前回、生命科学研究では、真っすぐに結果を目指しても到達できることは稀であるという事実をもっと認識しようというScience誌のChief Editor、Bruce Albertsの提言についてふれました。4/4号では、Albertsは更に、がん研究に対しても同様の批判を展開し、応用ばかりを考えずにもっと基礎の理解を進めねばならないと述べています。トップダウン式のストラテジーが機能しない生物学研究では、一歩一歩、自分の立っている基盤に少しずつ積み重ねていくことでしか進歩はないと、私も思います。「急がば回れ」という言葉には、長期的目標への到達という含意がありますが、臨床応用を目指したプロジェクトの場合には、しばしば、最終目標と現在での知識や技術の間に何ステップあるかわからないし、そもそも各ステップを無事クリアできるかどうかもわからないという状態であるので、結果を目指して一直線に研究を進めようとするのがそもそも無理なのだと私も思います。適切な喩えではないかも知れませんが、これは最近大規模な臨床試験で無惨な敗北を喫したAIDSワクチンにも当てはまることかも知れません。
ところで、「急がば回れ」ということわざで思い出したのは、エレキの神様、ベンチャーズの曲でした。この曲の原題は、「Walk, don't run」で、今調べてみると、この曲は1960年にリリースされUS ヒットチャートNo.2を記録しています。本国アメリカではとっくの昔に忘れ去られたグループかと思いますが、日本ではエレキブームの立役者として、またいくつかの日本の歌謡曲の作曲者として未だに人気があると思います。欧陽菲菲の日本デビュー曲「雨の御堂筋」はベンチャーズの作曲によるものだそうです(3カ国共同プロジェクトですね)。私が中学生のころ、初めて手に入れたエレキギターを見て、母親は「テケテケ」は嫌いだと言いました。当時でも、すでにベンチャーズは過去の人、テケテケという言葉は知っていても、ベンチャーズ以外にテケテケをやるようなグループはいなかったわけですし、私は本物のテケテケを聞いた事はありませんでした。当時の軽音楽部は、ハードロックやヘビメタが流行っていて、フェンダーストラタキャスター(のコピー)にリッチーブラックモアモデルの妙に分厚いピックを使うのが流行でした。リッチーブラックモアがテケテケやったのでは冗談です。「ダイヤモンドヘッド」のイントロに使われている、ピックで弦をこすってキュッキュというような音を出す妙なベンチャーズ特有のギターテクニックもありました。今知りましたが、テケテケにはちゃんとした正式名称があって、chromatic run 奏法というのだそうです。ですので、それからしばらくして、本物のテケテケを聞いた時は、新鮮な感動がありました。モズライトギターと真空管アンプの組み合わせが創り出す妙に安っぽい音色のテケテケを初めて聞いた時は「おお、これが、あの、テケテケか!」という幻のオオクワガタを発見したかのような思いにとらわれました。もちろん、その後、毎日テケテケを練習したのはいうまでもありません。確かにベンチャーズサウンドの味わい深い安っぽさは日本の歌謡曲にぴったりです。Deep Purpleが歌謡曲をつくっても売れないでしょう。そのベンチャーズが、なんと、今年になってロックの殿堂入りを果たしました。ロックの殿堂は、オハイオ、クリーブランドの唯一の観光資源だそうですが、その授賞式では、「Walk, don't run」が演奏されたのだそうです。ベンチャーズファンの科学政策関連の人には現在の医科学研究政策に対する警笛と真摯に受け止めて欲しいと思います。因に、マドンナを含む5組(名)の2008年ロックの殿堂受賞者の中で、ベンチャーズはもっとも早いデビューでした(マドンナが1歳の時に結成されています)。おめでとう、ベンチャーズ。
ところで、「急がば回れ」ということわざで思い出したのは、エレキの神様、ベンチャーズの曲でした。この曲の原題は、「Walk, don't run」で、今調べてみると、この曲は1960年にリリースされUS ヒットチャートNo.2を記録しています。本国アメリカではとっくの昔に忘れ去られたグループかと思いますが、日本ではエレキブームの立役者として、またいくつかの日本の歌謡曲の作曲者として未だに人気があると思います。欧陽菲菲の日本デビュー曲「雨の御堂筋」はベンチャーズの作曲によるものだそうです(3カ国共同プロジェクトですね)。私が中学生のころ、初めて手に入れたエレキギターを見て、母親は「テケテケ」は嫌いだと言いました。当時でも、すでにベンチャーズは過去の人、テケテケという言葉は知っていても、ベンチャーズ以外にテケテケをやるようなグループはいなかったわけですし、私は本物のテケテケを聞いた事はありませんでした。当時の軽音楽部は、ハードロックやヘビメタが流行っていて、フェンダーストラタキャスター(のコピー)にリッチーブラックモアモデルの妙に分厚いピックを使うのが流行でした。リッチーブラックモアがテケテケやったのでは冗談です。「ダイヤモンドヘッド」のイントロに使われている、ピックで弦をこすってキュッキュというような音を出す妙なベンチャーズ特有のギターテクニックもありました。今知りましたが、テケテケにはちゃんとした正式名称があって、chromatic run 奏法というのだそうです。ですので、それからしばらくして、本物のテケテケを聞いた時は、新鮮な感動がありました。モズライトギターと真空管アンプの組み合わせが創り出す妙に安っぽい音色のテケテケを初めて聞いた時は「おお、これが、あの、テケテケか!」という幻のオオクワガタを発見したかのような思いにとらわれました。もちろん、その後、毎日テケテケを練習したのはいうまでもありません。確かにベンチャーズサウンドの味わい深い安っぽさは日本の歌謡曲にぴったりです。Deep Purpleが歌謡曲をつくっても売れないでしょう。そのベンチャーズが、なんと、今年になってロックの殿堂入りを果たしました。ロックの殿堂は、オハイオ、クリーブランドの唯一の観光資源だそうですが、その授賞式では、「Walk, don't run」が演奏されたのだそうです。ベンチャーズファンの科学政策関連の人には現在の医科学研究政策に対する警笛と真摯に受け止めて欲しいと思います。因に、マドンナを含む5組(名)の2008年ロックの殿堂受賞者の中で、ベンチャーズはもっとも早いデビューでした(マドンナが1歳の時に結成されています)。おめでとう、ベンチャーズ。