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鉢呂氏の放射能つけちゃうぞ発言は、虚報だった!?

2011年10月17日 | 日々是雑感
報道災害【原発編】事実を伝えないメディアの大罪 (幻冬舎新書)
上杉隆・烏賀陽弘道
幻冬舎

ダイヤモンド社のビジネス情報サイト「ダイヤモンド・オンライン」を時々読んでいる。同社の無料メルマガ(ダイヤモンド・オンライン メールマガジン)を定期購読しているので、そこに送られてくるタイトルを見て「つまみ読み」しているのである。その10/13号を開けてみて、驚いた。《鉢呂前経産相の「放射能つけちゃうぞ」発言は虚報だった!【週刊・上杉隆】》とあったからである。あの発言が虚報(ウソ、捏造)だったとは…。記事の中身をピックアップして紹介する。

火曜日(10/11)、筆者が司会を務める『ニュースの深層』(朝日ニュースター)に鉢呂吉雄前経済産業大臣が生出演した。冒頭、筆者は鉢呂氏が発したという「放射能つけちゃうぞ」発言の真意について聞いた。

「放射能と言った記憶がないのです。確かに相槌を打ったような気もしますが、それもはっきりせず、自分で言ったような記憶はない。私も長年政治家をやってきていますから、自分で言った言葉については大抵覚えております。でも、放射能という言葉自体、あまり使ったことがありませんし、放射性物質などということはありましたが、なにしろ記憶にないのです。でも、優秀な記者さんたちがみんなそう報じるので、どうしてなのかなと思っておりました」

結論からいえば、鉢呂氏は「放射能」も「つけちゃうぞ」も発言していない。発言のあったとされる当日、東京電力福島第一原発所の視察から戻った鉢呂大臣(当時)が、赤坂宿舎に集まった4、5人の記者たちと懇談したのは事実だ。だが、防護服を着用したままの鉢呂氏に「放射能」という言葉を使って、水を向けたのは記者たちのほうであり、それに対して、鉢呂氏は何気なく相槌を打っただけというのが真相なのだ。

つまり、マスコミが勝手に自ら言葉を発して、何も語っていない政治家の話した言葉として勝手に報じて、勝手に責任を追及し、デマによって世論を煽り、ついには大臣を辞めさせてしまったというだけの話なのだ。

しかも、そうした事実が明らかになった現在もなお、どの社も鉢呂氏に対して、訂正も謝罪もしていないという。ぶら下がった記者の中には密かにICレコーダーで録音し、完全にすべてを理解しているにもかかわらずである。

そもそも「死の街」発言についても、福島県民からの苦情が殺到しているように報じられていたが、鉢呂事務所にはそうした声は届いていなかったという(鉢呂氏)。むしろ、「がんばれ」という激励の声が多数寄せられていたそうだ。

それもそうだろう。鉢呂氏は、大臣就任前から一国会議員として福島県に通い、放射線量の測定や、小学校や保育園の除染の徹底、そして暫定基準値の20ミリシーベルトから1ミリシーベルトへの引き下げを訴え、菅首相(当時)に直訴していた数少ない政治家の一人だったからだ。大臣辞任直前には、「鉢呂氏を辞めさせないで」という署名運動が福島県内で始まっており、まさに「死の街」という事実をきちんと告知してくれたことへの感謝の言葉すらあったのだ。

マスコミのデマによって職を追われた鉢呂氏は、ずっと「放射能つけちゃうぞ」などという言葉は発していないといい続けてきた。だが、その反論をまともに取り上げるメディアはなく、事実上黙殺された。発言していないデマによって、ひとりの政治家を葬るのはまさしくテロ行為に等しい。メディアは恥を知るべきだ。いまからでも遅くない、もう一度、自らの稚拙な取材を検証しなおしてみるべきだ。

そして、当事者の鉢呂氏も「もう、大臣を辞めてしまったからいい」と自らのことばかりを考えるのではなく、今後の民主主義と若い政治家たちのために、きちんとした対応をすべきなのである。放送に関してはBPOに訴えるのもよし、あるいは名誉毀損で裁判を起こすのもよし、いずれにせよ、こうした卑怯な振る舞いに対しては断固とした措置を講じるべきなのである。仮に、こんな卑劣なデマ報道が許されるとしたら、それはジャーナリズムのみならず、民主主義の死を意味する。

嘘によって、選良である代議士を葬ることは、代議制民主主義、ひいては国民への裏切りに他ならない。


ジャーナリズム崩壊 (幻冬舎新書)
上杉隆
幻冬舎


この記事の末尾には「世論調査」として、《「放射能つけちゃうぞ」発言はなかったとしたら、鉢呂前経産相は辞任すべきだった? 辞任すべきでなかった?》というアンケートがついていて、現時点(10/17午前6時現在)では、「辞任すべきでなかった」91.7%、「どちらとも言えない」5.5%、「辞任すべきだった」2.8%となっている。

9割超とは、スゴい数字である。虚報によって大臣の座から引きずり下ろされた鉢呂氏は、ご自身の名誉回復のため「放送に関してはBPOに訴えるのもよし、あるいは名誉毀損で裁判を起こすのもよし、いずれにせよ、こうした卑怯な振る舞いに対しては断固とした措置を講じるべき」ではないか。

上杉隆氏は「田原総一朗の後継者」と目される論客で、特に既存マスコミへの批判が鋭い。私もテレビで発言を耳にするほか、上記『ジャーナリズム崩壊』も読んだ。「BOOKデータベース」によると《日本の新聞・テレビ記者たちが世界中で笑われている。その象徴が日本にしかない「記者クラブ」制度だ。メモを互いに見せ合い同じカンニング記事を書く「メモ合わせ」、担当政治家が出世すれば自分も出世する歪んだ構造、権力におもねり掴んだ事実を報道しない体質。もはや新聞・テレビは権力をチェックする立場と国民に知らせる義務を放棄したも同然である。恐いもの知らずのジャーナリストがエリート意識にこりかたまった大マスコミの真実を明かす、亡国のメディア論》という本である。

この「放射能つけちゃうぞ」報道については、早くから疑問視する声が出ていた。東京新聞の長谷川幸洋氏は鉢呂氏にインタビューし(9/16)、「『うつしてやる』とか『分けてやるよ』と言った記憶は本当にないんです。もしかしたら『ほら』という言葉は言ったかもしれないが、それさえ、はっきり覚えていない。『ほら、放射能』という報道もあったが、放射能という言葉を出したかどうか分からない」。

「はっきり言えるのは、私が防災服を記者になすりつけるような仕草をしたことはないっていう点です。一歩くらい記者に近づいたことはあったかもしれないが、なすりつけるようなことはしていない。そんなことがあれば覚えています」という発言を引き出していた。しかも、「放射能つけちゃうぞ」の第一報を報じたフジテレビの記者は、(鉢呂氏の記憶によれば)現場にいなかったという。「フジテレビはいなかった。フジの記者は○○さん(実名)という女性なので、それは、あの場にいれば分かります」。

とにかく「放射能つけちゃうぞ」発言については、報道したメディアがきちんと検証し、事実を明らかにする「検証記事」や「検証番組」を公表すべきではないだろうか。「虚報」で大臣がクビになるような国は、民主国家とは言えない。
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