透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「暗夜行路」志賀直哉

2020-08-31 | H ぼくはこんな本を読んできた

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『暗夜行路』志賀直哉(新潮文庫1994年12刷)

 いきなり余談から。『暗夜行路』の巻末に阿川弘之氏の「志賀直哉の生活と芸術」と題する解説文が載っている。阿川氏の娘・佐和子さんは小学校に入学する時、志賀直哉からランドセルをプレゼントされている。ぼくはこのことを佐和子さんのエッセイで読んだような気がする。黒いランドセルではなかったか。

『暗夜行路』は志賀直哉の代表作で、500頁超の長編。主人公の謙作は母と祖父との間に生まれた子どもであり、妻は謙作が留守中にいとこと過ちを犯す。このようにこの小説は暗くて過酷な状況設定だ。ほぼ同時期に書かれた藤村の『夜明け前』も暗い(夜明け前なんだから当然か、って冗談ではなく)。そういえば永井荷風の『夢の女』も主人公に過酷な人生を課していたなぁ・・・。