透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「寅さんの「日本」を歩く」

2022-07-29 | A 読書日記

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『寅さんの「日本」を歩く』岡村直樹(天夢人発行 山と渓谷社発売 2019年発行、2021年4刷)

 寅さんシリーズ全50作(48作という捉え方もある)を観たぼくとしては、こんな本を目にしたら手に取ってパラパラとページを繰る。で、買い求める。

章立てを紹介すれば本書の内容は見当がつくと思う。

はじめに
第1章 寅さんの大切な場所 駅/茶の間/縁日/(他は省略、以下同)
第2章 寅さんと温泉 別所温泉/
第3章 寅さんと絶景 東尋坊/
第4章 寅さんと城下町 高梁/
第5章 寅さんと名刹・古社 金刀比羅宮/
第6章 寅さんと港町 伊根/
第7章 寅さんと水景 江戸川/
第8章 寅さんと島 加計呂麻島/
第9章 寅さんが愛した昭和
第10章 寅さんの全作・全ロケ地ガイド
おわりに

寅さんシリーズについて、いろんな切り口から論じられているが、第9章の「寅さんが愛した昭和」は読み応えがあった。各章とも寅さんシリーズそのものに関する記述がもう少し多ければ、そう文章の「寅さんシリーズ濃度」がもう少し濃ければうれしかった。

寅さんファンとして手元に置いておきたい本。


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『寅さん大全』井上ひさし監修(筑摩書房1993年発行、1996年5刷)

以前読んだ、『寅さん大全』では料理研究家の小林カツ代さんが「とらやの食卓」と題してとらやの食事について、4ページに亘って論じている。**欲を言えば、冬場はもうすこし緑の野菜が欲しいですね。葉っぱをあらって茹でておひたし。でも、栄養的にはななりいいと思われますよ。**(272頁)

寅さんってカレーが好きそうなのに、メニューに無い。寅さんとカレーは合う、と小林さんは書いている。ぼくは寅さにカレー、とらやのちゃぶ台にカレーは合わないと思うけどな。

改めて寅さんシリーズはいろんな観点から論ずることができると、思った。


先週の金曜日(22日)に第22作「噂の寅次郎」(マドンナ 大原麗子)を観たから、何か書かなくちゃ。


松本市神林の火の見櫓

2022-07-29 | A 火の見櫓っておもしろい


(再)松本市神林寺家 神林公民館の近く 3脚66型 撮影日2022.07.29

 この火の見櫓は2013年6月に既に観ているが、今日(29日)再訪して観察した。県道48号の寺家の信号から1.2kmほど北に入った所に立っている。

以前からどんな場所に立っているのか、周囲の状況について関心が無かったわけではないが、このことを意識した写真をあまり撮っていなかった。いきなり火の見櫓に焦点を当てていた。だが、火の見櫓は砂漠の中にポツンと立っているわけじゃない・・・(*1)。だから火の見櫓のある風景写真は必要だ。以前このことを豊科のカフェ・BWCLのオーナー(過去ログ)に指摘された。それからこのような写真を意識的に撮るようになった。オーナーに感謝。


上の写真で火の見櫓の右隣りは松本市消防団第13分団詰所


手元の資料「大橋鐵工所の火の見」によれば、この火の見櫓は1956年(昭和31年)に建設された。末広がりのフォルムが実に美しい。屋根と見張り台の大きさのバランスも良い。脚部の主材(柱材)も櫓部分から連続してなだらかにカーブしている。これらは全形に表れている同鐵工所の火の見櫓の特徴だ。


屋根頂部の避雷針の飾り、やや大きめの蕨手、見張り台の手すりの飾り、床面の開口部の形などにも大橋鐵工所の特徴が表れている。


外付け梯子から踊り場に入るための開口部の処理の仕方に注目。なんとなく開口部になったというのでなく、開口部をつくるというはっきりとした意図を感じる。


脚部のデザインも好ましい。櫓の荷重をきっちり支えているということが視覚的にも伝わってくる。

残念に思うのはメンテナンスが行われておらず、全体的に錆びていること、半鐘が撤去されてしまっていること。


*1 安部公房の『砂の女』(新潮文庫1981年)に出てくる火の見櫓は砂漠のようなところに立っていた、という記憶がある。確認してみると、**水平に仕切られた、空と砂・・・・・火の見櫓が入りこむ余地など、どこにもありはしない。**(141頁)という記述があった。