透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ファーストスプーン

2010-08-04 | A あれこれ

 赤ちゃんが初めて口にする離乳食をどんなスプーンで? 

プラスチック? それとも金属? 銀のスプーンだったりして・・・。プラスチックのスプーンが多いのかもしれませんね。

松本市では2007年から赤ちゃんの誕生祝いに「木のファーストスプーン」をプレゼントしているそうです。この企画をした友人が先日メールで知らせてくれました。昨日(3日)の夕方、友人の店を訪ねて現物を見せてもらいました(写真)。

木でできたスプーン、いいですね。長野県内の広葉樹(主にサクラだそうですが)を使って地元の6人のクラフトマンがひとつひとつ手づくりしているそうです。スプーンの形がクラフトマンによってそれぞれ違います。

日本は木の文化の国。赤ちゃんが木のぬくもりを直接体感するっていいですね。三つ子の魂百まで。木のファーストスプーンの赤ちゃんは将来きっと木を愛する人になってくれるでしょう・・・。



木のファーストスプーン ← 詳しい情報はこちらから。


蔵に棲む龍

2010-08-03 | F 建築に棲む生き物たち


棲息地:山形村 観察日:100418

蔵の妻飾り(この呼称は『民家のデザイン』川島宙次/相模書房 昭和61年発行に出てくる)には家紋や寿などの文字の他に縁起がいいとされる生き物、鶴や亀などが棲んでいる。龍も縁起がいいとされている。

文字の「龍」はよく見かけるが、この妻飾りには立派な龍が棲んでいる。龍は水の神だから火伏せの願いも込められているのだろう。

ちょうど樹の影が落ちていて写真が良くないのが残念。撮り直しをしたいと思うのだが、偶然通りかかったこの場所が今では分からず、果たせないでいる。



その後見つけることができた。撮影日:100923

ところで、この妻飾りについて例の路上観察学会(*1)の座談会ではこんな会話が交わされている(藤森照信展の会場で買い求めたカタログに収録されている座談会in茅野 収録日100403)。

藤森:あれ、名前がないんですよ。
赤瀬川:ないの?鏝絵と言ったらもっと一般的な。
松田:蔵絵とか。
林:蔵なんとかでしょうね。
藤森:蔵丸、蔵丸がいいかな。
赤瀬川:あれがあるのは、蔵に限るのかな。
藤森:蔵しかない。
林:じゃあ、棟木飾り。
藤森:(前略)蔵のワッペンみたいなものだね。
林:蔵ワッペン(笑)。

収録されている会話の一部を省略した。

ということで路上観察学会では蔵ワッペンに決まったようだが、どうも私にはしっくりこない呼称なので、妻飾りとする。

*1 路上観察学会メンバー 赤瀬川原平 藤森照信 南伸坊 松田哲夫 林丈二(敬称略)



― てっぺんにこだわるのはなぜだろう

2010-08-02 | A 火の見櫓っておもしろい



塩尻市内にて:塩尻駅の近く、市街地に火の見櫓があることに気がついた。ちゃんと半鐘が吊るされている。平面形が円形の屋根と円形の見張り台。見張り台と比べて屋根が小さい。



松本市内にて:6角形の屋根に6角形の見張り台。毎日通勤途中で目にする火の見櫓だが、近くで観察したのは初めて。梯子が見張り台の上まで伸ばされている。これは上り下りしやすいだろう。

火の見櫓の屋根をこのように飾るのはなぜだろう。人はなぜてっぺんのデザインにこだわるのだろう・・・。前稿で取り上げたが、自然のデザインが答えのヒントにならないだろうか・・・。人は自然に学び、自然から大いに影響を受けてきたのだから。 


 

 


ひまわりのデザイン

2010-08-02 | A あれこれ


ひまわり 100801

 自然は先端をどのようにデザインしているのだろう・・・。

ひまわりの花のデザインを説明するには各部の名称を記述する必要があるが、知らないので調べてみた。

ひまわりは小さな花がいくつも集まってできている(そうか、全体でひとつの花じゃないんだ)。小さな花があるルールに従って並ぶこと、あるいは並んだ状態を花序という。序にこの意味がある(秩序や公序の序ってそういう意味か・・・)。花序、このことばは知らなかった。

花序にはいくつかのパターンがあってそれぞれ名前がついている。ひまわりは頭状花序という。花茎の先端に平らな花床(平面的に広がった花序軸)が付き、そこにこげ茶色の筒状花が花序を形成している。なぜ「頭状」というのか、やはりてっぺんを意識してのことではないだろうか。

では筒状花はどのような序、並び方のルールに従って花序を形成しているのだろう・・・。以前書いたフィボナッチ数列(←過去ログ)に従っている。この数学的なルールによって円形に筒状花が広がり、そのまわりを黄色い舌状花が囲んでいる。

筒状花とは文字通り花弁が筒状になったもの、舌状花も読んで字の如し。

自然のデザインには意味があるはずだ。では、まわりの舌状花より、筒状花の方が色が濃いのはなぜ? そして、上の写真を見れば舌状花も外側から中央に向かって色が濃くなっていることが分かるが、なぜ?。

この答えはしばらく前に読んだ『昆虫 驚異の微小脳』水波 誠/中公新書に出てくる。暗くなるとお父さんたちが赤や紫にひかれるのと同様、昆虫誘導のデザインとだけ記しておく。

まわりに舌状花を配し、中央に筒状花を規則的に並べる。そして色も変える。このことの意味・・・。やはり自然のデザインはすごい!

メモ) 花序、頭状花序、花床、花序軸、筒状花、舌状花 



 


夏休みに再読したい本

2010-08-01 | A ブックレビュー

 夏休みに再読したい本を挙げてみた。 

『古寺巡礼』と『風土』和辻哲郎(共に岩波文庫):鋭い観察力と優れた洞察力。

『胎児の世界』三木成夫/中公新書:胎児の成長過程に生命の進化が再現されている!

『流れる星は生きている』藤原てい/中公文庫:終戦の年に満州から幼い子どもと信州まで引き揚げてきた著者。母親の子どもに対するとても深い愛情、子どもを死なせてはならないという「執念」。若いお母さんたちに読んで欲しい。育児放棄なんて・・・。

『日本の近代建築』藤森照信/岩波新書:学者・藤森さんのこの本は日本の近代建築史を概観するのにいい。藤森さんの恩師・村松貞次郎の『日本近代建築の歴史』岩波現代文庫と併読したい。

『「縮み」志向の日本人』李御寧/講談社学術文庫:日本文化論の白眉。あらゆるものを「縮める」ところに日本文化の特徴がある。豊富な例示、説得力のある論考。

『木精(こだま)』北杜夫/新潮文庫:北杜夫は『どくとるマンボウ青春記』とこの小説。「追憶」がキーワード。


 ブックレビュー 1007


えんぱーく

2010-08-01 | A あれこれ


えんぱーく(塩尻市市民交流センター) ←過去ログ 中心市街地にこんなにぎわいが戻るといいのだが・・・。

 えんぱーくは、「図書館」「子育て支援・青少年交流」「シニア活動支援」「ビジネス支援」「市民活動支援」の5つの重点分野を設定している(利用案内パンフによる)。

このプロジェクトにはプロポーザルの公開審査のときから注目していた。選ばれた案は約100枚の壁柱によって成立させる構造と空間の提案だった。壁柱やコートと呼ばれる4つの吹き抜けがどんな効果をもたらすのか・・・。

とりあえず今回は簡単な印象記。

各階の空間を視覚的に適度につないでいる。見え隠れするいろいろなスペース。今まであまり体験したことのない、変化に富んだ空間。

館内に入ると直ちに全体像が把握できるという単純明快性な空間(郊外の量販店のような)とは違って、適度な迷路性(とでも表現すればいいのか)が非日常的な楽しさを創出している。

「白の空間」が色々な本が並ぶ書棚や家具などをひき立てている。床のフローリング(工事中の見学会で樹種を聞いたが忘れた)が効いている。

プロポーザルの審査の際、主たる用途の図書館については単純明快で分かりやすいことが大切だと、図書館の専門家から指摘があったが、このようなちょっと分かりにくい空間構成もありかな、と思った。


メモ)館内撮影には許可が必要。