透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「INAX REPORT」

2009-05-03 | A 読書日記


■ INAXが発行している季刊誌の最新2009/04号(写真)の内容が充実している。

特集1では「東京中央郵便局」を設計した建築家、吉田鉄郎を取り上げている。この表紙も吉田鉄郎の作品、旧・馬場氏烏山別邸だ。東京中央郵便局と共通する端整なデザイン。

大学教授の南 一誠さんは本誌の「平凡さに潜むモダニズム建築の真髄」と題する評論で、大阪中央郵便局とこの郵便局の魅力を**無駄を排し極限まで洗練された構造体の表現は、日本における近代建築の中で最も優れた建築である。**と述べている。

東京中央郵便局の魅力はなかなか理解されにくい。一体あの建築のどこが魅力的なのか、保存の価値などあるのか・・・、という感想を抱いている人が多いのではあるまいか。

吉田は東京中央郵便局の設計について**鉄骨鉄筋コンクリート構造法を利用して窓面積を出来るだけ大きくし、無意味な表面装飾を廃し、純白の壁面と純黒の枠をもった大窓との対照によりて、明快にして清楚な建築を求めることに苦心した。・・・必然的な建築要素によりて現代的な構成美を現出している。**「建築家吉田鉄郎とその周辺」と述べている(以上本誌より引用)。

この実に明快で分かり易い説明文は吉田の建築作品に通ずる。



特集2は「時代を画した書籍」と題した対談。内藤廣さんと大川三雄さんが、今回で最終回となった企画「著書の解題」で取り上げた書籍、著者を振り返っている。磯崎新の『空間へ』から始まったこの企画。内藤さんは著者の関連書籍を3冊読むことをノルマにしていたそうだが、大変だったと思う。この企画が終ってしまうのは残念。

大川さんがまとめたという現代建築思潮年表(写真)には1960年から2004年までの流れが本、論文、作品、建築界、社会というジャンルに沿ってまとめられている。労作。

ライバル社のライバル誌「TOTO通信」も毎号内容が充実している。共に季刊誌なのがちょっと残念。隔月ではこの密度を保つのは難しいか・・・。