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参参参(十八)人間は平等

2023年04月24日 | 読書
 変な天気と、明らかに感じるようになったのはここ十年ばかりだろうか。
 気温の高低差、不規則さ、風の強い日が続く…
 とまあ外の世界がどうあっても、本を読んでまた異なる世界を覗けば、それも良し。


『今日は誰にも愛されたかった』(谷川俊太郎、岡野大嗣、木下龍也)

 裏表紙によれば。「国民的詩人と新鋭歌人二人の詩と短歌による『連詩』と『感想戦』を収録」という内容だ。連詩も今ひとつわかりにくいし、感想戦という鼎談を読み、なるほどといくつか思った程度だ。しかし、そこは言語を扱う手練れたち。所々に興味深い一節が散りばめられる。谷川の「詩について」という説明は300字の短文だが、さすがと思わせられた。「ポエジーがポエムを生むこともあるし、ポエムがポエジーを生むこともある」…この当たり前のように見える一節に、ポエムづくりの達人の極意を見た。若い歌人二人の話は、短歌の現状も知られて楽しい。「ただごと歌」というジャンル?があると初めて知った。





『憲法という希望』(木村草太  講談社現代新書)

 気鋭の憲法学者の本は、思ったよりは読みやすかった。私はどちらかを選べと言われれば「護憲」であり、その立場からみてもナルホドと思わされる記述は結構多い。冒頭の引用(憲法学者蟻川恒正氏)はガツンとくる。「尊厳の担い手となった個人が公権力の担当者に憲法を守らせる」…その実現のためには「憲法を使いこなす」必要があることも理解できた。ただ、この本で一番うわぁとなったのは17世紀の哲学者ホッブズの言葉。曰く「人間は事実としてみんな平等なのだ」。それは「最も弱い者でも、工夫を凝らせば最も強い者を殺すことができる」という論理に基づく。これには揺さぶられる。法の成り立ちに思いを巡らす。



『美しいものを見に行くツアー ひとり参加』
   (益田ミリ  幻冬舎文庫)


 風呂場での軽読書にいい一冊。「北欧オーロラの旅」に始まりドイツ、フランス、ブラジル、台湾そしてカナダと六ヶ所の「ツアーひとり参加」の様子が楽しく描かれている。2016~2018年に夫婦で三度ツアーに出かけたとき、毎回そうした単独参加の方はいて、多くは旅慣れている感じだった。著者も8年間で様々な形のツアーを体験しずいぶんと成長したように読める。これは物書きとしての観察力、反省力に長けているからだろう。マンガ、写真そして文章で語られる「旅の工夫」は、一人参加の枠を越えて十分に役立つし、ツアー旅のささやかな楽しみ方、良さを見い出すいいヒントになるのではないか。ああ、もう一度海旅行に行きたい。