今回は、令和2年-厚年法問9-A「退職時改定」です。
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被保険者である老齢厚生年金の受給者(昭和25年7月1日生まれ)が70歳
になり当該被保険者の資格を喪失した場合における老齢厚生年金は、当該被
保険者の資格を喪失した月前における被保険者であった期間も老齢厚生年金
の額の計算の基礎となり、令和2年8月分から年金の額が改定される。
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「退職時改定」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 R1-1-C 】
老齢厚生年金の額の計算において、受給権者がその権利を取得した月以後
における被保険者であった期間は、その計算の基礎としないこととされてい
るが、受給権取得後の受給権者の被保険者であった期間については、被保険者
である受給権者がその被保険者の資格を喪失し、かつ、被保険者となることな
くして被保険者の資格を喪失した日から起算して1か月を経過したときは、
その被保険者の資格を喪失した月前における被保険者であった期間を老齢
厚生年金の額の計算の基礎とするものとする。
【 H14-5-C 】
被保険者である受給権者が被保険者の資格を喪失し、そのまま3月を経過
したときは、喪失した月までの全ての被保険者期間を年金額の計算の基礎
として計算し、3月を経過した日の属する月から年金額が改定される。
【 H16-4-A[改題]】
特別支給の老齢厚生年金の受給権者である被保険者が、被保険者の資格を
喪失したまま1月を経過したときは、喪失した日までのすべての被保険者
期間を年金額の計算の基礎として計算し、当該資格を喪失した日(資格喪失
事由のうち死亡したとき又は70歳に達したとき以外の事由のいずれかに該当
するに至った日にあっては、その日)から1月を経過した日の属する月から
年金額が改定される。
【 H23-9-B 】
60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金を受給している被保険者が、その被
保険者の資格を喪失し、かつ被保険者となることなくして被保険者の資格を
喪失した日から起算して1か月を経過したときは、その被保険者の資格を
喪失した月前における被保険者であった期間を老齢厚生年金の額の計算の
基礎とするものとし、資格を喪失した日の属する月から年金の額を改定する。
【 H26-6-A 】
63歳の在職老齢年金を受給している者が適用事業所を退職し、9月1日に被
保険者資格を喪失した場合、同年9月15日に再び別の適用事業所に採用され
て被保険者となったときは、資格を喪失した月前における被保険者であった
期間に基づく老齢厚生年金の年金額の改定が、同年10月分から行われる。
【 H28-8-A 】
在職老齢年金の受給者が平成28年1月31日付けで退職し同年2月1日に
被保険者資格を喪失し、かつ被保険者となることなくして被保険者の資格を
喪失した日から起算して1か月を経過した場合、当該被保険者資格を喪失
した月前における被保険者であった期間も老齢厚生年金の額の計算の基礎
とするものとし、平成28年3月から年金額が改定される。
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「退職時改定」に関する問題です。
年金額の改定のタイミング、いろいろな規定から出題されますが、これらは、
退職時改定に関するものです。
老齢厚生年金の額の算定においては、まず、「受給権者がその権利を取得した
月以後における被保険者であった期間は、その計算の基礎としない」として
います。
ただ、その後、被保険者期間を有することがあるので、その期間をいつ年金額
に反映させるのかといえば、退職時改定によることになります。
その退職時改定、例えば、被保険者資格を喪失し、喪失した月に再取得という
ことですと、被保険者期間としては1月の間もなく継続してしまい、切れ目が
ないので、行われません。被保険者期間が途切れたということが明らかになる
タイミングで行います。
そのため、資格を喪失して1か月以上被保険者となることがなければ、被保険
者期間とならない月が少なくとも1月は発生します。このタイミングで改定が
行われます。
つまり、「被保険者の資格を喪失し、かつ被保険者となることなくして被保険者
の資格を喪失した日から起算して1か月を経過したとき」に行われます。
【 R1-1-C 】は、この退職時改定の要件を論点にしていて、正しいです。
その他の問題は、退職時改定(70歳到達時の改定)の要件のほか、その時期も
論点にしています。年金額の改定は、
70歳に達したことによる資格喪失であれば、資格喪失日
退職等による資格喪失であれば、退職等の日
から起算して「1か月を経過した日の属する月」から行われます。
ということで、
「3月を経過した日の属する月から」としている【 H14-5-C 】は、明らか
に誤りです。【 H16-4-A[改題]】は、正しいです。
【 H23-9-B 】では、「資格を喪失した日の属する月から」としています。
そうではありません。「資格を喪失した日(「死亡」又は「70歳到達」以外の
資格喪失事由のいずれかに該当するに至った日にあっては、その日)から起算
して1か月を経過した日の属する月から」なので、誤りです。
【 H26-6-A 】は、事例として出題したもので、被保険者資格の喪失が
9月1日、別の適用事業所での被保険者資格の取得が同年9月15日と、同月
に喪失と取得が起きています。このようなときは、その月は、被保険者期間
として算入されるため、退職時改定は行われないので、誤りです。
【 H28-8-A 】と【 R2-9-A 】も、事例として出題したものです。
【 H28-8-A 】の場合、1月31日に退職であれば、退職日から起算して
1か月を経過した日の属する月から、年金額の改定が行われるので、「3月」
ではなく、「2月」から改定が行われます。「資格喪失日から1か月が経過した
日の属する月から」と思わせようとしたのでしょうが、退職の場合は、そう
ではありませんので。
【 R2-9-A 】の場合、令和2年6月30日に70歳に達し、その日に
資格を喪失するので、6月30日から起算して1か月を経過した日(7月30日)
の属する月である7月分から、年金の額が改定されます。「8月分」からでは
ありません。誤りです。
年金額の改定については、「その月から」というものと、「その翌月から」という
ものがあります。
ここは、論点にされやすいので、間違えないようにしましょう。