tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

地元の良さを100の言葉でいえますか? by 古田菜穂子さん(岐阜県) 観光地奈良の勝ち残り戦略(62)

2012年08月01日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
N先輩こと奈良市観光協会事務局長・長岡光彦さんが、ひだホテルプラザ(岐阜県高山市)で開催された「第29回飛騨高山観光大学」(7/26~27)に参加された。主催は飛騨高山観光大学実行委員会、共催は高山市、飛騨高山観光客誘致推進協議会、飛騨・高山観光コンベンション協会、後援は岐阜県など。長岡さんはFacebookに《飛騨高山観光大学に参加。圧巻は第1分科会(岐阜県観光交流推進局長・古田菜穂子さん)「本物はここにある~感動資源を観光資源に」。事例を交えて説明、参加者への10の質問》。

《すべての項目に参加者が答えさせられます。何も考えていなければ、していなければ、当然答えられません。半日かけて飛騨高山に来るのは大変でしたが、おつりが出るほど考えさせられ、勉強になった会議でした》と書かれていた。早速月曜日(7/30)に詳細をお聞きしたところ、やはり素晴らしいお話だったようだ。ひとり占めするにはもったいないので、資料(A4版1枚の両面)をもとに紹介させていただく。
※トップ画像は、飛騨高山温泉(BIGLOBE温泉)より拝借

なお古田菜穂子(ふるた・なほこ)さんは、岐阜県商工労働部観光交流推進局長。岐阜市に生まれ、明治学院大学社会学部を卒業。新聞記者、TVディレクター、雑誌ライター、映画プロデューサー、各種イベントの総合ディレクター・プロデューサーとして活躍され、2009年7月から現職である。以下、青字が引用である。アンダーラインは私がつけた。

みなさんへの10の質問
1.誘客のために何をするか? 目標を設定することで満足していませんか? そこには「人」「コト」「モノ」と、「心残り」を生み出す「体験」がありますか?


たいてい「入込客数○千人アップ」という漠然とした目標を立てるが、このカウント自体、誠にあやふやである。「心残りを生み出す体験」とは、良い目のつけどころである。単に「見る・知る・学ぶ」(奈良流「るるぶ」)では、心に残らない。「ヒト」というファクターも大切である。史跡だけが観光資源ではない。水も空気も、人情ももてなしも、すべて立派な観光資源である。

2.他の地域のことを知っていますか? 他の地域へ「観光」に行ったことがありますか? 他の地域の「良いところ」「良いコト」「良いモノ」を3つ以上紹介できますか?

旅行に行っても、よほど意識していないと、この質問には答えられないだろう。どこへ行っても、奈良と比較するクセをつけなければ。

3.自分の勧めるモノが相手の喜ぶモノあると、確信を持っていえますか?(自分の喜びは相手の喜びであると、心からいえますか?) 
 
4.自分の地域の「良いところ」「良いコト」「良いモノ」を100の言葉で表現できますか?
※長良川おんぱくで、なぜ100の「着地型プログラム」を課題としたか。


100の言葉で表現するには、地元を知り尽くしていなければならない。知り尽くしていないと、着地型プログラムは作れない。観光客のニーズは様々だから、着地型プログラムはたくさん作る必要がある。

5.あなた自身(もしくはあなたの地域)のシミュレーションとして、あなたの地域で体験できるおすすめの「旅」をつくりあげるイメージをしてください。
・何泊何日の旅を作ることができますか?
・その旅は、「誰が主役の旅」をイメージしましたか。
・その旅に、「時間軸」は存在しますか? いつ? 何曜日の旅?
・その旅をする人が、どんな形態で旅をするのだと考えましたか? 一人旅? 家族旅?
・その旅をする人が「その旅」に求めるモノは、何だと思いますか?
・その旅をする人が、何をお土産に買っていくと思いますか?
・その旅をする人は、どこから来て、どこへ帰っていくのだと思いますか?


抽象的な「旅のプラン」を作っても、意味がない。「日帰り旅」は、旅といえるか。曜日によって、季節によって、プランニングは変わる。「旅に求めるモノ」は、人によって様々である。ターゲット観光客のセグメンテーション(細分化)はできているか、観光客の「顔」が見えているか。

6.自分の地域全体の「観光資源の魅力」を別の言葉で言い換えるなら、どんな言葉で表しますか?

単に世界遺産がある、神社仏閣がある、ということだけではダメで、その魅力をどのように演出するか、アピールするかが大切である。その前提として、地元の良さを100の言葉でいえるか。

7.「観光の魅力」の中で、「他にない=希少性」「一番だと誇れる」ことは、何ですか?

8.日常生活の中で、「ホスピタリティ」を実践していますか?

9.自分の地域や(岐阜県や)日本に対して、常にポジティブな言葉を使っていますか?「ここには何もない」「○○さんは、○○は、何もしてくれない」「○○がないから駄目だ」などというネガティブな言葉を使っていませんか?


奈良県民は、とかくネガティブな言葉を使いがちである。行政の悪口も大好きだ。それで、どんなメリットがあるというのか。「奈良は食い物はうまいもののない所だ」と書いた志賀直哉は、同じ随筆(「奈良」)のなかで、「奈良は名画の残欠のように美しい」とフォローしていることを知っているのだろうか。

10.「観光」って何ですか? 「旅」って何ですか?

以前「金曜の夜から大阪へ出て1泊」という職場の慰安旅行の案を作った若いモンがいて、「こんなものは旅行ではない、単なる遠距離宴会だ」と突っぱねたことがある。「では、旅行とは何ですか」と彼がいうから、「“旅情”を感じられるのが、旅行だ」と答えた。距離とかおカネが問題なのではない。そこに、ハート・オブ・ジャーニィ(The Heart of Journey)があるのかい?

まとめとして
観光産業は、原則「型のないサービス産業」。お客様は、その「サービス」に対し、「期待」を持って、お金を支払って(循環させて)くれる。その価値の保障はありません。返品も効きません。
でも、だからこそ、「期待以上」(支払った定価以上)の体験を実感できたとき、お客様の中に「感動」と「喜び、満足」が生まれ、「もう一度、その体験をしたい」と想い、次の「旅」や「休息」の目的地として、選んでくれる。

戦略を駆使して、プランディングを行って、イメージをアップし、集客につなげても、そこで提供できる「最終商品=現地での観光体験すべて」が、「本物」で、お客様を満足させられるものでなければ、観光商品とは、決して「返品」できない分、消費者に返品以上の「心のダメージ」という大きな負材を与えることになります。
期待が大きい → 失望も大きい

☆これから求められる観光スタイル 5ポイント furuta-original☆
●本物が、そこにあること~ゆっくりとした時間の中で、心と身体と精神に、本物の癒しと喜びと健やかさを与えられる、かけがえのないリゾート&リトリート・エリア(すべてでなくても、こだわりの在処を感じられるものとする)
●観光客にとって、楽しく、興味、趣味やミッションの延長につながる<体験><経験>を分かち合える=提供できる こと
2泊3日(もしくはそれ以上)の旅プランを描くことができること
●おしゃれな女性達がエリアを旅している姿が見られ、その姿もまたエリアを演出するSCENE(景色)になり、旅する男達は、普段の仕事場では見られないアクティブな<プチ野性>を取り戻し、「いつもより力ッコイイ」姿が見られる、見せられること
「また来たい。思い出を持ち帰りたい」との観光客の想いに応える魅力的な人、コト、モノが「地元」に多数存在していること


この「古田オリジナル」の観光スタイル5点は、tetsuda流に要約すると、
①本物による癒し
②興味のある経験・体験
③ロングステイ(2泊3日以上)
④お客がシーンを作る
⑤リピーターを呼べるヒト・モノ・コト
ということになる。

観光客は、旅番組の主人公(ヒーロー or ヒロイン)の立場に、自分の身を置きたいのである。自分の思いを託せるシーンに身を置き、リゾート(保養)やリトリート(普段の自分からの脱却)につとめたいし、「旅情」を感じたい。だから観光地側は、どのようなシーンを提供できるかが勝負になる。しかもそれは、返品のきかない一発勝負である。「また来たい」という観光客を呼べるだけの「ヒト、モノ、コト」が用意できているだろうか。

それにしても、これは参考になるお話であった。古田菜穂子さんはHPやブログを持っておられるとのことだったので、検索してみた。ブログは1ヵ月ほど、更新されていなかった。よほどお忙しいのだろう。その「お知らせ」(6/16付)という記事に、こんなことが書かれていた。

5月の連休以降から、ものすごく忙しくなり、正確には、約一ヶ月半の間で、休みが1日しかなかった程。

10年以上もゆるやかに、このブログを続けて来たことについて もう一度、考えてみた。このブログはあくまでも<自分自身のため>に存在してきたものだ。だから、例えば、忙しくて、文章を書けないことや、いただいたコメントなどをアップできないことを 第三者から、問われることもないし、また、同時にコメントを記入してくださった方が、『何故、自分のコメントがアップされないのだろうか』などと、悩んだり、苦慮されたりするのも、私の望むところではない。

そして、コメント欄があることが、そういったことを引き起こす可能性をはらんでいるとするなら 以後は、基本的にコメントを受け付けないことにしました。

ブログや、メディアとは、自己と他者の関係性に、多かれ少なかれ、影響を与えるものであるし、それは踏み込みすぎてもいけない。ネットの世界での関係性の発生と広がりというのは、前提として、見知らぬ者の出会いの場であるが故に、そこには、ある一定の距離や、マナーが必要だと思うから。

ということで、本当に久しぶりの休日。身体を休めながら、ゆっくりしたいと思います。


うーん、これはお気の毒。ブログのコメントが返せないほど、ご多忙とは。これほど見識のある人だから、日常のお仕事のほか、行事への出席、会議、講演会・シンポジウムなどと岐阜県内を走り回っておられるのだろう。

観光客を旅番組の主人公に仕立て上げよう→そのために必要な舞台装置は何か→地元ではどんなヒト・モノ・コトが調達できるか、と遡って考えれば良いのである。「半日かけて飛騨高山に来るのは大変だったが、おつりが出るほど考えさせられ、勉強になった」と書かれていたとおりだった。長岡さん、貴重な情報をご提供いただき、有難うございました!
コメント (3)
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