日産、ルノーの会長、ゴーン氏が東京地検特捜に逮捕とのニュースがこの数日大きく報道されています。正直、前科者の特捜の案件なので、勘ぐってしまいました。よく話を聞くと、今回のもかつて民主党政権樹立を阻止するために小沢一郎失脚を狙ってデッチあげた「陸山会事件」とよく似た嫌疑のようです。陸山会の時のような完全なデッチあげ事件ではなさそうですが、実際に起こったことを客観的に眺めると、このニュースによって、例えば、政府が数字を捏造していた海外実習生失踪率に関するニュースが消え、アホーの縁戚のフランスの水会社に日本のインフラを売り渡すための水道事業の民営法案が審議されているというニュースが消えました。つまり、金持ちに対する庶民の反感を煽ることで、そんなことよりもはるかに大きな問題である、モリカケを始めとするアベ政権の数々の犯罪や不祥事が国民の目の前から消えたということです。ゴーンは個人的な税金をごまかしただけ、その金額はアベがカケ学園に流した450億円を始め、意味もなく地球をぐるぐる回り無能につけこまれては、ばら撒き、毟り取られた日本国民の税金の総額に比べれば微々たるものです。
る人はこれはルノーの日産の乗っ取りを阻止するためであったとか言いますけど、大企業は世界企業であり、日本人雇用者をどんどん削り、海外でビジネスすることで節税するような状態ですから、乗っ取られてもそれは一企業の話で一般日本人には関係のない話。私にとっては日産がフランスの会社になっても別に困りません。(逆に最近、コンサートピアノメーカーの老舗のBosendorferが実は今はYamahaの傘下になっていると聞いて大変寂しい思いをしたぐらいです)
Schaden Freudeというのですかね、普通の人間は、成功者を妬み彼らの不幸を喜ぶようにできております。政権が窮地に陥ると必ずのように、芸能人が覚せい剤で逮捕されたり、著名人が痴漢で捕まったりしますが、今回も、なんといっても特捜案件ですから、裏がないわけがないとしか思えないです。
さて、実験の話。
私、遺伝子改変マウスを主な実験材料としているのですけど、やはり、悩みのタネは費用。飼育費用と解析費用が勿論最も高くつくわけですが、加えて、新しくマウスを作るとなれば、またそれにもそこそこの費用がかかります。この数年はCRISPR/Cas9でマウスを作ってきたのですけど、コア施設のマイクロ インジェクションサービスに頼らざるを得ず、そうするとシステム上なかなかこちらの特殊な要望も通りにくく、時間も費用もかかり、気軽にちょっと新しいマウスを作るか、というワケにはなかなかいきませんでした。この夏、小さなプロジェクト用に4つの新しいマウスを作りたいと思ったのですが、コア施設との交渉がまとまらず、断念。色々悩んだ挙句、これはもう自分でやるしかないと思い、論文をたよりにi-GONADを導入することにしました。
この方法はCas9とgRNA、repair templateなどを直接卵管に注入し、in vivo electroporationで遺伝子編集分子をマウスの受精卵にdeliveryする方法で、従来必要であった大掛かりなマウスのセットアップやマイクロマニピュレータのような特殊機器を必要としない画期的な方法です。
時間も金も乏しいので、コツコツと中古機材や手術道具を漁り、三ヶ月ほどかけてシステムをセットアップし、その間、試行錯誤しつつ手技を練習し、不明なところはi-GONADの開発者、東海大の大塚先生にも直接アドバイスをもらい、中川先生の記事などを参考にして、ようやく先月、i-GONADを開始する運びとなりました。このシステムを開発し、そしてご親切なアドバイスをいただいた大塚先生には感謝にたえません。
初期費用はSquare pulse generator を中古で手にいれ、In vivo Electroporationのtweezersを購入した他は、解剖用顕微鏡と照明器具は物置にあった20年ものを流用、手術道具はチョコチョコと買い足しましたが、あとの試薬類Cas9蛋白とcrRNA/tracrRNAは安いところからオーダーしていますから、総額でも新しいマウスのプロジェクトを一つコアに発注するよりも安いです。マウスは手持ちのコロニーで余っているものをそのまま使用。といわけで、これが成功すれば長期的に、かなりの費用と時間の節約になるという皮算用です。
とにかく、論文とメールが頼りで、実際を見たことがなく、自己流でやっているので、一つ一つのステップに自信がありません。最初は皮膚を切開して、筋層に割を入れ、卵巣を引きずりだすという最初のステップさえうまくいかず、先行き不安でしたが、10頭も試すと、手術手技そのものはなんとなくスムーズにいくようになり、最近ではオリジナルの方法の卵管に針を刺すのではなく、調子の良い時はBursaをちょっと切開して卵管漏斗部からカニュレーションすることもできるようになりました。漏斗からのカニュレーションは組織を傷つけないので、液漏れが少なく効率よく注入液を卵管膨大部に貯めることができ、結果、electroporationの効率が良くなるのではないかと思っています。
先日、最初の5頭のうち2頭が妊娠し、出産しました。これはまだ慣れていない頃にやったもので、液漏れを起こしたり、うっかり血管を傷つけて血まみれの中でやった実験だったので、まったく期待していなかったのですが、T7E1法で変異を調べたところ、最初のlitterの10頭のうち4頭で、二つ目は3頭のうち2頭で変異が入っていました。全くの初心者で見よう見真似でやってもこの効率なので正直驚きました。
まだ出産にいたっていないマウスも数頭いますが、これらは手技がもっと安定してきたころに行ったものなので、結果が楽しみです。
コストはCas9とgRNAの合成にかかるぐらいで、マウスは手持ちのものを使っていますから一プロジェクトの費用は外注の1/20ぐらい、期間はほぼ1/3でできます。
随分前、初めてESを使って作った変異マウスのことを思い出しました。targeting vectorの構築だけで3ヶ月、ESのスクリーニングに1ヶ月、キメラ作りに3ヶ月、性成熟を待って交配を始めるまでさらに2ヶ月、最初のマウスが生まれ、生殖細胞系への寄与を確認するのにさらに1ヶ月、と一年ぐらいかかり、また、その費用もかなりのものでしたから、その時は、プロジェクトのデザインはかなり細部まで緻密に考えたものでした。i-GONADならgRNAの発注から始めて2ヶ月ですから、とりあえず作ってから考える、というやり方もできます。またこれが動き出せばお手軽に複数の変異を特定の変異マウスに同時挿入することも簡単で、アイデアの幅が広がります。
つい先日、昔の知り合いのセミナーで、変異alleleを一つ一つ交配で加えていってQuadruple KOを三年かけて作ったが、phenotypeがなかったという話を聞きました。i-GONADなら二ヶ月以内で交配なしでできるかもしれません