百醜千拙草

何とかやっています

鼻血の証明

2014-05-13 | Weblog
ずっと(仕事関係の)書き物モードで、大した話題がありません。

STAP騒動はさすがに鎮静化しました。このまま尻窄みとなるでしょう。訴訟にはならないだろうし、このままです。研究者であれば、普通、研究不正は重罪であることを知っているはずで、にもかかわらず、あえて研究不正をする人間には大抵、強い動機があるものです。つまり、追いつめられて苦しみから逃れるために不正に手を染めるのですが、この件の場合は、ちょっと違うような感じがします。まるで捏造、写真の使い回し、細胞のすり替え、そうしたことが悪いことであるという認識も十分になかったかのような印象があります。振り返れば、この事件においては、追試すればすぐにバレるウソをつく、という(幼稚さまたは病的さ)が、私がもっとも驚いた点です。つい最近、香港グループのSTAPができないことを「証明した」論文は正式にアクセプトされたようです。Natureは間もなくEditorial retractionをするだろうと思います。

このドタバタ騒動が収束する一方で、「美味しんぼ」の鼻血の話題がまだ続いております。私はメディアやネットに出てくる意見の多くは、体制側に都合のよいようなバイアスがかかっていると思っているので、メディアが騒ぎ立てるほど、実際の世間のでは、この福島での鼻血を書いたことに対して、「風評被害」、「福島の復興を妨害」、「差別を広げる」、などという意見に与する人は多くないだろうと想像しております。

漫画に出てくる双葉町前町長が、「私自身、毎日鼻血が出て、特に朝がひどい。発言の撤回はありえない」「なぜあの大臣が私の体についてうんぬんできるのか」(井戸川前双葉町長)と、自民党の石原氏の鼻血と放射能被爆との関係を否定した発言にあらためて異を唱えました。自民党のデタラメをあらためて繰り返しても虚しいだけですが、この件に関しての自民党のデタラメさを「きっこのブログ」が取り上げています。この方は文章力がありますね。

「美味しんぼ」の問題に関する個人的見解

‥‥そんなワケで、話はクルリンパと戻るけど、あたしが冒頭で「どうしても納得できない点がある」と書いたのは、自民党のスタンス、そして、福島県のスタンスについてだ。それは、原発事故後の民主党政権下で、当時、野党だった自民党の議員が、国会で、「子どもたちがたくさん鼻血を出している。これでも安全だと言えるのか?」と民主党に詰め寄ったり、当時の双葉町町長だった井戸川氏の鼻血の例を挙げて、民主党政権の原発事故対応を批判していたからだ。具体的に言うと、2012年3月14日の参院予算委員会で、自民党の参議院議員の熊谷大(ゆたか)氏は、民主党政権に対して、次のように質疑をしている。

「(大臣や官房長官は)大きな不安はないと言っていますが、これは(宮城県の)県南のある小学校の保健便りです。4月から7月22日までの保健室利用状況では、内科的症状で延べ人数469名に頭痛、腹痛、鼻出血が出ているんです。こういう結果が出ているのに、それでも本当に不安はないと言えるのですか?」

(中略)

‥‥そんなワケで、これらの自民党議員の質疑を見れば分かるように、今から2年前の民主党政権下では、自民党は、「原発事故による被曝の影響で、周辺地域では子どもたちに鼻血などの症状が多発している」として、当時の民主党政権の事故対応を批判していたのだ。「安全だ」「直ちに健康に影響はない」と言っていた事故当時の枝野幸男官房長官や、後の平野博文文部科学相を批判していたのだ。


結局、政治家も自分の身に直接関係のないことには「事なかれ主義」なのです。自分に直接関係なければ、国民の命も健康など、どうでもいいというのが本音でしょう。福島の放射能汚染は軽度で、健康被害もなく、復興も順調であるほうが、都合がよいのです。与党政府も東電もそうであって欲しいから、情報の 隠蔽、捏造、不正に手を染めるのでしょう。福島の、役場もそう思っているし、避難したくても避難できずに住み続けている人も、少なからずはそう思っていたいでしょう。

しかし、これは福島だけの問題ではなく、全国的問題です。ウワサのレベルでは遠方の県の米などの農産物にも放射能汚染されたものが混入されているという話はしょっちゅう聞きます。事実、数年前には兵庫県産であるはずの米から放射能が検出され、実は東北産の米が混ぜられていたという事件がありました。

甲板の椅子をいくら並べ替えてもタイタニックの沈没を防ぐことはできません。いくら情報をコントロールしたところで放射能汚染そのものがコントロールできるものでもありません。現実をしっかり把握することから始めるしか本当の解決は有り得ません。

現双葉町町長は、「福島第1原発の事故直後から全町避難を強いられていますが、原因不明の鼻血等の症状を町役場に訴える町民が大勢いるという事実はありません。町民だけでなく、福島県民への差別を助長させる」との抗議文を出版社に出したそうですが、それに対して、ネットでは、「双葉町では、鼻血を出したら町役場の『鼻血課』にでも行って届け出をすることになっているのか」、と鋭いツッコミ。おそらく、双葉町役場には「鼻血課」もなく、町民に鼻血の届け出義務もないだろうと想像します。町役場に鼻血等の症状を訴える町民が大勢いなくても何の不思議もありません。鼻血が止まらなければ役場ではなく耳鼻科にいくでしょうから。「役場に鼻血を訴える人が大勢いるという事実はない」ということを以て、あたかも「鼻血を出す町民は大勢はいない」という結論に誘導しようとする意図が見えます。事実、新聞などでは、(おそらく意図的に)この町長の発言を「原因不明の鼻血などの症状を訴える町民が大勢いるという事実はない」と、誤って伝えています。「原因不明の鼻血等の症状を町役場に訴える町民が大勢いるという事実はない」という原文との差には驚くばかりです。ま、新聞の捏造、偏向報道はいつものことですが。「鼻血の事実がない」ことを証明するのは、多分、STAP細胞がないことを証明するよりも難しいと思うのですが。

この美味しんぼの鼻血の件に関しては、「賢人」の意見を聞いてみたいと思います。私の頭に浮かんだその役に最適な「賢人」は、漫画家にして哲学者、元祖「鼻血ブー」の谷岡ヤスジさんでしたが、残念な事に、谷岡さんは既に地上を去って久しく、現在では誰が鼻血の決着を着けてくれるのか、私には見当がつきません。
コメント
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