深刻な事態が続くウクライナ情勢ですが、情報がロシア側の主張とウクライナおよび西側の主張に大きな隔たりがあって、どう判断していいものかこまります。原発や病院への攻撃があったという事実は間違いないようですが、事実を客観的に報道できる者がいない以上、当事者の証言に頼るより他なく、結局は「藪の中」状態です。チェルノブイリの電力喪失に関しては、ロシア国防省は「ウクライナの民族主義者が原発の変電所や送電線を攻撃した」と主張し、ロシア関係当局がベラルーシの支援を受けて電力供給を再開させる方針という話。また、マリウポリの小児病院がロシア軍の爆撃を受けたということで、戦争法、ジュネーブ条約の重大な違反としてロシアが攻撃されていますが、これに対してもロシアは、「同病院は以前からアゾフ大隊(Azov Battalion)などの過激派によって占拠されていた。これらの集団が妊婦や看護師、職員を追い出した。配置されたウクライナ軍部隊が攻撃していると説明、小児病院爆撃は偽ニュースであり、情報テロに等しいと表明した」とのこと。
ウクライナ側にとれば、ロシアの非人道的な行いや国際法違反があったのなら、それを広くニュースにすれば国際社会からの圧力を加えるのに有効と思われますが、ロシア側の病院を攻撃する動機がわかりません。80年前の東京大空襲ではあるまいし、意図的に市民を攻撃してプレッシャーをかけて、ウクライナの降伏を促すというような、勝ったところで、ロシアとウクライナの双方に禍根を残す手段をロシアがわざわざ取るとは思えません。太平洋戦争の時は人種の違う日本人は邪悪だから殺してもよいという理屈が通ったかもしれませんけど、今回は同胞間戦争ですしね。
いずれにしても、ロシアが先に手を出したという事実は動かしようはありませんから、国際社会はウクライナの言い分をより信じるのでしょう。しかし、数日前から、ウクライナも限界に達しつつあるのか、妥協点を探り出しているようです。ウクライナにとってみれば、本来の目的はEU圏に入ること、NATO入りはそのための安全保障。そもそも内紛が進行中の国はNATO入りは無理ですし、NATOもウクライナに手をだしてロシアとやりあうのは御免なので、ウクライナがいくら切望してもNATO入りは不可能です。ウクライナはこれを交渉の手段に使って、軍事的に中立化すること、それから東部二洲のウクライナ人の権利保護を条件に自治区化を認めるあたりを落とし所にロシア側に歩み寄るのではないでしょうか。今回のことで、ウクライナの西側諸国、アメリカに対する不満も急激に増大しているようですから、この戦争が終わった後もウクライナの困難はまだまだ続きそうです。
一方で、ツイッターのラインからすでにウクライナ関係のニュースの扱いが徐々に薄れつつあります。人々の興味の移り変わりは早く、人はすぐに新しい現実に順応し、昔を忘れていくようです。
現に、今日で11年目にしか過ぎないのに、福島原発の爆発はすでに過去のものとなりつつあります。あの大量の汚染水や汚染土の問題も話題に上らなくなりました。福島の核燃料の取り出しには数百年かかり、その間も汚染は現在進行中で、今年から汚染水は海に流され、多くの避難民が取り残されているというのに。
忘却することがなければ、人間は気が狂ってしまうでしょうが、忘れてはならないものというのはあって、戦争はその一つだと思います。その戦争に至った歴史を学び、きっちりと総括して、責任の所在と原因を明らかにして、国民で共有することが必要なのだと思います。日本は敗戦後、アメリカ主導で東京裁判が行われ、そして復興にあたって、アメリカによって戦後民主主義と憲法が導入され、社会の形が与えられました。
日本人が自身によって戦争を総括したわけではなかったことが、責任の所在をうやむやにして、現在の改憲論者や核武装論者が跋扈する状況を生み出したのではないかと私は思っています。結果は、A級戦犯が戦後日本の首相としてアメリカの間接統治の手先として働くことになりました。仮に当時の日本が民主主義国家であって、日本人が自らの手で日本側の戦争責任者を裁いていたら、そうはならなかっただろうし、その孫が国会でウソを吐き続け、モリカケ桜のような恥ずべき行いをし、プーチンには徹底的にバカにされて北方領土返還を永久に不可能にし、途上国に出向いてはカモにされ、経済政策は大失敗し、パンデミックにあたってはマスク二枚で誤魔化そうとして冗談のネタにされるような、そんな悲劇は起こらなかったでしょう。
日本人の気質として、問題の原因をつきとめ責任の所在を明らかにするよりは、昔のことは水に流して「終わりよければすべてよし」と丸く収めることを好むのだと思いますけど、この波風たてずやりすごすことを優先する態度が、結局、問題を直視することを拒否し、結果、その解決や予防への教訓を学べず、考えなしに付和雷同し、赤信号をみんなで渡っては全滅するような愚かな過ちを繰り返す原因になっていると思います。
アベやその近辺の核武装論者に欠けているのは、日本という国は唯一の被爆国であり、最大の原発事故をおこした国であるという自覚とその意味についての理解ではないかと思います。今回のロシアの攻撃をみれば、普通の想像力のある人なら、50基以上も国内に無防備な原発が乱立している日本は戦争になれば必ず負けるということが想像できないわけがありません。それをアメリカに発射ボタンを預けたままで核シェアリングすれば防げるなどと正気で考えていたら気が狂っています。だいたい、核シェアリングって何ですかね?アパートを二人で借りるのじゃあるまいし。さすがにそこまでバカではなくて、核武装には裏に真の目的があるのでしょうけど、何といっても、マスク二枚で世界的パンデミックを乗り切ろうとしたようなレベルですから、マジもんかもしれません。それに、ウクライナはソ連時代の核兵器をシェアリングしてますけど、ピンチですね。
脱線しました。われわれは80年前の戦争も福島原発事故も、それがどのような原因でおこり、そしてどういう結末を生んだのかということを忘れてはならない、ということが言いたかったのです。