すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

参参参(十七)かなしみの満開

2023年04月19日 | 読書
 満開の時期に天候に恵まれない年は今までも何度かあった。
 今年は開花が早いだけに、感覚もいつもと少し違う。なんだか桜が可哀想に思えたりする。外に出られない分、軽読書は捗る。


『小泉放談』(小泉今日子  宝島社)

 2015年末から2018年にかけて『GLOW』という雑誌に連載された対談集。小泉が50歳になる時期、「先輩」方と50代以降の生き方について語り合うという趣向。女優のYOUを皮切りに、仕事上関わりの強かった女性たちが多く、全部で25名。最終は小池百合子だったが、締めの意図でふさわしかったか。「放談」として組みやすい相手、そうでない相手がいるようだ。ただ脱アイドルを貫いてきた小泉の持ち味は、十分堪能できる。それはある意味、一歩引いた眼差しを持っていることが特徴だろう。歌手としては正直魅力が今ひとつだが、女優としてはいつも注目している。ぶれのない存在感はこの本でも発揮されている。


 今年は結構咲き具合が良かったけれど…天気がねえ


『護られなかった者たちへ』(中山七里 宝島社文庫)

 リサイクルコーナーに置かれていたので、思わず手に取ってしまった。一昨年封切られた映画はいつの間にか失念していたが、観たいと感じた物語だ。震災に絡む殺人事件ミステリというイメージを持っていた。しかしこの原作の大きな要素はまた違うところにあった。「生活保護認定」に関わる情報をほんの少しは耳にしていたが、実際の場ではこんなせめぎ合いが確かにあるだろうと想起されられる。社会への問いかけも強い。構成やストーリーはなかなか見事であり、途中から主人公が犯人でないと察しはつくが、納得のいく落としどころとなった。無料体験中(笑)AmazonPrimeにあったので、すぐ観ようと思った。



『悲しみの秘儀』(若松英輔  文春文庫)

 新聞連載エッセイがまとめられた一冊。テーマは「かなしみ」…悲しみであり、哀しみであり、愛しみにつながっていく。それを自らの心の中に、ある時は他者へ向けて、どのように紡いでいくか。深い著だと思った。著者の「コトバ」をはっきりと把握できないままに、あえて引用し、書き写す。「読むとは、記された文字を解釈することではなく、文字を通じて、その奥にある意味の深みを感じる営み」「書くとは、未知の他者にコトバを届けること」。汲み取れることは…言語に囚われるな、支配されるな、次から次へと溢れんばかりに垂れ流されている文字の中から、コトバを探し出す儀式を始めなければならない。