百醜千拙草

何とかやっています

浴衣と縁側

2007-07-01 | Weblog
図書館から昔のDVDを借りてきました。小津安二郎の浮き草とイングマール ベルイマンのサラバンドです。最初にアメリカ映画のシカゴを手に取ってから、浮き草があるのに気が着き、この週末にこれを見ようと決めたのですが、小津安二郎とシカゴではなんだか食い合わせになりそうな気がして、シカゴをやめて小津安二郎につりあいそうなものというわけですぐそばにあったベルイマンを借りることにしました。そうはいってもベルイマンの映画は生まれてから一回しか見たことはありません。二十年以上も前にファニーとアレクサンデルを見たただ一回で、やたらに長い映画で途中休憩があったのをのを覚えています。冬だったので、映画館にはお昼前に入ったのに出てきたときには外は真っ暗でした。しかも面白かったかどうかも覚えていません。だからきっと名作だったに違いないと思うのです。今回のサラバンドは最近の作でしかも2時間弱なので、私がぼんやりと覚えている、名作の映画ををつくるらしい人という印象がここでも通じるかどうかは分かりません。(まだ見ていないので)。小津安二郎の浮き草は早速見ました。ストーリーはあるような、ないような感じできっと最近のアメリカ映画しか見たことのない人には受けないだろうなと思いましたが、私は思いのほか楽しめました。絵がきれいです。そこにある風景をそのまま切り取ってきて画面にのせたといった感じで、素材の新鮮な持ち味が直に伝わってきます。映画は私が生まれる前のものですが、そこにあらわれる細かなものの様子に懐かしさみたいなものを感じたのでした。私が子供の頃、浴衣姿のきれいなお姉さんが横すわりに蚊取り線香の宣伝をする看板が学校の登下校の通り道にありましたが、それは京マチ子だったような気がします。浮き草での京マチ子はちょっと中年でしたが、日本的美女だと思いますし、一緒に出ていた若尾文子も若々しくて美しく着物姿がなかなか奥ゆかしい日本の情緒を感じさせるのでした。杉村春子はなぜか最近と余り変わって見えませんでした。そこに出ている人々は夏は浴衣姿の下駄履きで、暑い日には蚊取り線香を焚いて縁側でうちわ片手に夕涼みをするのですが、私の子供の時もそうして夏は過ごしたことを思い出します。夏祭りには浴衣を着て夜店に行ったりしたものでした。いつから縁側が家から無くなり、打ち水のかわりにエアコンのスイッチを入れるようになり、浴衣の代わりにTシャツとショーツになったのかよく覚えていません。おそらく浴衣、縁側といった夏の風情は、エアコンと集合住宅の普及によって、急速に失われたような気がします。ともあれ、この映画は私に子供時代の懐かしい生活を思い出させてくれたのでした。できればあの頃に戻ってみたいと思います。大学院の頃の夏の週末は、浴衣を着てビールを飲むのが楽しみでした。浴衣を着て街中を歩くと目立つので、部屋のなかでくつろぐときに気分を盛り上げるためにそうしていたのでした。浴衣は直線で作られた一続きの布というシンプルな着物ですが、襟をぴっしりと合わせて角帯を丹田の下に結ぶと、爽やかな気持ちになるのでした。人目のない夜などは、下駄を履いて近所を散歩したりしたものですが、風を含んでくずれそうにそんなる裾をすねで捌きながら歩くのがまた楽しかったりしたものでした。最後に浴衣を着たのは十年も前ですが、もっと年をとって余裕ができたらまた仕立てたいと思っています。
コメント (2)
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