すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

参参参(十五)人は人によってしか

2023年04月09日 | 読書
 気温は少し下がりましたが、木の芽は赤くなり始めましたね。
 でも、まだちょっとしか浮き浮きしない…


『「つなみ」の子どもたち』(森 健  文藝春秋)

 東日本大震災から二か月後に、文藝春秋が被災した子どもたちの綴った作文を「つなみ」と題して臨時増刊号を発刊したのは印象深かった。その年度の地域文集の巻頭言にそれをもとに「作文」の意義について少しだけ触れたことも覚えている。読み直したら当然とはいえ、そこには「所詮は当事者性を欠いて」いる自分の姿があった。この本は年末に発刊され、震災からおよそ半年間のことが、作文を書いた当人というより家族全体の物語を描き出している。衝撃的な出来事がリアルに迫ってくるだけでなく、人間の受け止め方の多様さが滲み出てくる。最終的に「人」は「人」によってしか救われない…多くのエピソードが物語っていた。



あのゴミ焼却場がなくなって…こんなに…

『銀河鉄道の父』(門井慶喜  講談社)

 著者も本の存在も知ってはいた。賢治には相応の興味を持っているので、もっと早く手にしてもよかったのだが…。映画化という世俗的な話題につられて読むのもまあいいだろうとページをめくると、今まで読んできた賢治に関する評伝的なものとはずいぶんと違う印象をもった。もちろん小説であるし、父の視点が多いわけだから当然とは言える。それ以上に、この作家の持つ文体の特徴におっと思わせられた。(   )の多用。心の声として使うことは学校の作文でも一手法として教える。他の小説でも見かけるが、それが見事な描写となっている。私の中の賢治像が膨らみをもった一冊だった。



『つながる技術』(小山薫堂  PHP研究所)

 この頃BSフジ『東京会議』もあまり観なくなったので、ちょっと懐かしさ(笑)を感じて読んでみた。10年以上前の著書だがその姿勢はちっとも変わらない。書名にある技術の観点を「出会い」「想像力」「運」「人間力」「ハート」「夢」と区分しているが、基本的に一緒である。ありきたりだが、ポジィティブと括られる。「マイナスには、チャンスの種がたくさんつまっている」という思考ができれば、人は何事も焦点化し前進していく。この本が出た頃は高校生だった一人の若きスーパースターが語っている言葉と、とてもよく似ていると気付いた。日本中いや世界中に魅力を振りまいてくれる大谷翔平である。