透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

041 042 屋根無し火の見

2010-08-14 | A 火の見櫓っておもしろい

①041
②042

 また火の見櫓。他人(ひと)の理解を越えたところにディープな趣味はあるのだから、このくらいの凝りようはまだ序の口、甘いでしょう。長野県外の火の見櫓を取り上げるようになったら、「あんたも好きだね~」 そう思って下さい。

さて、今回は茅野市内(?)の火の見櫓(100808撮影)。 ①が梯子(2本柱)型、②が櫓(3本柱)型。大事な半鐘には切り妻型の小屋根をかけていますね。半鐘はかなり重いでしょうから(って具体的にどのくらいの重量だろう・・・)丸鋼の斜材で吊っています。

構成部材は①のステップ材を除き鋼管。随分錆びていますね。もう役目を終えているのでしょうが、手入れはしていただきたい、そう思います。

2基共屋根の無いタイプですね。①の梯子型の場合には屋根がなくてもさほど気になりませんが、②の櫓型の場合にはどうしても落ち着きません。未完のように見えてしまいます。3本の柱がバラバラのままです。屋根は視覚的に柱を束ねる、櫓をまとめる、と言ったらいいのかそんな効果があるように思います。

てっぺんをどう処理するか・・・、これがポイント! 


◎所在地はきちんと確認していないので隣接する他市町村のものもあるかもしれません。


040 火の見櫓観察のポイント

2010-08-13 | A 火の見櫓っておもしろい


040 東筑摩郡
山形村にて 100719撮影

■ 火の見櫓観察のポイントはいくつかある。整理しておこう。

1 火の見櫓の立つ場所の様子(消防団の詰所の有無など)や周辺の環境

2 全体の様子、印象 
21 櫓の材料(鋼材、木材、石、コンクリート)と形式(1本柱、梯子型(2本柱)、櫓型(3本柱、4本柱 その他の型) プロポーション 上方への絞り方(櫓が描くカーブの様子)
22 櫓の高さ、脚の長さのバランス
23 屋根と見張り台の形や大きさのバランス

3 各部の様子
31 屋根の有無 形(平面形と立体形)と飾り(避雷針及びその飾り、蕨手、その他)
32 半鐘の有無 半鐘用の小屋根の有無 形
33 見張り台の有無 平面形と床の構成、手すりのデザイン
34 櫓の平面形と立体形、構成部材の種類と接合方法(ボルト、リベット、溶接)、ブレース(筋かい)の固定方法など
35 梯子 構成部材 手すりの有無など
36 脚部のデザイン 単脚、複合脚(トラスの組み方やアーチの有無 カーブの様子) 
37 基礎の様子(独立基礎 一体型基礎)
38 消防信号表示板の有無 
39 銘版の有無 記載内容(製造所名、製造年など)

4 その他 観察対象の火の見櫓に固有の特徴、観察するときの季節や天候、時間など

 


民家 昔の記録

2010-08-13 | A あれこれ

19790504撮影
 建てぐるみ 耐火構造の蔵を可燃材でできた家屋で「くるんで」います。別棟にして蔵を火災から守るというのが本来の姿ではないか、と思うのですが・・・。なぜ蔵をこのようにくるんでいるのか、分かりません。

これが諏訪地方に見られる建てぐるみ(←過去ログ:今回載せた写真と同日の撮影)です。既に何回か紹介しましたが、地元産の鉄平石で屋根を葺いています。寒冷地では焼きの甘い瓦は凍害で割れてしまいます。

石がずれないように軒先の鼻隠し、妻側の破風の外側にせき板を取り付けています。妻側のせき板を頂部で交差させて×の形にしています。ここを飾ったものがすずめおどりです。過去ログの写真にはすずめおどりが写っています。

1979年の5月4日、茅野駅から上諏訪駅まで歩いて観察したことが当時の記録で分かります。あの頃はあちこち歩き回っていました。若かったな~。


19790504撮影
 すずめおどり せき板の交差のさせ方には右手前、左手前 どちらもありますから、とくに決まりは無いようです。


200608撮影
 妻垂れ 先日観た「藤森照信展」で展示されていた妻垂れと同じもの。4年前に撮りました。藤森さんは心に残る高部の風景と素材としてこの「シブキヨケ」も挙げています。


19790504撮影
 鉄平石一文字葺き 棟に小さな祠があります。妻飾りは「からすおどし」。諏訪地方には「すずめおどり」とこの「からすおどし」、両方あります。

以上、諏訪地方の民家の特徴を示す写真をまとめて載せました。

大きな袋を肩にかけ

2010-08-11 | A あれこれ


茅野市内にて 100808撮影

 茅野市内には蔵の○の中に大黒様を納めた鏝絵がいくつもあるようだ。

藤森照信展の会場で買い求めたカタログに収録されている「路上観察学会 座談会in茅野」でも話題になっているし、同じくカタログに収録されている講座「諏訪の民家の特徴と謎」でも講師の藤森さんが取り上げている。

ここまで具象的で色付きの妻飾りはいままで見たことがなかった。家紋などのシンプルな図像の方が蔵には相応しいと思う。 南伸坊さんや松田哲夫さんが茅野市内で路上観察したものはどうも漫画的というか俗っぽい。 蔵ワッペンというネーミングがわかるような気がする。

この写真の大黒様はなかなかのもの。これを蔵ワッペンと呼ぶ気にはならない。これはやはり妻飾りだ。

でも、大黒様というモチーフはあまりにも直接的で・・・。


朝日村にて 200606撮影

やはりこのくらい間接的な表現の方が好ましい。蔵にネズミ・・・ なるほど。


― 自然のデザインに学ぶ

2010-08-10 | A 火の見櫓っておもしろい


大町市内にて 10809撮影

 この頃火の見櫓を見つけるのが上手くなった、と思う。火の見櫓が立っていそうな場所がなんとなく分かるのだ。

ぼくは釣りをしないが、釣りをする人たち(いい趣味だと思う)は、魚がいそうなところがだんだん分かるようになるそうだが、それと同じことだろう。この火の見櫓もなんとなくこの先には火の見櫓がありそうだ・・・、と大町からの帰りに普段とは違う道を走行して見つけた。

この火の見櫓の屋根はシンプルでラインが実に美しい。で、ふと思った。何かに似ていると。

何だろう・・・。                        

そうか、アサガオ! 

人がデザインするものは既に自然がデザインしてあるらしい、それも完璧に。この屋根はアサガオに似ている。ただし屋根は6角形、アサガオは5角形と平面形は異なるが。


画像を回転させて下を向けた。

少しアングルを変えればもっと似た写真が撮れるかもしれない。

メモ)バイオミミクリー(←過去ログ)  1932


038 039 デザインの違い

2010-08-09 | A 火の見櫓っておもしろい

   
038 039 

茅野市内(?)で見かけた火の見櫓 100808撮影

 左は櫓の4隅の柱材に鋼管が使われている。柱が垂直に立っていて櫓のサイズは下から上まで変わらない。それに対して右は柱材など櫓の構成部材にアングル材が使われてる。上方に向かって次第に細くなる、よく見かけるオーソドックスなタイプの火の見櫓だ。

やはり火の見櫓は次第に細くなる右のタイプの方がしなやかで優美だ。女性的な美しさ、と評してもいい。左のタイプはそれ程数は多くはないだろうと、根拠もなくなんとなく思うが、男性的で力強い。デザインによって随分印象が違う、と両者を比較してみて感じる。

ところで遠くから火の見櫓を眺めていて気になるのが、屋根の勾配。かなり緩勾配の屋根もあれば、急勾配の屋根もある。屋根の勾配は遠景の火の見櫓の印象を決める大きな要素だ。それと屋根と見張り台の大きさのバランスも重要な要素。

左の火の見櫓は構成部材の強度によって構造的に成立させているような印象。それに対して右の火の見櫓は全体の形に頼って成立させているような印象。これは東京スカイツリーと東京タワーにも当て嵌まるのではないか・・・。

私は右の火の見櫓の方が好み。男性的な火の見櫓より女性的な火の見櫓、当たり前か・・・。
 


 


土壁

2010-08-09 | A あれこれ


茅野市内にて 100808撮影

■ 火の見櫓に熱中しているが、やはり路上観察の本流は民家。これは茅野市内で見かけた土蔵。

変形切妻、せき板の巾が随分広い。見慣れた蔵とはプロポーションが違う。「あたまでっかち」な蔵だ。この地方の民家の特徴のひとつ、「すずめおどり」がちゃんと付いているのはうれしい。妻飾り(蔵ワッペン)は無い。

近くで観察すると、下地の板が一部露出していたり、縄を掛けるくさびが見えたりもしていた。

外壁に土を使うのは大変だと、土大好き藤森さんがギャラリートークで語っていたが、このように無防備な土壁の蔵も多い。

すぐ近くの火の見櫓の写真は何枚も撮ったが、この蔵の写真はこの1枚だけ。ああ、なんということだ。「建てぐるみ」の状態のいいものを見かけた。また出かけよう。


藤森照信展 再び

2010-08-08 | A あれこれ


空飛ぶ泥舟(藤森照信)と茅野市民館(古谷誠章)

 藤森照信さんのギャラリー・トークを聴きに、そして空飛ぶ泥舟に「乗る」ために茅野市美術館へ再び出かけた。

空飛ぶ泥舟の定員は6人。今日(8日)の公開時間は午前の2時間。見学者は5人1組(+添乗員さん 市の職員でしょう。若い女性でちょっとうれしかった。)で舟の中に入る。制限時間は10分。ということは1時間で30人、2時間で60人しか乗ることができない・・・。

受付開始は朝9時、その5分くらい前に美術館に到着。既に何人か並んでいたが、事務室で受け付けを済ませることができた。

10時50分、架けられた梯子を上ってにじり口から泥舟の中に入る。梯子から中に入るときは自然ににじりスタイルになる。外観の印象とは違って中は広い。テーブルの両側の固定式のベンチに3人ずつ腰掛けた。立礼の席だ。梯子が露地か・・・、独創的なアイディアだ。

この泥舟、両側からそれぞれ2本、計4本のワイヤで吊っているように見える。が、実際は舟の底の部分をワイヤが通っていて、2本のワイヤでゆりかごのように吊っていると、藤森さんの説明があった。

なるほど、そうしないと舟底によほど丈夫なキール梁(動物の背骨に相当する)を入れないと、人の体重による曲げ力に対してもたないだろう。

午後のギャラリー・トークは予定の1時間をおよそ40分オーバー。藤森さんが好んで使う素材は土。**土は人間の意識を吸収する**のだそうだ。タンポポハウス(カタカナ表記でよかったかな)の壁や屋根にはニラが生えてきているとのこと。でもニラハウスにはできない・・・と語っていた(隣にはニラハウスの写真が展示されていた)。

やはりライブで解説を聴くと楽しい。

さて次回は今月の22日(日)、伊東豊雄×藤森照信 トークセッションだ。朝早く行かないと・・・。

メモ) 空飛ぶ泥舟のサイズ:長さ3、6m 巾1、8m 重量600kg 


二宮カエル

2010-08-08 | F 建築に棲む生き物たち



 二宮と聞くと嵐の二宮和也君を思い浮かべる人が多いかもしれない。私は映画「硫黄島からの手紙」での彼の好演が記憶に残っている。

薪を背負って本を読むこの姿は二宮金次郎。否、二宮カエルだ。松本の観光スポット、縄手通りに立っている。

縄手通りにはカエルが棲んでいる。なぜ縄手にカエルなのか知らないが、何匹も棲んでいる。何匹なのか、観光パンフレットに載せたらどうだろう。松本検定の問題にいいかもしれない。私は数えたことがないので答えを知らないのだが。

先日、夕方の街中散歩で縄手を通った。観光客と思しき若い女性がこのカエルにカメラを向けていた。で、私も向けた。




生まれ変わった信濃大町駅

2010-08-07 | A あれこれ



 今年の春から行われていた改築工事が終わって、すっかり雰囲気が変わった信濃大町駅。菱葺きのとんがり屋根のてっぺんに注目。空に向かって尖っている飾りがついている。

『路上探検隊 奥の細道をゆく』路上観察学会編/JCC出版局 に載っている藤森照信さんの解説によると、このような飾りは「フィニアル」と呼ばれ、ヨーロッパ中世のゴシック教会に起源を持つとのこと。天上の神さまに近づこうと垂直性を強調しているのだそうだ。

先端に何か飾らないと落ち着かないというのは、ヨーロッパでも日本でも同じようだ。

ところで、藤森さんによると、西洋館によくあるこの寄棟屋根の端部をカットしたような形を「ヒップ・ゲーブル」というのだそうだ。日本の民家のかぶと造りと同じ形だ。

かぶと造りは小屋裏部屋(養蚕に使われていた)に光を採りこみ、風を通すための工夫だが、西洋館の場合はどのような理由でヒップ・ゲーブルにしているのだろう・・・。


積み木

2010-08-06 | A あれこれ



 この積み木も「木のファーストスプーン」と同じ友人の企画。

モジュールということばは、建築に限らず様々な分野で使われている。建築では空間や、建築部材の基準寸法およびその体系を指す。で、このモジュールををシンプルな体系に調整することをモジュラー・コーディネーションという。

コーディネーションは馴染みのことばだ。ライフサイクル・コーディネーション、ジョブ・コーディネーション、カラー・コーディネーションなど建築に関係することばもいくつかある。

ところで、この積み木には4種類のパーツがある。各パーツには名前がついていて、タイルが40×40×20、レンガが40×80×20、サイコロが40×40×40、柱が40×40×80という寸法(単位はmm)になっている。サイコロ以外は建築用語(サイコロという建築用語も実はあるのだが)だから、あるいは建築を意識して名前をつけたのかもしれない。そう、積み木は実に建築的な遊びだ。

この積み木は適当に積み上げていっても写真のように高さが揃う。平面的に並べていっても4角形にすることが容易にできるし、立体的に並べても直方体や立方体にすることができる。

それは、上記のようにパーツの寸法が20mm、40mm、80mmの3種類しかなく、20mmの倍数の寸法に限定しているから。つまり寸法を特定のモジュールに合うように決めてあるから。

モジュラー・コーディネーションという概念を説明するのに具合がいい積み木だ(どうも説明がうまくないが・・・)。

モジュラー・コーディネーションは建築生産の分野では重要な概念。建築を構成する部材の寸法がこの積み木のようにシンプルな体系になっていると何かと具合がいい。材料を歩留りよく使うこともできる。

日本の伝統的な木造住宅の平面は3尺(1尺は303mm)を基準とする寸法体系でできている。このことを生産の合理性という観点から評価することもできる。木の文化の奥行きは深い。

今度機会があれば、この積み木を使って、モジュラー・コーディネーションをビジュアルに分かりやすく説明したい。

木の感触をで唇で知った赤ちゃん、次は指先だとこの積み木を考えた友人。なかなか冴えた企画だ。


松本ぼんぼん

2010-08-05 | B 繰り返しの美学

女鳥羽川に架かる橋の上から

 松本ぼんぼん、昭和50年に始まった松本の夏祭りも回を重ねて今年で36回。参加連も次第に増えて今年は312連がエントリーしているそうだ。今週の土曜日、2万7千人が松本の夜を熱く踊る。

祭りの飾りが繰り返しの美学な光景をつくり出す・・・。

「ぼくらが夢見た未来都市」

2010-08-05 | A 読書日記



 「ぼくらは少年探偵団」を直接知っている世代ではありませんが、ひらがな表記のぼくらってなんだかすごくなつかしい感じがします。「ぼくら」という月刊の漫画雑誌もありました。

漫画や小説、映画に出てきた未来都市、あるいは建築家が提示した未来都市がどのようなものだったのか、その変遷を辿っています。丹下健三の「東京計画1960」やルドゥーの「製塩都市」、アーキグラムの「ウォーキング・シティ」など、有名な計画案も当然取り上げられています。

ぼくの遠い昔の記憶にあるのは鉄腕アトムに出てきた未来都市です。超高層ビル群とその間を縫うように伸びている高速道路。手元に「鉄腕アトム」はありませんが、「火の鳥 未来編」に描かれている都市もやはり超高層ビルが林立しています。

手塚治虫が描いた未来は既に現実のものとなっています。ロボットも都市も手塚治虫が「ビジュアルに示した未来」の実現を目指して技術開発が続けられてきたことによる当然の結果、と言ってもいいかもしれません。

ところで、丹下健三の「東京計画1960」はじめ、黒川紀章の「東京計画2025」、磯崎新の「海市」(このプロジェクトは知りませんでした)、菊竹清訓の「海上都市1985」など、日本の未来都市の構想ってなぜ海上都市が多いのでしょう。

国土が狭いから? 何もない海に都市をつくることがいかにも未来的だから? 地形的・地理的な拘束条件がほとんどないから? 神話の世界でも日本は海から生まれたことになっているのでは? 神さまが混沌とした海をかき混ぜたとき、しずくが島になった・・・。もしかしたら生命の源、母なる海が恋しいのかもしれません。

メモ)『ぼくらが夢見た未来都市』五十嵐太郎、磯達雄/PHP新書 8月最初の読了本。 人はどんな未来都市を構想してきたのか。