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「今=ここ」に留まらず

2025年02月06日 | 読書


 日本人の見通しの甘さや、同じ過ちを繰り返す国民性、さらには「空気」に支配される風潮について書かれている本を何冊も読んできた。なぜそうなのかを著した部分はあったかもしれないが、あまり覚えていない。『日本文化における時間と空間』はまさにその答に迫ったものだ。難解だったが、興味深く向き合った。


 「日本では人々が『今=ここ』に生きているようにみえる」。そうした「世界観」を持つに至った、日本文化の歴史を「時間」と「空間」の両面から解説している。「過去は水に流す」「明日は明日の風が吹く」の慣用句に頷いてしまう精神性もそのなかで作り上げられ、私たちの多くは、視角90度程度で生きている。


 中国や韓国外交で繰り返される戦争保障問題や、現在戦争が行われている地域に関して、一通りの歴史や原因は分かっていても、真底から理解していない訳もそういうことかと納得した。さらに問題なのは「今=ここ」が「大勢順応主義」と結びついていることだ。私たちは、そうした伝統的文化の中で生きてきた。


 『沈黙する知性』は二人の対談集。冒頭に内田氏が語る「まず同意する」対話の作法には、まず同意した。問題なのはその後であり、そこから他者との接点を語りながら、複眼的に新たなものを作り上げることこそ「知性」ではないか…そんなふうに捉えた。ありえたかもしれない世界」への想像力を忘れないことだ。


 『日本文化~』と絡ませた時、この国の大きな失敗はやはり太平洋戦争終結の遅さにある。「今=ここ」しか見えなかった指導者たちの理性のなさは、犠牲者を莫大に増やし、見る風景を大きく変えてしまった。80年が経ち唖然とするだけでなく、水に流したものを、明日の風を、もっと自力で想像し、歩みたい。


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