tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

奈良市観光協会・中村憲兒会長の深イイ話

2012年08月09日 | 奈良にこだわる
週刊奈良日日新聞(8/3発売号)が、中村憲兒氏(奈良市観光協会会長 67歳)へのインタビュー記事を掲載していた。中村氏は5月の総会で、同協会2期目の会長に再任された。氏は奈良交通会長であり、長年、県観光の第一線に身を置いてこられた方である。参考になるお話がたくさん出ていたので、ピックアップして皆さんに紹介する(青字の部分が引用)。聞き手は同紙の藤山純一氏である。

1期目の会長を引き受けさせていただいたのは、奈良の経済活性化のみならず地域の活性化のためには、観光振興による交流人口の増加しか手がないのではないかとの思いからです。

交流人口とは、その地域を訪れる人(交流する人)のこと。住んでいる人(定住人口)に対する概念である。少子化の進展により、地方では定住人口の増加は期待できず、交流人口を増やすことによって地域の活力を高めていこうという意識が一般化しつつある。

大きな産業はないが、世界に誇る観光資源が豊富な奈良こそ「観光立県」が必須です。なかでも奈良市は、観光産業しかないと言っても過言ではありません。地域の活性化は観光振興からという思いで、2期目も取り組んでいきます

平城遷都1300年祭のあった一昨年に比べ、昨年は観光産業にとって厳しい一年でした。今年に入っても、ホテルの宿泊客は回復の傾向がないという声も聞いています。その状況を打開するために大切なのは、情報発信力の強化、おもてなし体制の充実に尽きると思います。その2つを充実させるために必要なことは、「人」を磨いていくということです。「人は人でしか癒やされない」という言葉があるように、どんな素晴らしいホテルがあっても接遇が悪いと、二度と来たくないと思うでしょう。


以前私は、星乃勝さん(NPO法人スマート観光推進機構理事長)からメールでいただいたこんな話を紹介した。《調査によると、レストランでシェフが挨拶したり、料理に関する説明などのコミュニケーションがあると94.4%の人が、お店の印象が良くなると答えている。「食」は、食材が良くて、調理法が優れていればおいしい料理が提供されることに間違いはない。しかし、ここに「人とのコミュニケーション」が加えられて、感動が生まれ、よき想い出が生まれるのではないだろうか。「観光」は、この「感動」を求める行為である》。まさに「人は人でしか癒やされない」のである。



(奈良市観光協会では)これまでは市職員が出向していた専務理事や事務局長などの幹部職に、4月から民間の人に入ってもらいました。民間で、人をもてなすサービス業や旅行業の最前線で働いてきて、その厳しさを身をもって体感してきた経験を持つ人たちです。国内も海外も、観光誘客は自治体単位での激しい競争があります。そのなかで、当協会も根本に立ち返って奈良の魅力をPRしていかなければなりません。

先月、世界で最も権威があり影響力があるというアメリカの旅行月刊誌「トラベル+レジャー」の読者投票で、京都が世界ランキング9位に入りました。日本の都市としては初めてのトップ10入りです。一方、以前の号で奈良は「世界で最も過小評価されている街」として紹介されています。厳しい言葉で言い換えると、「奈良は京都と遜色(そんしょく)ない観光資源があるにもかかわらず、それをうまく活用できていない」ということでしょう。観光産業に携わる人間として、その記事は悔しいというのが本音です。しかし記事にあるように、奈良はポテンシャルがないわけではありません。


ネットで検索すると、「TRAVEL+LEISURE」誌(2011年3月)の「World's Most Underrated Cities」26都市中の6番目に、奈良がランクインしていた。同誌の評(英文)を直訳すると《近くにある京都のせいでしばしば無視されたこの旧都には、古社寺や庭については(京都と)同様に豊富である。しかもカメラを振りかざす群集もいない。奈良公園へ行くと、人に馴れた鹿と8世紀の東大寺の集合体を目にすることだろう。一方、少し歩いたところにある愛らしい依水園は、静寂さを醸し出している》。

《奈良はまた、町家という印象的な集積(伝統的な木造家屋群)を持っている。多くの町家がカフェやレストランに模様替えした古い商業地域である「ならまち」の路地をぶらぶらして、午後を過ごしなさい。見逃してはいけない。奈良は清酒の発祥地であり、この町の周辺では多くの造り酒屋を見つけることができる。127年の老舗醸造元である「春鹿」への訪問を手配しなさい、また別の醸造元が運営する人気の日本酒バー「蔵元豊祝」にも立ち寄りなさい》。

同誌は奈良を京都と比較し、奈良には京都と遜色ない観光資源があるのに「しばしば無視された」(often neglected)と書いている。そして奈良の静けさ、素朴な町家、造り酒屋などを評価してくれている。このような奈良の「強み」は、もっと大々的にPRすべきである。


奈良市観光協会のFacebookトップページ
 
特に力を入れているのがインターネットを活用した情報発信です。今年はホームページをリニューアルしたほか、協会フェイスブックページも作りました。フェイスブックには、協会職員がイベントや伝統行事のほか、知られざる奈良市のお薦めスポット、店舗の紹介といった記事を定期的に投稿しています。

Facebookでは、奈良市観光協会の皆さん、とてもよく頑張っていて、私も開くのを楽しみにしている。協会本体のページもあれば、職員さん個人のページもある。

京奈和自動車道の早期完成、奈良市の中心市街地の渋滞対策が必要です。そして、リニア中央新幹線の「奈良駅」誘致を実現させるための手を、しっかり打っていくこと。リニア中間駅の具体的な県内立地にこだわりはありませんが、奈良駅の実現に向け、次世代のためにわたしたちの世代が声を出していかなければなりません。

奈良市内に宿泊してもらうため、橿原、明日香、五條、吉野といった南和地域への観光誘客が必須です。わたしたちは奈良市の観光協会ですが、宿泊を伴う長期滞在型にシフトしていくためには「オール奈良」で取り組んでいかなければなりません。行政の区分でそれぞれが観光PRするのではなく、県、各市町村、外郭団体、商工会議所や商工会が連携し、情報発信力を高めていく必要があります。




奈良商工会議所の西口会頭もよくおっしゃるとおり、「オール奈良」という発想が大切である。観光客に市町村境はない。「近いから日帰りされてしまう」奈良市と、「遠いから来てくれない」南和地域を組み合わせて、宿泊型観光プランを作れば良いのである。南和には温泉も避暑地も、雄大な自然もある。名古屋や大阪から近鉄で南和地域に入り、帰りは奈良市を経由して帰る、という2泊3日プランなど、いとも簡単に作れるのだから。

若いリーダーをしっかり育てていく人材育成が必要です。奈良には燈花会やバサラ祭りなど、若い方々が育て、奈良の新たな風物詩としての魅力を持ったイベントが定着してきました。若い人たちの新しい発案や取り組みといった種が、芽を出すための仕掛けづくりも求められています。県立大学の観光学科と当協会が連動し、新たな取り組みをしていけないかという企画なども検討しています。

かつては若々しかったなら燈花会の幹部も、中年といわれる年格好になってきた。そろそろ次の世代にバトンタッチしないといけない。奈良市観光協会がそのような仕掛けづくりを考えてくださるのなら、こんなに有り難いことはない。

(奈良市観光協会は)公益法人化を目指すことに切り替えました。認可のハードルは高くなりますが、メリットも大きい。来年4月からのスタートを目指し、公益法人としてさらに強い情報発信力を持つ協会となるため、取り組んでいきます。



「TRAVEL+LEISURE」誌の記事における「World's Most Underrated Cities」(世界で最も過小評価された街)という評価が、京都との比較においてなされている(Often neglected in favor of nearby Kyoto)という点に最も注意すべきである。知人で「京都をぶっとばせ!」と書いてきた女性がいたが、お隣にあり観光都市ランキングで世界9位という京都のことは、もっと意識的に研究すべきである、ライバルとしても、反面教師としても。今まで奈良は、そういうことをして来なかったのではないか(もちろんリニアは、京都ではなく「奈良駅」である)。

以前私は「食」の分野で、検索エンジンを使って奈良と京都を比較し、3年前には大幅に差をつけられていたヒット数が、年々、その差を縮めていることを指摘したことがある。しかも驚くべきことに、今や「大和野菜」(約626万件)は、「京野菜」(約216万件)の3倍のヒット数を誇るのである! 大和野菜の美味しさや、「京野菜のルーツは大和野菜だ」ということが、ようやく理解されてきたのだろうか。県マーケティング課(農林部)さん、おめでとうございます。

京都では、お坊さんが客引きをしている。神社が「境内の桜が見頃です」というチラシを配っている。伏見区の「寺田屋」はのちに再建された建物なのに、寺田屋事件当時の「弾痕」「刀傷」や「お龍が入っていた風呂」を見せものにしている(Wikipedia「寺田屋事件」)。良くも悪しくも観光振興に関しては、奈良より数段熱心なのである。

閑話休題。「人を磨くことが大切」「若いリーダーを育てる育成策が急務」と、中村会長は強調されている。私の知る奈良交通の社員さんは、皆さん明るくて前向きだし(お酒も強いし)、奈良市観光協会の職員さんも、最近になってようやく活気が出てきた。これを奈良市、奈良県にまで広め、「奈良へ行ったら、皆さんが元気で気持ちよく迎えてくれたので、また行きたくなった」という好循環につなげなければならない。

「オール元気奈良」で、県外のお客さんを明るくお迎えしましょう。 中村会長、元気の出る深イイ話を、有難うございました!

コメント (5)
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