透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

古代のロマンを語る

2019-07-09 | A あれこれ

 この度、国連教育科学文化機関(ユネスコ)で日本最大の「仁徳天皇陵古墳」を含む49基の古墳で構成される「百舌鳥・古市古墳群」を世界遺産に登録することが決まった。

以前、前方後円墳について記事を書いている。一部手を加えて再掲する。 


「U1さん!」
「S君とYさん、偶然だね。元気? 一緒に飲もう」
「いいですか? U1さんそちらの女性は?」
「友だち。本屋さんで久しぶりに会って、ちょっと飲もうということになってね」
「Kです」
「Sです よろしく、それから妻のYです」
「初めまして」

 乾杯!


「U1さんKさんと何を話してたんです?」
「この本のこと」
「飲みながら、本の話をするって、U1さんらしいですね」


 
『遊古疑考』松本清張/河出文庫

「ゆうこぎこう?」
「松本清張が独自の視点で古代史に切り込んだ本」
「U1さん、こういう本も読むんですか」
「歴史に関する本はあまり読まないけれど、松本清張は面白いよ」
「この写真は前方後円墳、ですよね。詳しいっしょ」
「そう。でも、清張は前が四角で後ろが円って考えるのって不自然じゃないかって書いているんだよね」
「え、違うんですか?」 

「中学でしたっけ、教科書に載ってましたよね。天皇陵の写真」
「仁徳天皇じゃなかったっけ。清張はいろいろ説明しているけれど、これ見て。左上の成務陵を正面から見ようとすると下の弥徳陵が邪魔してしまう」



「ほんとだ」
「でしょ。で、清張が主張するように側面が正面だとすると三つともきれいに展望できる。この図で□の位置からだけど。前から出来ていた成務陵をわざわざ隠すように後からつくるはずがないって言ってんだよね」
「なるほど、です」
「現在の参拝所の位置が違っているんじゃないか、って。中には手前の四角い部分のほうが後方の円い部分より高いものもあるっていうんだよね」
「前の四角いところがが高いと後ろの円いところというか、本殿が見えませんよね」
「そう! Kさんするどい。四角い部分に神社があったり、円い部分に神社があったりするってことも書いてある」

「ということは、少なくともどっちが前なのか分からないということ、ですか・・・?」
「そういうことになるだろうね」
「そうか・・・」

「教科書に出ているとそれが正しいって思っちゃうよね。この古墳のウェストみたいなところに造出(つくりだし)っていう出っ張りがあってそこが祭壇だって清張は言うんだよね。これ。ここは工事のときの資材置き場だとか、作業員の休憩スペースだったところで、そこで竣工祝いもしたんだろうと。で、そこが拝殿のようなところになったって言ってるんだよね。ここを伏し拝みっていうところもあるってさ」



「へぇ~」
「この清張の論考って40年も前のものだっていうから今どうなっているのか知らないけれど、古墳の方は前方後円墳のままだよね」

「でさ、次の「風水説と古墳」という章では円部が陽で、方が陰でその接合のかたちだって書いているんだよ」
「ン? 陽と陰の接合って、つまり・・・」
「そう。で、中国には上が円で下が四角の古墳があるってことだけど、それが日本に伝わったって説もあるんだって」
「上下が横になったってことは体位が変わって伝わったって・・・」
「体位? あ、そうだね」
「とすると・・・」

「やだ・・・」
「おいおい、酔いがまわってきたな。でね、これはボクの説だけど、この古墳の四角と円がその後、金堂と塔になっていったんだよね」
「金堂と塔って法隆寺なんかの・・・ え~、ほんとですか」


 

掲載履歴
20071007
20170814