百醜千拙草

何とかやっています

働かなくても良い社会

2022-08-27 | Weblog
久しぶりに大阪に住む親戚と会って、軽い気持ちで時事雑談していて、日本の経済の低迷の話になりました。その彼は企業のサラリーマン、特別恵まれた環境にあるわけではありません。10年以内にやってくる定年退職後の年金生活、親の介護と自分の健康、子供の将来に日々不安を抱えながら生活する、ごく普通の人です。

ところで、今回、久しぶりに空港を利用して違和感を感じたのは、外国の空港ではあり得ないような多くの数の高齢の人々が至る所で人々の交通整理をしていることでした。外に出ると、街中は殺人的な気温と湿度と太陽光線で、5分と日向は歩けません。そんな中で、真っ黒に日焼けした70は超えていそうな男性が、警備員の服を着て至る所に立っています。これも外国では見ない光景です。

私は、父が早くに亡くなった後、母が一時期子供を養うために、朝早くからの肉体的に辛い仕事をやっていたことを思い出しました。父の会社経営はあまりうまく行ってはいませんでしたから、亡くならなかったら、遠からず会社を畳んでいたでしょうし、そうなっていたら収入のために夏の暑い中に警備員のような辛い仕事をしていたかもしれません。高齢になった自分の親が、生活のために肉体的に辛い仕事につく、ということを想像すると、苦しい気持ちになります。

それで、これが生活のためであるならば、高齢者が殺人的な暑さの屋外で肉体労働しないといけないような社会は異常だ、という話をしました。てっきり同意してくれると思ったら、彼は、それは真面目に働いて老後にしっかり貯金をしてこなかった方が悪い、というのでした。彼は一サラリーマンで、毎日コツコツ働いて生活する普通の市民です。だからこそ、真面目に働かず老後に苦しむ人は自業自得だし、まして不正に補助金や生活保護などを受け取る一部の人間は許せない、と考えているようでした。ま、この不公平感からくる気持ちはわからんでもないです。

しかし、誰でも今の世の中、一歩間違えれば、年老いてから炎天下で警備員をしなければならない立場になりかねないです。私も彼もそういう側の人間で、週に一日だけ働いて残りは公用車でスパ通いしているような市長や、レイプ事件を握り潰して昇進したがヘマで辞任しても退職金8000万円の警察庁長官や、コンサル料一声5000万円の元オリンピック組織委員理事のような人間とは対極の立場にいるのです。彼の「不公平感」は、なぜか、デタラメをやってはそのツケを庶民に負わせる支配者層には向けられず、同じ労働者クラスの同胞に向けられているようでした。

彼が感じていると思われる、一生懸命働いて生活している自分たちと、真面目に働いてこなかった人が、同じ扱いを受けるのは不公平だと思うのは理解できます。また一方で、彼は真面目に仕事をして生活して収入を得ていくことは尊いことだと信じているようです。多分、多くの日本人は真面目に働いて経済的自立をするということは尊く、仕事は自立した大人のアイデンティティーの大きな部分だと考えていると思います。しかし、こうした考え方は、一方で、安定して金を稼げない人間の価値は低いとか、障がい者は社会のお荷物だとか、というような短絡的で愚かな思考を正当化する根拠にもなっている場合があると思います。そういう主張をする人は、誰でもいずれは、仕事ができなくなって、金を稼げなくなり、他人の世話にならないと生きていけなくなるという現実を、深く考えていないのではないでしょうか。

誤解を恐れずに言えば、私は、人々が遊んで暮らせる世の中を目指すべきだと思っています。結局「仕事をする」ということは、「金を稼ぐ」とか「誰かの役に立つ」とかという実利と結びついているので「遊ぶ」こと以上の意義があると思われているかも知れませんけど、「暇つぶし」であることに変わりはないです。生活に必要なものやサービスは、機械化やAIで非常に高効率でまかなうことができるのです。そう思えば、世の中の仕事で必要不可欠な仕事は2割ぐらいでしょう。6割はあってもなくてもいい仕事、残りの2割はない方がよい仕事というような構成だろうと思います。

だから、政府が、本来やるべき仕事をし、格差の是正と富の再配分を然るべく行えば、社会を維持するのに絶対に必要な2割の仕事を分担して、週に1日働けば最低限、生きていくに十分な収入が得られるような社会を実現するのは可能だと私は思います。残り8割の時間は、思い思いに遊んだり、ボランティアをしたり、芸術活動やスポーツをしたり、いろいろ学んだり、学問的活動をしたり、科学研究や技術開発などの人間的で創造的な活動に充てば良い。また、週に7日働いても働き足りないというような仕事が好きな人は、沢山いますから、そういう人は好きなだけ働けば良いです。一方で、仕事は嫌いだが生活のために自分の時間を売っているという状態であるならば、それは不幸です。そういう面白くない仕事に就いている人はできるだけ少ない労働で生活ができる世の中になって欲しいと思います。そして、ない方がマシな仕事、例えば二束三文で仕入れた壺を高額で売りつける仕事とか、を生活のためにしているような人がいない世の中であって欲しいと思います。

高齢者が生活のために炎天下に警備の立ち仕事をしなければならないのであれば、それは政府が無能です。それどころか、自民党政権は、組織票をもつ企業やカルト団体を優遇するために、消費税という悪税で、持たざる者から厳しく取り立てて、持てる者を優遇することで、格差を広げ、景気を減退させてきました。これは怠慢とか無作為とかいうレベルではなく、悪意を持って意図的に一般の人々を弾圧してきたと言って良いでしょう。
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