百醜千拙草

何とかやっています

自民党と政府が失ったもの

2022-03-25 | Weblog
あらら、いわんこっちゃない。
日本がウクライナに軍備品を送ったことを口実に、早速、ロシアは北方領土返還が前提となる平和条約締結交渉はしないと明言した、というニュース。

東京新聞 3・22

、、、岸田文雄首相は22日の参院予算委員会で、交渉停止通告について「断じて受け入れられない」と強く反発。「今回の事態は全てロシアのウクライナ侵略に起因している。日ロ関係に転嫁しようとする対応は極めて不当」と非難した。、、、日本側はこれまで、「4島返還」から「2島返還」に要求のハードルを下げ、経済協力をてこに交渉の進展を目指してきたが、誤算が続き、成果を上げられないまま、水泡に帰すことになる。、、、首相在任中にプーチン氏と27回の会談を重ね、現在の日ロ交渉の土台を築いた安倍氏は22日、「時間が取れない」として、記者団の取材要請に応じなかった。

ははは、皮肉が効いてますな。岸田さんも平和ボケですかね。戦争中にロシアの敵方を露骨に支援しておきながら、「それはそれ、日露関係は別問題」というの理屈は手前勝手としか言いようがありません。それは正論かもしれませんけど、正論がすんなり通るなら誰も苦労しません。「戦争は悪だ、だからやめろ」と正論を言って、やめる国がどこにあるのでしょう。敵を露骨に味方しておいて、一方で平和条約は結びたい、という態度を、ロシアの立場に身を置いて多少でも考えてみたのでしょうかね。

そもそも、最初から北方領土に関してのロシアの態度ははっきりしていたと思います。プーチンにせよロシア外相にせよ、これまで露骨に明言することはありませんでしたが、北方領土を日本に返還することはあり得ない、というメッセージは何度も発せられていました。それがわからぬほど日本政府は愚鈍ではないでしょう。つまり、与党政府はロシアの意図がわかっていて、これまでも単に交渉しているフリをしていただけです。さすがに記者もそうは書けないので「誤算」という言葉で誤魔化したのでしょう。アベは、プーチンとの信頼関係などゼロだったという批判に応えることがができないので当然のように逃げの一手。「日露交渉の土台を築いたアベ」、記者も書いていて苦笑いしたでしょうな。土台など最初からなかったのですから。

ま、ロシアにとっては、日本が安易にアメリカやNATO諸国に追従してくれたおかげで、いい口実ができて、これから先、アベのような男が国内向けのパフォーマンスをするために、二十回以上もロシアにやってきてはくだらない茶番に付き合わされることがなくなって、サッパリした、というのが本音でしょう。

アベが意味のないプーチン詣でをし、演説では「ウラジミール、君と僕は同じ未来を見ている、行きましょう、、、二人の力で、いっしょに駆けて、駆けて、駆け抜けようではありませんか」などというような鳥肌の立つようなポエムを本人の前で語って、プーチンを沈黙させるような真似をしたのは、北方領土や拉致問題という長年の解決困難な課題に取り組んでいるフリをして、それを国内の人気取りに利用するためでした。

日本人なら、アベのポエムを聞いて、大国の大統領相手に、理想を語り理想に向けて努力しているのだと好意的に見る人もいないではないでしょうが、普通の外国人は呆れたでしょうし、プーチンはうんざりしたでしょう。最初から「同じ未来をなど見ていない」のはお互いにわかっているだろうと。

そもそも、外交は戦争の代わりにやるもので、交渉の場です。握手と笑顔の裏でいかにお互いの利益を最大限にするかの駆け引きを行うのが外交というものでしょう。アベの「外交」という名の遊びは、税金を使って地球をぐるぐるして金をばら撒いて一緒に記念写真をとってもらうだけ。アメリカには下僕のようにこびへつらい、タフガイのプーチンにはポエムと接待、そんなもので交渉が進むわけがない。そして、アベが気持ち悪いポエムを語る理由をプーチンが察しないわけがありません。交渉どころかまともに対話もできないのに無意味に何十回も会いに来る理由は自分と話をするためではない、この男にとって外交とは単に日本国内向けのパフォーマンスに過ぎず、自分はダシに使われているだけなのだと。プーチンもいい加減イライラしていたのでしょう、三年前には、アドリブで「前提なしで、平和条約を締結しようじゃないか」と言い出してアベをおちょくり、外務省がアタフタするという事件もありました。いうまでもなく、「前提なし」とは、北方領土は返さないよ、という意味です。当然、日本政府もアベも「それはできない」と言う。その予想通りの返答を逆手ににとって、この時もプーチンは、平和条約には信用が大切であり、(申し出を断るのは)信用がまだ十分とはいえない(から、交渉はできない)とアベにトドメをさしています。

さて今回、岸田政権がウクライナへの軍備支援をし、ゼレンスキーに国会で演説をさせ、れいわ以外の国会議員が総立ちになってそれに拍手したことを、ロシアは渡りに船だと思ったことでしょう。日本が戦争相手のウクライナを手放しで支援することはロシアに対する敵対行為であるから、北方領土返還とセットとなっている平和条約締結の交渉はしない、という口実ができたわけです。つまり、この機会を利用して、ロシアは「正式に」北方領土は未来永劫ロシアのものであると日本に宣言したということです。

もしも、日本政府がウクライナとロシアの戦争に中立的立場を表明し、両国の紛争の終焉に向けて協力する、と言っていれば、ロシアはこの口実を使うことはできず、平和条約交渉に(すぐには)トドメをさされることはなかったのではないでしょうか。

とすると、今回、直接の悪手を放ったのは岸田政権とれいわ以外の与野党です。しかし、この経緯をつらつら考えると、そもそもの原因は、アベがアメリカには下僕のように振る舞う一方で、ロシアに対しては、ロシアが自国の領土としている北方領土を、接待とポエムと多少の経済協力で分けろと言って交渉の用意もせずに何度もやってきては、プーチンをイヤというほどうんざりさせたのが原因でしょう。

ここでも、平和条約交渉の一方的な停止について、ロシアを非難するのは容易いですけど、ロシアに付け込まれる原因をつくったのは、アメリカの属国でありながら、表面だけはロシアに友達づらですりよるアベの中身のない外交であり、それに続く岸田政権の安易なウクライナ支援です。

そういう視点で今回のロシア-ウクライナの戦争も見てみれば、そもそもの原因はNATOのアグレッシブな東進を進めたアメリカそれに安易に縋ったウクライナ政府の不用心さと言えるのではないでしょうか。当事者同士はもうすでにどっちに理があるというレベルは超えてしまっていますから、中立の第三国しか、おたがいの話を聞いて仲裁する役目を担えません。日本は、今回、少しはあったそのチャンスを全面的にウクライナ側につくことで失い、ロシアに正式に敵国認定される口実を与えてしまったということです。

とすると、自民党は、ずっと人気稼ぎのネタにしてきた外交上の問題、北方領土と拉致被害を、岸田政権の浅慮な判断、つまり、この戦争においてウクライナ側に立つという表明と、先の自民党大会の演説で拉致問題を無視した、ということによって、同時に失ったと言えます。
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