『漱石文学における「甘え」の研究』土居健郎(角川文庫1973年7版発行)
■ 日本文化論の名著と評される『甘えの構造』(弘文堂1974年59版発行)の著者・土居健郎がその「甘え」理論により浮きぼりにする漱石文学の作中人物論。
本書で論じられているのは「坊ちゃん」「坑夫」「三四郎」「それから」「門」「彼岸過迄」「行人」「こころ」「道草」「明暗」 以上の作品。
**またわれわれは日夜人間関係の束縛の中に呻吟し、それを切りたくとも切れないでいるが、「坊ちゃん」は勇猛果敢にすべての束縛する関係を断ち切るので、彼に声援を送りたいような気持に駆られる。要するに「坊ちゃん」はわれわれ日本人すべての者が内心に秘めている夢を実現している。「坊ちゃん」がかくも一般の人気を博するようになった理由はまさにここに存していると考えられるのである。**(28頁)
2冊とも20代で読んだ。なぜ20代で読んだ本を多く残したのだろう・・・。遠い昔を懐かしむ気持ちが強いのかもしれない。