百醜千拙草

何とかやっています

美しいお話、美しい国

2015-08-21 | Weblog
某雑誌に投稿して二週間、Editorial rejectionのメールが来ました。この雑誌は過去4回挑戦しましたが、Editorial reviewをパスしたことが一度もありません。論文は遺伝子発現を広く調節するコンプレックスの役割を調べたもので、その作用は二つのシグナル伝達経路に収束するということをin vivo で示したのですけど、エディターはメカニズムで「遺伝子」を特定していないのが弱いというようなコメントでした。この雑誌に限りませんが、このレベルの雑誌のエディターの「遺伝子中心主義」とでもいうべき評価基準は根深いものがあると思います。幅広く遺伝子発現を調節するような分子の働きを包括的に調べるという研究では、限られた数の遺伝子でその生理的メカニズムを説明できることはまずありえません。だからこそ異なったレベルでのメカニズムの記述が必要だろうと私は思うわけですが、エディターの方ではそうは考えてはくれないです。「単純で美しいお話」を一流紙は好むので、書く方もそういうセンに沿っての選択圧がかかるのでしょう。それでますます、シンプルで美しいお話ばかりが一流紙に載り、メカニズムの部分が想定されるような形で提示されていないような論文は嫌われるということになるのでしょう。

ま、この単純で美しい話を好むというのは、もちろん、エディターに限ったことではなくレビューアもある程度、同じメンタリティを共有していると思いますから、仮にエディトリアル レビューをパスしたところで、レビューアから同じようなコメントが来てリジェクトされる可能性はあります。ただし、レビューアは必ずしもイデオロギーに沿ってではなく、サイエンスの中身を専門家として見てくれると思うので、エディトリアル レビューを通ればチャンスはまずまずあっただろうと考えていたので残念です。それに、同じ分子の研究を別の組織で行った研究がちょっと前にこの雑誌の姉妹紙でもっとインパクトファクターの高いジャーナルにでており、メカニズムという点では私の論文の方が良く詰めれていると思っていたので、レビューぐらには回ってもよかったのになあ、と思いました。ただ、その論文は超一流ラボから出ており、私のような無名の超零細ラボからのというわけではありませんから、エディターの心覚えももちろん違ったであろうとは思います。結局、同じフォーマットで出せるところに翌日、再投稿しました。

さて、世の中のニュースを二、三。

川内原発の再稼動に関して、Natureが「News in Focus」のコーナーでトップ記事にしています。
Japan ends nuclear hiatus」(プリント板とオンライン板でメインタイトルが違います)

この中で、ヨーロッパなどではかなりの率を占めるようになった風力発電などの代替エネルギーが日本でなかなか一般化していかないのを、地域電力会社の電力関係サービスの独占支配が原因の一つと指摘しています。これは日本でも、もちろんずっと指摘されてきたことで、発電事業と送電事業が分離していないので、小規模の代替エネルギーによる発電を広く分配、供給することができないというエネルギーの無駄が起きているということです。資本主義ではカネのために大量の無駄を作り出しますが、これもその一例です。いずれにせよ、原発のリスクと利益をはかりにかければ、原発は小学生でも割に合わないことがわかります。この記事の最後にコロラドのエネルギー関係のシンクタンクのアモリー ロヴィンス氏は、「福島事故以降、核安全に関して日本は進歩はしてはきているものの、いまだに問題のある不透明さが残っている」と言っています。不透明さというのはほとんど、日本文化ですが、安倍内閣のように、人を騙したり、誤魔化したりするのはいけません。福島の事故を見て、事故が一旦おこれば、国も電力会社も何の責任も大した補償もできないどころか、むしろ意図的にその責任所在をたらい回しにしてウヤムヤにしてしまおうとする組織だということがよくわかりました。自分の身は自分で守るしかないのですから、国や原発の運営での透明性をもっと求めて監視していく必要があります。

SEALDs、8/23に安保法案反対の全国規模でのデモ
安全保障関連法案に反対する大学生らのグループ「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)」が呼び掛けた「全国若者一斉行動」が二十三日、各地で行われた。シールズによると、北海道から沖縄まで、全国六十カ所以上でデモや集会があったといい、若者による連帯の広がりを印象づけた。

本当に頼もしいです。内田樹さんが京都でのデモで連帯の挨拶。 おっしゃるとおり、運動は継続することが必要です。一過性のお祭り騒ぎではなく、持続して、生活の一部として社会に関わり、声を上げ続けていくことが大切だろうと思います。病気でも急性期よりもその後の回復期のケアの方がしばしば大変です。

それにしても、法案を提出した与党が、これだけ支離滅裂で、質疑にもマトモに答えられず、ごまかすか逃げるかしかできないような、中高校生がみても相当オカシイ法案なのに、簡単に廃案にできないのですね。少なくとも、政府がおかしいことは十分に知り渡ったのではないでしょうか。山本議員が国会で示したように、日本がいまだにアメリカの植民地で、アメリカと官僚が国の政策を決めており、与党政治家のほとんどはその利権組織を守るために国民を欺くための目くらましであることを国民の大多数が十分に認識すれば、変わるはずです。霞が関官僚も数では少数派ですから、国民全身が連帯すれば、いくら彼らが(ずる)賢くてもこれまでのようなやりたい放題はできなくなるはずです。

いまだにアメリカの植民地で官僚政治の日本。自分も官僚に使われる立場でありながら、史上最低の知能との人間性をもつ内閣と評される安倍政権、軍隊を持って歴史を修正すれば、戦前の「美しい国」にでもなれると本気で思っているのでしょうか。知性と人間性の問題に加えて不真面目。何十億円という税金を使って、国民の過半数が反対する安保法案を通さんがために、史上最長の国会会期延長をしたくせに、本人の国会の出席率は3割ちょっと、審議をサボってゴルフに行くというのは、普通だったら懲戒免職ものだと思うのですがね。

今週から、しばらく夏休みを取りますので、更新は不定期になる予定です。
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集団的自衛権拡大の真の目的?

2015-08-21 | Weblog
先日、国会で山本太郎さんが、「永田町ではみんなが知っているけど、公に口にしてはならないこと」をおおっぴらに示しました。すなわち、日本の政府の役割とは、日米地位協定にしたがい、アメリカのシンクタンクのいわゆる「Japan handlers」と呼ばれる連中が描いた青写真を忠実に実現することである、ということです。それに反対してアメリカから自立した民主主義国家を作ろうとした政治家や言論家はこれまで、ことごとく、汚い手口で失脚、言論封鎖されてきました。鳩山氏に対するマスコミのネガティブキャンペーン、小沢氏に対する政治資金規正法違反の言いがかりは記憶に新しいです。言論人に対する痴漢事件のでっち上げと人格破壊は余りに有名な手口です。

田中龍作ジャーナルから、「山本太郎議員、永田町最大のタブーを追及 シラを切る政府」

山本議員は「第3次アーミテージ・ナイリポート~日本への提言9項目(2012年8月)」を特大のフリップで掲示した。
 「原発再稼働」に始まり「TPP参加」「戦時の米軍と自衛隊の全面協力(今回の集団的自衛権)」「ホルムズ海峡の機雷掃海」「国家機密の保全(秘密保護法)」「PKOの法的警護の範囲拡大(今回の駆けつけ警護)」・・・
 日本の政策がすべて米国のリクエスト通りになっていることを山本議員は指摘したのである。

 安倍晋三首相が 何とかの一つ覚え のように「ホルムズ海峡」を連呼していた時期があった。アーミテージリポートに忠実だったのである。
 図星を突かれた政府側の答弁は見苦しい、いや聞き苦しかった。、、、 日本が米国の言いなりになっていることが、天下にさらされたのだ。、、、、
 「これだけ宗主国様に尽くし続けているのにもかかわらず、その一方でアメリカは同盟国であるはずの日本政府の各部署、大企業などを盗聴し・・・いつまで(米国にとって)都合のいい存在で居続けるんですかってお聞きしたいんですよ。いつ植民地をやめるんですか?」
 「中国の脅威というなら自衛隊を世界の裏側まで行けるような状態を作り出すことは、この国の護りが薄くなるっていう事です


集団的自衛権については、田中宇さんの記事で興味深い見方が書いてありました。
インド洋を隠然と制する中国

 今のところ、インド洋上の自国の貿易船を自国軍で守らねばならないのは中国だけだが、米軍がインド洋から出て行く傾向を強めると、日本や欧州も、インド洋上の自国船を自国軍で守らねばならなくなる。その際、各国がばらばらに防衛するのでは効率が悪い。当然、複数の国々で協調して守ろうということになる。その国際軍のモデルは、すでに20カ国が参加しているソマリア沖の海賊退治で示されている。日本は近年、対米従属を続けるための方策として、中国を嫌悪するプロパガンダがばらまかれている。しかしいずれ、日本が対米従属を続けても、米軍はグアム以東に引っ込み、インド洋での日本船の航行の安全を守ってくれなくなる。日本にとっての脅威は、中国が攻めてくることではない。尖閣諸島問題は、日本側が煽って対立を激化しているものだ。

 日本が米国に頼れず、インド洋での自国船の航路の安全を自衛隊が守らねばならなくなった場合、同じ航路を使っている中国や韓国とまったく組まず、完全に自前でやるのが良いとは思えない。対米従属の意味が低下して、対米従属維持のための中国・韓国敵視策もお門違いなものになっていくだろう。いずれ日本は、航路防衛で中国や韓国と協調せざるを得なくなる。

 日本では今年、集団的自衛権の拡大が行われている。これは、中国と戦うための軍事拡張だと言われている。だが、米国の覇権力が低下してインド洋の航路防衛を米国に頼れなくなることとあわせて考えると、米国がやってくれなくなる航路防衛を自前でやるために、日本の集団的自衛権の拡張が必要になってくる(日本国憲法は、米国の恒久覇権を前提にしている)。しかも、この場合の「集団」は、日本と米国の集団でなく、日本と中国、韓国などの集団だ。集団的自衛権の拡大は、米国の命令を受けて日本政府がやらされている観があるが、実のところ米国は、再びイラク侵攻のような覇権主義をやる時に日本を引っ張り込むためでなく、米国自身の覇権が低下した後、日本が中国や韓国と協調してインド洋の航路防衛などで自前の防衛をやれるよう、日本に集団的自衛権を拡大させているのでないか、とすら思える。


私も、アメリカからの要望は、アメリカが日本にアメリカの戦争の手伝いをさせるのが主目的と考えていましたが、実はアメリカのアジアからの撤退に向けての一段階であるのかもしれません。だとすると、日本政府とアメリカの温度差は興味深いです。日本政府は「アメリカが(中国などから)日本を守ってくれるためには、日本もアメリカに協力しないといけない」というセンで国民を説得しようとしており、多くの安保法案賛成派の人々はそのリクツをを真に受けてしまっているように見えます。「中国が攻めてくる」とか「日本は中国を侵略しようとしている」とかいう話がそもそも日中政府のお互いの国民に対するプロパガンダであること、安保法案が日本の安全保障とは無関係であること、まして日本の安全保障とは「日本国民」の安全を守るためのものでは全くない、という本当のところをすっ飛ばして、政府の言う荒唐無稽なたとえ話が正しいことを前提に話を進めるからおかしくなるのではないでしょうか。一方で、アメリカは、明らかにされた秘密文書からもわかるとおり、最初から日本の安全を守るという気持ちはサラサラないわけで、沖縄との軋轢もあるし、そろそろ撤退したいというのが本音のところでしょう。にもかかわらず、行かないでくれとすがりついているのが官僚組織で、それは、対米従属、日米地位協定というのが、政治家を操るのに都合が良いから、という理由。アメリカもいい加減、うんざりしているのかもしれません。オバマが安倍氏に冷たいのもそんな理由なのかもしれません。
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