■ Aモード全開ではありますが、Bモードでも書いておこうと今回は『文学的商品学』斎藤美奈子/文春文庫を取り上げます。このところ読書欲が乏しく、エッセイのような軽いものを読んでいます。
南大門が放火によって焼失したと知ったとき直ちに『金閣寺』三島由紀夫を思い浮かべましたが、再読しようという気にはなりませんでした。
この『文学的商品学』は帯にもあるように商品情報を読むように小説を読んでいます。さらに帯に倣えば川端康成から、村上春樹まで、のべ70人の82作品を、ファッション、食べ物、貧乏など、9つのテーマで読み解いたものです。『文壇アイドル論』などユニークな視点で書いている作家だということは承知していましたが、作品を読むのはこれがたぶん初めて。この本を昨日ザックリと読んでみました。この作家にかかれば渡辺淳一さんのファッション描写など形無しです。
作家も編集者も気がつかない明らかな間違い、例えば地理の間違い、そう地図を基に書いて取材をしないで済ましたような場合には、??な描写ってあるんですね。推理小説のトリックを有り得な~い!と指摘している評論もあります。
ときにはこんな本を読んでみるのも楽しいものです。
■ 先日菊竹さんの「スカイハウス」について書きました。今回は吉村順三さんの「軽井沢の山荘」です。スカイハウスもこの軽井沢の山荘も偶然にも1辺が4間の正方形のプランです。空中に浮かべているところも同じです。
鳥の巣のような家をつくりたかったのだという指摘をどこかで読んだような気がします。確かに『小さな森の家 軽井沢山荘物語』建築資料研究社のまえがきに吉村さんは**この樹の上で、鳥になったような暮らしのできる家をつくろうと思いついた。**と書いています。
吉村さんは大学のような規模の大きな建築も設計していますが、やはり住宅作家、住宅の設計では右に出る人はいないといってもいいでしょう。今現在住宅作家として活躍している人達にも明らかに吉村さんの影響を受けていると思われる作品が少なくありません。
藤森さんは「建築は素材だ」とどこかに書いていましたが、吉村さんなら「建築はプロポーションだよ」、間違いなくそう書いたでしょう。天井や壁に安価なラワン合板を使っても絶妙の寸法比によって心地良い空間を創出してしまう・・・。
この山荘の外壁に吉村さんは杉板を張っていますが、防湿のために亜鉛鉄板を捨て張りしたり、床下の断熱のために浅間砂利を敷き詰めたりと基本的な性能向上のためにいろいろな試みもしています。今回『小さな森の家 軽井沢山荘物語』を読み返して気がつきましたが、浅間砂利は遮音のためにトイレと隣室の間仕切り壁にも詰められています。
そもそも空間を空中に浮かべたのも鳥の巣をただ単につくることだけでなく防湿のため、防犯のためという実利的な意図があってのことなのですね。
軽井沢の山荘はスカイハウスと共にベスト3に入る名作、私はそのように評価しています。