今日は久しぶりに、手を動かしての実験をしていました。リバイスのための実験なのですが、実験技術などの関係で人に任せられない部分が多いので、自分でやることにしました。
単純作業をしていると心が落ち着きますね。これは瞑想の一種と言ってよいでしょう。あっという間に時間が経ちます。要らないことを考えてイライラせずに済みます。
それで気がついたらブログを書いている時間がなくなりました。
最近知ったgene editingの方法に感心したので書き留めておきます。
CRISPR/Cas9でのゲノム編集でhomologous recombination (HR)を通じて希望の変異を入れる際に、大きな挿入はかなり効率が低いことが知られています。とあるグループがTransfection効率の悪いprimary cellに望む変異を高頻度で入れる方法を開発し、複数の論文で発表していますが、私は二日前のpre-printで知りました。
一つ目の工夫は、Cas9タンパクとgRNAの複合体、RNPをあらかじめ作成して、Nucleofectionでtransfectionすることでtransfectionの効率、Cas9の特異性と効率を上げます。これはそれほど目新しい方法ではありませんが、二つ目の工夫が面白いです。つまり、一本鎖DNA(ssDNA)をドナーに使ってhomologous recombinationの効率を上げる方法です。ssDNAはdsDNAと異なるメカニズムでHRを起こし、dsDNAよりもはるかに高効率であることが知られています。これまで、長いssDNAを作るのに、一旦、T7 RNA polymeraseの結合サイトをつけたdsDNAのコンストラクトを組み、in vitro transcriptionでRNAにしたものをtemplateにcDNAを合成し、RNase H 処理をして、ssDNAを作るという「冥加に悪い」やり方をしていましたが、これだとReverse Transcriptaseの性能の限界で、十分量の全長ssDNAを作るに問題が出ることがありました。
そこで、この論文では(オリジナルのアイデアは2年前にNatureに出たようです)AAVを利用する方法を開発しました。Adeno-associated virusは遺伝子治療のvehicleとして使われる病原性の低いウイルスで一本鎖DNAゲノムです。この一本鎖のウイルスゲノムをそのままドナーDNAとしてCRISPR/Cas9の遺伝子編集に利用してしまおうというアイデアです。recombinant AAVは、通常の遺伝子組換えで、希望する挿入配列にhomologous armをつけたものをウイルスゲノムに組み込み、それを293細胞でヘルパープラスミドを共発現させることで、ウイルス粒子を作ります。あとは、Cas9/gRNA RNPをNucleofectionしたお好みの細胞にウイルスを感染させることで細胞内に入ったウイルスゲノムがドナーDNAとなってHRを起こすという訳です。かなりの高効率でホモにもなるそうです。
こういう工夫は楽しいですね。
単純作業をしていると心が落ち着きますね。これは瞑想の一種と言ってよいでしょう。あっという間に時間が経ちます。要らないことを考えてイライラせずに済みます。
それで気がついたらブログを書いている時間がなくなりました。
最近知ったgene editingの方法に感心したので書き留めておきます。
CRISPR/Cas9でのゲノム編集でhomologous recombination (HR)を通じて希望の変異を入れる際に、大きな挿入はかなり効率が低いことが知られています。とあるグループがTransfection効率の悪いprimary cellに望む変異を高頻度で入れる方法を開発し、複数の論文で発表していますが、私は二日前のpre-printで知りました。
一つ目の工夫は、Cas9タンパクとgRNAの複合体、RNPをあらかじめ作成して、Nucleofectionでtransfectionすることでtransfectionの効率、Cas9の特異性と効率を上げます。これはそれほど目新しい方法ではありませんが、二つ目の工夫が面白いです。つまり、一本鎖DNA(ssDNA)をドナーに使ってhomologous recombinationの効率を上げる方法です。ssDNAはdsDNAと異なるメカニズムでHRを起こし、dsDNAよりもはるかに高効率であることが知られています。これまで、長いssDNAを作るのに、一旦、T7 RNA polymeraseの結合サイトをつけたdsDNAのコンストラクトを組み、in vitro transcriptionでRNAにしたものをtemplateにcDNAを合成し、RNase H 処理をして、ssDNAを作るという「冥加に悪い」やり方をしていましたが、これだとReverse Transcriptaseの性能の限界で、十分量の全長ssDNAを作るに問題が出ることがありました。
そこで、この論文では(オリジナルのアイデアは2年前にNatureに出たようです)AAVを利用する方法を開発しました。Adeno-associated virusは遺伝子治療のvehicleとして使われる病原性の低いウイルスで一本鎖DNAゲノムです。この一本鎖のウイルスゲノムをそのままドナーDNAとしてCRISPR/Cas9の遺伝子編集に利用してしまおうというアイデアです。recombinant AAVは、通常の遺伝子組換えで、希望する挿入配列にhomologous armをつけたものをウイルスゲノムに組み込み、それを293細胞でヘルパープラスミドを共発現させることで、ウイルス粒子を作ります。あとは、Cas9/gRNA RNPをNucleofectionしたお好みの細胞にウイルスを感染させることで細胞内に入ったウイルスゲノムがドナーDNAとなってHRを起こすという訳です。かなりの高効率でホモにもなるそうです。
こういう工夫は楽しいですね。