透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「なつかしい町並みの旅」吉田桂二

2020-08-16 | H ぼくはこんな本を読んできた

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■ 『なつかしい町並みの旅』吉田桂二(新潮文庫1987年2刷)。著者の吉田氏は建築家で全国各地に残る古い町並み(私は街並み、あるいはまち並みという表記の方が好きだが、書名に倣う)を7,80年代に訪ね歩いた。この本にはその中から選んだ、あまり有名な町並みを避けた26か所の紀行文を収録している。それぞれ数点ずつ繊細なスケッチが掲載されている。1枚だけ茅葺きの民家が連なる通りに火の見櫓が立っているスケッチがある(*1)。カバーのスケッチも吉田氏が描いたもの。

まえがきから引く。

**旅の楽しさは、見知らぬ土地を訪ねて自分なりの発見をすることだと思う。(中略)旅で何を発見するか、それは人によって違うはずだ。対象はこの本のように町並みであってもよく、あるいは食べ物であって焼物であっても、何でもよいが、日頃から自分が関心をもつことでなければ何も発見できない。見れども見えずということで終わる。関心の動機は興味だから、自分が興味をもつ対象への理解を深めるほど見える範囲がひろがってくる。**(下線は私が引いた) 全くもってこの通りだと思う。私も同じことを自著『あ、火の見櫓!』に**火の見櫓に関する知識を得て火の見櫓が見えるようになったのです。**と書いた。

この本には南洋堂という建築図書を専門に扱っている書店のシールが貼られている。上京した時に買い求めたのだろう。


マスク無しで旅行ができるようになったら(って、そんな日が来るのだろうか・・・)スケッチブックを持って旅行をしたいものだ。

鈍行列車で行くのんびり旅。荒涼とした日本海を窓外に見ながら、ワンカップ(ここは缶ビールではダメ)をちびちび飲む。あぁ、人生って寂しいものだな~などと思いながら・・・。

鄙びた宿に泊まり、スケッチをする。風景に火の見櫓があったら好いなぁ。


*1 七ヶ宿(宮城県刈田郡七ヶ宿町)

 


「鏡の中の物理学」朝永振一郎

2020-08-16 | H ぼくはこんな本を読んできた

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『鏡の中の物理学』朝永振一郎(講談社学術文庫1976年第1刷発行)

 この本も講談社学術文庫の創刊時に刊行された。講談社の力の入れようがこのときに刊行された34冊からうかがい知れる。

**現代の学者・評論家・作家の著作を中心にかつてのベストセラーで現在入手しにくい名著や未刊行の論文・報告書・資料・随筆・講演などオリジナルの書下ろしを含めて収録!
あらゆる科学の基本図書を提供する画期的シリーズ** リーフレットにこのような紹介文が載っている。

引用ばかりで気が引けるが・・・。

**ノーベル物理学賞に輝く著者が、ユーモアをまじえながら平明な文章で説く、科学入門の名篇「鏡のなかの世界」「素粒子は粒であるか」「光子の裁判」を収録。“鏡のなかの世界と現実の世界の関係”という日常的な現象をとおして、最も基本的な自然法則や科学することの意義が語られる。(後略)**

以上ブックカバー裏面の紹介文より。


書名は「鏡の中の物理学」だが、章題は「鏡のなかの物理学」となっている。