいる」という現実をシビアにみること。そしてその連鎖。実にわかりやすく、ささやかな希望も見いだせる一冊だった。




『生きづらさについて考える』(内田樹  毎日文庫)

 2019年の単行本発刊。今年になって文庫化された。ブログチェックも時々するので、同じ文章を見かけているように思う。そうであってもウチダ教授の一言はいつも刺激的だ。モノ、コトの見方を常にブラッシュアップしてくれる存在である。いくつかメモしているが、ここでは「僕が家庭科を大事だと思うわけ」の一節を残しておこう。家事能力が極めて低い自分であり、学校退職後も相変わらずだ。ほんの少しだけの分担に、この言葉を重ね合わせるのは生意気だと思いつつ、唸った。「家事というのは、本質的には、他人の身体を配慮する技術なのだと思う。」二人暮らしの身分は、いかに配慮されているかってことだ。



『孫をめぐるおとなの作法』(毛利子来 ジャパンマシニスト社)

 「作法」とは「心得」とか「マナー」とは違い、「現実に見合う知恵と技」の意味であることが、「はじめに」に記されている。Ⅰ章「うちあけ話 毛利さんちの場合」が示すように、肩に力を入れず坦々とした、孫育てや家族とのつきあい方が内容である。際立つような教育には思えなかった。しかし、Ⅱ章で語られている心構えこそが個の知恵や技を発揮させる。それは主に、孫の親つまり自分の子どもとの関係において、顕著である。「育てかたちがってよい」「ルールを決めておく」「責任にとらわれない」…こうした軸がぶれなければ、今まで生きてきた知恵や技は、孫育てに駆使できるのである。