tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

ミシュランガイドから、奈良のお店の傾向を探る

2011年10月23日 | 日々是雑感
おかげさまで、『ミシュランガイド 京都・大阪・神戸・奈良 2012』の発表(10/18)直前から、当ブログへのアクセス数が急増している。ノーマルの状態では、アクセス人数(IP数)が1,600人、ページビュー(各記事の閲覧数)が5,000件、という数字だった。それが、17日は2,010人(5,702件)、18日は 5,066人(14,485件)、19日は3,654人(10,319件)、20日は2,564人(7,957件)、21日は3,103人(10,540件)、22日は2,420人(7,585件)、という状況で、これは大変有り難いことである。
※トップ写真は「小粋料理 万惣」(ミシュラン奈良一つ星)

なお、ミシュランに掲載された奈良の店舗名は
 【☆☆☆】
和 やまむら(日本料理、奈良市)
 【☆☆】
温石(同、奈良市)▽花墻(同、奈良市)▽夢窓庵(同、奈良市)
 【☆】
味の風にしむら(同、桜井市)▽味の旅人 浪漫(同、奈良市)▽田舎茶屋 千恵(同、桜井市)▽イ・ルンガ(イタリア料理、奈良市)▽尾川(日本料理、大和郡山市)▽かこむら(同、奈良市)▽割烹 きた田(同、奈良市)▽川波(同、奈良市)▽清澄の里 粟(同、奈良市)▽玄(そば、奈良市)▽神戸亭(串揚げ、奈良市)▽お料理 枯淡(日本料理、奈良市)▽食の円居 なず菜(新日本料理、奈良市)▽ステーキ関(鉄板焼き、奈良市)▽蕎麦きり 彦衛門(そば、奈良市)▽蕎麦 菜食 一如庵(同、宇陀市)▽MASUDA(串揚げ、奈良市)▽万惣(日本料理、奈良市)▽ゆう座(寿司、奈良市)▽ラ・カシェット(フランス料理、奈良市)▽ル・ベンケイ(同、大和郡山市)

さて、今回もミシュラン奈良に関係した話題をお届けする。今日のテーマは、ミシュラン奈良の「傾向」である。日本ミシュランタイヤのニュースリリース(10/18付)によると《星の評価の基準は、京都、大阪、神戸、そして奈良においてもミシュランガイドの対象国である他の22カ国と同じです。同一の基準で判断することにより、ミシュランの星は、世界中どこでも同じ価値を持つのです。奈良の一つ星レストランは、ニューヨークまたはパリの一つ星と同じ価値を持つのです。その同一の基準とは、素材の質、調理技術の高さと味付けの完成度、料理の独創性、コストパフォーマンス、そして常に安定した料理全体の一貫性の5つです。これらの基準は、日本料理をはじめとする、あらゆる種類の料理に適用することができます》。

また10/20の奈良新聞で、森田哲史氏(日本ミシュランタイヤ広報部長)は、こう答えていた。なお( )は私の注書きである。《(記者)奈良での評価ポイントはどこか。(森田)調査員チームではないので詳細なコメントはできないが『奈良だから特別どう』ということはない。我々が星をつける基準に合致したということだ。良い例は奈良で選ばれたイタリア料理店(リストランテ・イ・ルンガ)だ。オーナーシェフ(堀江純一郎氏) はイタリア版で星を獲得しており、今回奈良でも選ばれた。世界と全く同じ選び方だったと言える》。

ミシュランガイド京都・大阪・神戸・奈良 2012(AMAZON)
  ミシュラン編
  日本ミシュランタイヤ

いずれも「ミシュランの星は、世界中どこでも同じ」で「『奈良だから特別どう』ということはない」と答えている。しかし私の見る限り、自ずと「奈良ならでは」の特徴が浮かび上がっているように思う。それはミシュランの「選び方」かも知れないし、奈良の「土地柄(料理柄)」なのかも知れない。ポイントを列挙してみる。店名はミシュランの掲載順、カッコ内はミシュランの掲載ページである。

●野菜を重視した料理店が評価
「田舎料理 千恵」(P466)、「川波」(P472)、「清澄の里 粟」(P473)、「食の円居(まど)なず菜」(P477)、「蕎麦 菜食 一如庵(いちにょあん)」(P480)と、野菜にこだわったお店が星を獲得した。「大和野菜」の例を引くまでもなく、奈良県の野菜は美味しい。縄文時代、大和盆地は湖だったそうで「だから土地が肥えている」といわれる。また山間部でも、気候的特徴を活かし、通も唸る高原野菜が作られている。

例えば「清澄の里 粟」は、ミシュランでは《山羊の鳴き声が聞こえる小高い丘の上。素材の特徴を生かし、風味をそこなわないように丁寧に味付けをした野菜中心の創作料理が楽しめる。奈良の伝統野菜、エアルーム野菜などの新鮮な素材がコースの中に50種以上も含まれるのは驚きだ》と評価されている。なおエアルーム野菜とは、在来の固定種の野菜のことである。

●カウンター割烹に注目
日本料理店の中でも、いわゆるカウンター割烹がメインのお店がたくさん入っている。「味の風 にしむら」(P464)、「味の旅人 浪漫」(P465)、「かこむら」(P470)、「川波」(P472)、「枯淡」(P476)、「万惣」(P483=トップ写真)など。和牛ステーキ・鉄板焼の「関」(P478)をこのジャンルに含めてもいいかも知れない。桜井市の「味の風 にしむら」などは《奈良のカウンター割烹で10年間修業を積んだ主が住宅街の一角で営む店》(ミシュラン)と紹介されている。


和牛ステーキ関(10/7撮影)。カウンター10席のみ

朝日新聞奈良版(10/19付)に、こんなコメントが出ていた。《選ばれなかった奈良市の老舗料理旅館は選考について「これまで京都や大阪で選ばれた店をみると、1人で料理を作るような小さな店が多いように思う。そういう店の方が、お客さんに行き届いたサービスができるのかも知れない。大きな店で完璧なサービスをしていくのは大変なことです」と話す》とある。

この老舗料理旅館とは、おそらく「菊水楼」のことであろう。何しろABCテレビなどはミシュラン発表日の10/18、夕方のニュース番組「キャスト」で、このお店をご主人のインタビューつきで放送していたのだ。番組のサイトには《うまいものなしと言われた奈良県がミシュランガイドに加わることとなった。奈良を愛した作家も食い物はうまいものがない所と言われていたが、ミシュランガイドに今回奈良県が登場した。ミシュラン入りを果たすのは明治22年開業の「菊水楼」で、料理人・料理関係者も期待していると話している》とあった。

私も「菊水楼」のミシュラン入りを予想していたが、それは見事に外れ、「快適な旅館」の部に四つ星(四黒パビリオン)として掲載されるにとどまった。しかし、菊水楼の「出身者」が営む「和 やまむら」(P488)は三つ星、「枯淡」(P476)は一つ星を獲得した。「味付けの完成度、料理の独創性、コストパフォーマンス」、そして「お店の快適度」を問うミシュランの評価は、「1人で料理を作るような小さな店」に有利に働くのだろうか。


手打ちそば雄町(7/29撮影)

●そば屋、串揚げ屋に星
いわゆる「ごちそう」とは少し違う、そば屋と串揚げ屋に星がついた。そば屋では「玄」(P474)、「蕎麦きり 彦衛門」(P479)、「蕎麦 菜食 一如庵」(P480)、串揚げ屋では「神戸亭」(P475)、「マスダ」(P482)。私はこれまで、「奈良にはうまいそば屋が多い」と喧伝してきた。「手打ちそば雄町」 「かえる庵」 「そば処和」 「蕎麦処 はやし」などがその代表格だが、それには「玄」や「蕎麦きり 彦衛門」の影響があると見ている。串揚げでは東向商店街に、「串カツ たりつ」という手軽で美味しい店がある。多くの観光客が行き交う奈良では、そば屋や串揚げ屋のような気軽なお店に対するニーズが高く、切磋琢磨してレベルの高い店が産まれているのだろう。

以上が、ミシュラン奈良を読んだ私の感想である。奈良県下で最強のグルメサイト「奈良グルメ図鑑」を運営されるnaranaraさんは、ご自身のブログに「ミシュラン2012 ~予想と結果を考察する~ 」という記事を書いておられる。抜粋すると

私は、三つ星1店,二つ星4店,一つ星13店,と予想していたが、結果は三つ星1店,二つ星3店,一つ星21店と 一つ星の数については予想を大きく上回った。

そば に注目してみる。そば は京都から6店 (うちNEW1店)、大阪から10店 (うちNEW5店) 兵庫から7店 (うちNEW2店)となっているが、大阪の伸びをからもわかるように、ミシュラン、けっこう そば好きである。とすれば、私は予想で、そばは 「玄」 1店としたが、3店ぐらい入れてもよかったことになる。

ちなみにこれは串カツでも言えることで、私は1店と予想し 「マスダ」 を推したが、2店とわかっていれば、「神戸亭」 も有力候補であった。外したことの言い訳をするつもりはないが、一つ星が21店も選ばれたことは、驚きである。

ミシュランの三つ星は そのために旅行する価値がある卓越した料理 となっている。ということは、このガイドブックを持ったフランス人、あるいは遠くからやってくる観光客が、飛行機や新幹線を使って、わざわざ新大宮へやってくるということであり、何だかえらいことになりそうである。

また、二つ星は 遠回りをしてでも訪れる価値がある素晴らしい料理 ということだが、京都を訪れた観光客が関空に直接戻らずに奈良に立ち寄り、高畑や学園前や法蓮を訪れるということである。ちなみに 「夢窓庵」 は我が家から徒歩5分のところにある。 ぜひ我が家にも立ち寄って下さい。

今回、ミシュランに奈良が追加されたことは、奈良にとっては喜ばしいことである。ただ、店の選ばれ方にについては、これで完璧だとは思わない。この店が入っていて、あの店が入っていないのか、という気持ちもないではない。例えば、富雄の 「アコルドゥ」 などは私の感覚では必ず入ると思っていた。ミシュランガイドは毎年 調査をし直して改訂するという。この一回で終わりでないところが何とも楽しみである。これから、行ってない店に少しずつでも行って、微力ながら奈良の食を応援していきたいと思っている。これからもよろしくお願いします。


菊水楼、つる由アコルドゥなど、前評判の高い店が入らなかったことは意外であるし、またそこがミシュランの独自路線なのかも知れない。いずれにしても「野菜」「カウンター割烹」「そば、串揚げ」という「奈良の食」のキーワードが抽出できたことは、ミシュラン奈良の大きな成果である。奈良にうまいものあり。皆さんも、ぜひ奈良のお店をお訪ねください!
コメント
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