透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「漱石文学における「甘え」の研究」土居健郎

2020-08-06 | H ぼくはこんな本を読んできた




『漱石文学における「甘え」の研究』土居健郎(角川文庫1973年7版発行)

 日本文化論の名著と評される『甘えの構造』(弘文堂1974年59版発行)の著者・土居健郎がその「甘え」理論により浮きぼりにする漱石文学の作中人物論。

本書で論じられているのは「坊ちゃん」「坑夫」「三四郎」「それから」「門」「彼岸過迄」「行人」「こころ」「道草」「明暗」 以上の作品。

**またわれわれは日夜人間関係の束縛の中に呻吟し、それを切りたくとも切れないでいるが、「坊ちゃん」は勇猛果敢にすべての束縛する関係を断ち切るので、彼に声援を送りたいような気持に駆られる。要するに「坊ちゃん」はわれわれ日本人すべての者が内心に秘めている夢を実現している。「坊ちゃん」がかくも一般の人気を博するようになった理由はまさにここに存していると考えられるのである。**(28頁)

2冊とも20代で読んだ。なぜ20代で読んだ本を多く残したのだろう・・・。遠い昔を懐かしむ気持ちが強いのかもしれない。


 


2020-08-05 | A あれこれ


 先日載せたツバメの巣の写真。今日(5日)見ると雛がいた。左右ふたつの巣を繋げたような形の巣に3羽の雛が確認できた。右にもう1羽いるのかもしれない。

やはり巣が浅すぎると思う。少し成長して体が大きくなると、エサをねだる時バランスを失って巣から落ちてしまうのではないか・・・。心配だなぁ


 


「復活」トルストイ

2020-08-03 | H ぼくはこんな本を読んできた



『復活』トルストイ(新潮文庫 上:1973年35刷 下:1973年31刷)

 **トルストイがかりに『復活』以外、何も書かなかったとしても、なお且つ彼は、偉大なる作家として認められたであろう。**(上巻408頁) 上下2巻の場合、解説は下巻の巻末に載っているものと思うが、この小説は上巻に載っている(などと小説の内容と関係のないことを書く)。

今は海外の作品をあまり読まない。昔もそうだった。従って残した文庫本で海外の小説は少ない。上掲のような解説があるが、やはりトルストイといえば『戦争と平和』であろう。ぼくはこの長編を読んでいない。この先、読む機会はないだろう。「読まずに死ねるか作品」に何があるかなぁ・・・。


 


「湯川秀樹対談集」

2020-08-02 | H ぼくはこんな本を読んできた



『半日閑談集 湯川秀樹対談集Ⅰ』(講談社文庫1980年第1刷発行)
『科学と人間のゆくえ 湯川秀樹対談集Ⅱ』(講談社文庫1981年第1刷発行)

湯川秀樹の相手とテーマは以下の通り(上:対談集Ⅰ 下:対談集Ⅱ)。40年前に読んでいた本。小松左京とどんな話をしたのか?、司馬遼太郎とは?梅棹忠夫とは?加藤周一とは? 

本の良いところはいつでも書棚から取り出して読むことができること。そのフリーアクセス性。ただしカオスな書棚では無理。ぼくの場合、思い切ってかなり本を処分したから可能になった。いや、その前に本は書棚に並べることができるところが良い。電子本ではかなわない。このことで紙の本が好きな人が多いのではないだろうか、これはあくまでもぼくの推測に過ぎないが。




処分しないで残した文庫の全てをここに載せるつもりはないから、どこかで打ち切りにしないと・・・。



あれ?

2020-08-02 | A あれこれ


 建設現場の仮設事務所にツバメがつくった巣。大小ふたつの巣をつなげたような形をしている。

仮設事務所2階の床パネル端部の裏面、幅の狭い水平面を「敷地」に選んでいるが、よく見かけるお椀のような形の巣をつくるのにはこのスペースの高さが足りなかったのかもしれない。で、やむなく横に広げた? 

ツバメは常に一定の深さの巣をつくるわけではなく、敷地の条件で変えているのだろうか。外敵に襲われることはないと判断した場合には浅くてOKとか? ここは事務所1階の出入口の直上だから、敵は襲ってこないと思う。出入りしているのは善良で優しいおじさんたちだし。だが、浅い巣だと雛が落下してしまうという悲劇も起こり得る。敷地選択を誤った?

こんな形の巣を見るのは初めて。巣の左側にも卵があるのかどうか、分からない。雛が孵って顔を出すと分かるだろう。

常にこのような形の巣をつくって左をトイレとして使うようにしてくれたらいいけどなぁ。でもツバメが機能分化させた巣をつくったらすごいと思う。そんな巣をつくる鳥っているのかな。

『生きものの建築学』長谷川 堯(平凡社1981年 初版第1刷) 
生きものがつくる巣とヒトがつくる建築との類似性を論じていて興味深い本。


鳥の巣:外巣と産座(卵が乗る部分)


ブックレビュー 2020.07

2020-08-02 | A ブックレビュー



 7月に読んだ本は6冊。充実の読書月だった。

『夢の女』永井荷風(岩波文庫2019年第7刷)
ようやく僕も荷風の小説を味わう歳になった、ということか。これからは荷風の作品を読んでいきたい。読み急ぐことなく、時々。何年かかるか分からないが、楽しみがあることは良いことだ。

『植物のすさまじい生存競争 巧妙な仕組みと工夫で生き残る』田中 修(SBビジュアル新書2020年初版第1刷)
週末に庭の雑草たちとバトルを展開している。彼らはしたたかだと思うし、懸命に命を繋いでいると思う。負けそう・・・。彼らの事を知ろう。

『黄いろい船』北 杜夫(新潮文庫1978年発行)
中短編5編が収録されているが表題作が特に好き。北 杜夫もこの作品が好きだったようだ。

『増補 みんなの家。建築家一年生の初仕事と今になって思うこと』光嶋裕介(ちくま文庫2020年第1刷発行)
初仕事が内田 樹さんの道場兼住宅、そしてその仕事の一部始終が書籍化された。すばらしい。

『火星無期懲役』S・J・デーモン(ハヤカワ文庫2019年発行)
終身刑で服役中だった主人公はじめ7人の囚人が火星基地建設プロジェクトに参加して火星へ。彼らは火星で次々に死亡していく・・・。事故?自死?殺人? 500頁超の長編はラスト3頁のために書かれた。

『コロナ後の世界を生きる』村上陽一郎編(岩波新書2020年第1刷発行)
**どれほどの愚鈍さを身につければ、この政府のもとで危機を迎えた事実を楽観的に受け止めることができるだろうか。**(6頁)
**「日本モデル」「高い民度」などの自賛論の足元で、絶えざる「医療崩壊」への警鐘は鳴り続けている。**(282頁)などという厳しい記述も。

このところの感染確認者数を新聞で見るにつけ「コロナ後」の世界は来るのだろうか、と思ってしまう。