透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「宿木」

2022-09-15 | G 源氏物語

「宿木 亡き八の宮が認めなかったひとりの娘」

 匂宮と薫。匂宮は夕霧の娘・六の宮の婿になった。妻の中の君はこのことを知り、宇治を出たことを悔いた。結婚も宇治を出ることもしなかた姉の大君は正しかった、と妹の中の君は思った。

匂宮はしぶしぶ六の宮と結婚したが、しだいに六の宮に惹かれていった。で、匂宮は次第に中の宮が暮らす二条院から足が遠のく。中の君は悲観し、結婚の仲立ちをした薫も心外に思っていた。

中の宮は宇治に帰りたいと思い、薫に私をスキーに、いや、宇治に連れてってと頼む。この時、薫は中の宮の部屋に入り込んで、言い寄った。だが、中の宮が腹帯をしているのに気が付いて、自制した。

久しぶりに中の宮に会った匂宮は中の宮の懐妊を知って喜びながらも薫の残り香に気が付いて・・・。**「こんなに残り香が染みついているのなら、何もないはずはないね」**(286頁)と中の宮を責めたてた。

翌春。中の宮は男の子を出産した。で、社会的に認められることになった。

匂宮が結婚し、薫も女二の宮と結婚した(婿となった)。四月のはじめ頃、女二の宮を三条宮に迎えることにした。だが、いまだに大君が忘れられず、大君に似ている中の君をしばしば訪ねていた。薫の懸想を疎ましく思う中の君は大君とうりふたつの異母妹(浮舟)がいることを薫に話した。

ある日、宇治を訪ねた薫は山荘に立ち寄った浮舟をのぞき見た・・・。偶然の出来事。ドラマ化するなら、大君と浮舟はひとりの俳優(今は女優とはあまり言わないようだ)が演ずるだろう。一人二役。

ようやく浮舟登場。面白い展開になってきた・・・。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔 
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋      


火の見櫓の屋根に蕨手があるのはなぜ?

2022-09-14 | A 火の見櫓っておもしろい




山梨県富士吉田市上吉田の火の見櫓の脚を潜る神輿(過去ログ


灯籠 富山県高岡市の勝興寺にて

 火の見櫓の屋根の蕨手(わらびて)は何のために付けられているのだろう・・・。「特に意味はなく、単なる飾り」ではなさそうな気がする。蕨手は祭り神輿や神社仏閣の灯籠にも付けられているから、なおさら何か意味がありそうだ。

NHKのテレビ番組「チコちゃんに叱られる」で座布団の隅に房があるのはなぜ? が放送された(9月9日)。座布団の4隅の房には中の綿がずれないようにするという実用的な意味の他に、「邪気を祓う」意味があるとのことだった。房は卓上ほうきに形が似ている。大相撲の土俵の上の吊屋根の房にも同じ意味があるという。これはよく分かる。

番組を見ていて、蕨手にも同じ意味があるのではないかと思った。蕨手は名前が示す通り山菜の蕨をモチーフにしたデザイン。早蕨はこれからどんどん生長する元気なもの。そう、蕨手はみなぎる生命力の象徴なのだ。元気なものに邪気は取り憑きにくいといわれる。

双体道祖神には熱々な男神と女神の姿が彫られている。熱々カップルにも疫病神は取り憑きにくいといわれている(過去ログ)。『道祖神』降旗勝次編(鹿島出版会1981年)には次のような記述がある。**道祖の神々に官能的な姿態をとらせ、生命力の旺盛さを強調し、それによって悪霊などの外敵の侵入を防ごうとした人たちの心根は微笑ましい。**(182頁 太文字化 筆者)

蕨手が持つ意味をネット検索したが見つからなかった。で、ここで唱えてしまおう。火の見櫓の蕨手には厄除け、災害除けの意味がある、と。


追記:これは眉唾な珍説ではなく、案外当たっているかもしれないと勝手に思っている。  


火の見櫓の上部は遺せない?

2022-09-13 | A 火の見櫓っておもしろい

 上田市真田町長の戸沢地区の火の見櫓が予定通り、昨日(12日)解体された(前稿)。

全て撤去してしまうのは忍びないということであろう、見張り台から上の部分を残すことが予め決められていたようだ。差し出がましくも「見張り台も含めて残されたらいかがでしょう」と進言した。急遽そのように決めていただき、切断する位置が見張り台の下に変更された。

だが・・・。

360
撮影日2022.09.12

見張り台から上の部分が戸沢公民館の前庭の隅に降ろされ、仮置きされた。


トンボまで別れを惜しむかのように解体作業開始前から避雷針の先にずっととまっていた。


地上に降ろされた見張り台の手すりにもトンボがとまっている。ぼくは同じトンボだと思う・・・、きっとそうだ。

*****

地上に据えられた火の見櫓はやはり大きい。方形(平面が4角形)の1辺の長さ約1.3m、円形の見張り台の直径約1.8m、手すりの高さ約0.9m。ざっと寸法を計測した。


見張り台を下から支えている方杖には断面がL形の山形鋼、この場合2辺の長さが等しい等辺山形鋼が使われている。


方杖の上端で見張り台の床の持ち出し梁(山形鋼2枚合わせ)を挟み込んでボルト留めしている。


下端は山形鋼を裂いて柱材のやはり山形鋼にボルト留めしている。


表面が平滑な半鐘 直径約35cm、高さ(7.5cmの吊り金具を含む)約50cm。

解体作業中、通りがかった人が立ち止まって様子を見たり、ケータイ(カメラ)を向ける人も。

火の見櫓はかなり錆びている。地域の皆さんに錆止め塗装作業をしていただければいいなぁ、と思った。イベント的に塗装作業をすることで今までと変わらず、シンボルとして愛され続けるだろう、優しい地域の人たちに。


追記:火の見櫓の一部を残すことにクレームがついてしまったようだ。どのような結論になるのだろう・・・。願わくば残していただきたいのだが。


「東京物語」追記

2022-09-13 | E 週末には映画を観よう

 「東京物語」。監督は言わずと知れた小津安二郎。1953年(昭和28年)に公開された名作をDVDで観た。映像はもちろんモノクロ。低い位置に据えたカメラが尾道で次女と暮らす周吉(笠 智衆)ととみの老夫婦や、東京で暮らす長男と長女の家庭の様子、そのディテールを的確に捉えている。

ストーリはいたってシンプル。老夫婦(と言っても60代)が東京に子どもたちを訪ねる。心を込めて二人をもてなしたのは長男・幸一でも長女・志げでもなく、戦死した次男の奥さん・紀子(原節子)だった。紀子は仕事を休んで二人を観光案内したり、酒好きな義父のために隣りから酒を借りてもてなす。

周吉ととみは子どもたちの家庭には自分たちの居場所がないと感じて、予定を早めて尾道に帰って行く。直後にとみが危篤に。葬儀の後、実の子どもたちは早々に帰ってしまうが、紀子だけは残って義父の世話をする。

紀子が東京に帰るという日、周吉は妻・とみの懐中時計を形見に紀子に渡す。その時、周吉は次の様に言う。「妙なもんじゃ。自分が育てた子どもより、いわば他人のあんたの方がこのわしらに良うしてくれた。いや ありがとう」この台詞はこの映画のコンセプトを示している。親子とは何か、親子の絆とは何かを問う最も大事な台詞だ。

やはり名作と評される作品、なかなか味わい深くて良かった。この秋は小津安二郎の作品を観るか・・・。


 


上田市真田町傍陽の貫通櫓

2022-09-13 | A 火の見櫓っておもしろい

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1391 上田市真田町傍陽 傍陽小学校、傍陽郵便局の近く 4柱4〇型貫通脚(タイプ不明)撮影日2022.09.13


県道158号添いに立っている。周辺に高い建物があるわけでもないので、遠くからでもよく見える。傍陽地区は今回が初めてではないが、この辺りは初めて。どのようなところに立っているのか、周辺の状況が分かる写真はぜひ撮りたい。




消防倉庫の屋根から火の見櫓に登るようになっている。




カンガルーポケットの設置意図不明


櫓内に入るための開口は現場対応か?  ブレースを切断して縦枠に繋いでいる。









火の見にさようなら

2022-09-12 | A 火の見櫓っておもしろい


(再)上田市真田町長戸沢 撮影日2022.09.12 午前8時半頃から11時半過ぎまで解体作業を見守った。


半鐘を外して吊り下ろす


バーナーで部材を焼き切る


吊り上げた火の見櫓上部は存置する。








奥に処分しないで残す火の見櫓上部が仮置きしてある。


櫓が撤去されて消防倉庫だけが残った。倉庫は明日(13日)解体作業に入る。

 予定通り火の見櫓を解体するという知らせを受けて、今日は朝早くから解体の様子を見ていた。1961年(昭和36年)に建設されて以来、地域を見守り続けてきた火の見櫓の解体は実にあっけないものだった。

火の見にさようなら・・・。



地元自治会長さんの依頼で送る参考事例 山形村の山形小学校前庭に残されている火の見櫓上部 戸沢の火の見櫓もこんな感じに残されるだろう。




「早蕨」

2022-09-11 | G 源氏物語

「早蕨 中の君、京の二条院へ」

 宇治十帖の中では最後の「夢浮橋」とこの「早蕨」は短いが、他の帖は長くて、例えば次の「宿木」は80ページ近くある。

**日の光はどんな藪でも分け隔てなく照らす。中の君はそんな春の陽射しを見て、どうしてこんなに生き長らえているのかと、過ぎた月日が夢のように思える。**(227頁)中の君は父宮を亡くした時の悲しみよりも姉君を恋しく思い、つらい気持ちでいる。匂宮は宇治に行くことがなかなかできないので、中の君を京に迎えることにする。 

ここはもっとくだけた感じでレビューを書こう。

薫は八の宮の娘二人の姉(大君)を好きだなぁと思っていた。だが、その姉が亡くなってしまってすっかり元気をなくしている。薫は姉と結婚したいがために、匂宮と妹(中の君)を結婚させたけれど、だんだん姉に似てきた妹を見て、「お姉さんが亡くなった後、自分が妹さんと結婚すれば(お世話すればよかったと本文にある)よかったなぁ」と後悔している。でも、「今となってはあきらめるしかないか、よからぬことをしでかすといけないし・・・」などと考える。薫は真面目というかなんというか。

匂宮から妹さん(中の宮)の引っ越しのことで相談された薫はその準備をする。

引っ越しの前日、薫は朝早く宇治に行く。「もしお姉さんが生きていれば、今ごろはずいぶん親しくなって、匂宮より先に、妹さんではなくて、お姉さんを京に移そうとしただろうな・・・、遠慮しているうちにお姉さんとは他人のまま終わってしまったなぁ」などと思い続けている。「青春ボックス」の手紙を読んだすぐ後でこんな件を読んだせいだろうか、なんとなくせつなくてうるっとなる。

妹さんと対面した薫は一段と大人びて目を見張るほどの美しさに、お姉さんのことを思い出す。お姉さんによく似ている妹さんを見て、「自分からこの女性を他の男と結婚させてしまったんだなぁ」と、深く後悔する。

二条院に引っ越してきた中の宮は見たこともないほどの立派な邸にびっくり。薫は匂宮が中の宮を大切にしていることを耳にして、みすみす中の君を譲ってしまった自分を愚かしく、胸が締め付けられるような思いでいる。で、取り返せるものなら、と何度もつぶやく。後悔先に立たず。

ここで、紫式部は得意の和歌を文中に挟む。**してなるや鳰(にほ)の湖に漕ぐ舟のまほならねどもあひ見しものを(琵琶湖を漕ぐ舟の、順風を受ける真帆 ― そんなふうに完全に契りを交わしたわけではないけれど、あの方と一夜をともにしたこともあるのに)**(241頁) 一夜をともにしたといっても、お姉さんに軽薄な人だと思われたくなくて、妹さんとは何もしなかったけれど。

右大臣(夕霧)は娘の婿にしたいと思っていた匂宮が思いも寄らない中の宮を迎え入れてしまったことを知り、ならば薫にと思う。だが、薫はその気になれないと、そっけない。お姉さん似の妹さんに惹かれているのだから。

時々二条院に中の宮を訪ねる薫。匂宮は中の君に「薫くん(中納言)と他人行儀なことはしないで、近くで思い出話でもしたらどう」と言ったかと思うと、「あんまり心を許すのはどうかな、薫くんも心じゃ何を思っているか分からないからね、注意した方がいいよ」とも言う。薫くんとの仲について、匂宮から心穏やかではないようなことを言われて、中の君もつらい・・・。

前にも書いたが、宇治十帖は時代を現代に置き換えてドラマにしてもおもしろいだろう。まだ読み終えていないけれど、そう思う。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔 
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋       



青春の想い出を留める手紙

2022-09-11 | A あれこれ

 先日実家で見つかった「青春ボックス」の中身は手紙やはがきだった。読み終えて処分し難く、そのまま大事に残しておいたのだろう。すっかり忘れていたその箱をおよそ40年ぶりに開けたのだった・・・。

大学に受かった年の3月に自宅に送られてきた小包、中にはかわいい裸の人形・ポーズローラちゃんと、〇〇君 僕の名前だけ表書きされた手紙が入っていた。その手紙も「青春ボックス」に入れてあった。この年の同じ筆跡の年賀状も。

小包の女性と横浜港で観光船に乗ったのは1978年の10月。もう帰れないあの日には・・・。

『源氏物語』第41帖「幻」には僕がしていたことと同じことをあの光君もしていたことが描かれている。光君は姫君たちの手紙を少しずつ残し、特に紫の上の手紙だけは別にまとめて残していた。

**須磨にいた当時、あちこちの姫君たちからもらった手紙の中で、紫の上からの手紙は別にしてまとめ、ひとつに結わえてある。自分自身でそうしたのだけれど、それも遠い昔のことになってしまったと思う。**(中巻612頁) 

僕も箱の中の手紙を読み返して、光君と同じことを思い、感慨に浸った。

出家することを思い描く光君は残しておいた手紙をどうしたか・・・。**もうこうしたものを見ることもないだろうから残しておいても仕方あるまいと、気心の知れた女房二、三人ばかりに命じて、目の前で破かせる。**(612頁) 光君にとって特に大切な紫の上の手紙だけは残した? いや、光君はみな焼かせてしまった。

280
撮影日1980.08.24 

箱の中の何通もの手紙やはがき。差出人たちの幸せを祈りながら、遠い青春の日々の想い出を留める手紙やはがきとさよならしよう。不思議なせつなさ・・・。


青春の想い出シリーズ 完


「「美味しい」とは何か」

2022-09-10 | A 読書日記


 『「美味しい」とは何か 食からひもとく美学入門』源河 亨(中公新書2022年)を読んだ。

味に関する哲学的とも言える論考。「美味しい」ということについて注意深く、周到に論考を進めている。あることを説明をすると、それに対する反論を想定し、その反論に対する説明もその都度している。

先日『視覚化する味覚』久野 愛(岩波新書2021年)を読んだが、その時は書名からしてよく分からなかった。だが、この関連本を読んで納得した。

「第1章 五感で味わう」には次のような実験が紹介されている。味に影響のない着色料で赤くされた白ワインをボルドー大学醸造科の学生(ワインの味に詳しい)54人に飲んでもらい、味や香りを評価してもらったところ赤ワインによく使われる言葉で表現されたという。そう、**食べ物の色や形、つまり見た目も味に影響する。**(32頁)のだ。 

数種類の銘柄のビールを試飲しておき(味を覚えておいて)、目隠しをして味覚だけを頼りに銘柄を当てるというゲームを家族でしたことがあるけれど、外した。試飲した時ははっきり味の違いが分かったのに・・・。味覚だけでは味は分からない、このことは人気テレビ番組「芸能人格付けチェック」もよく示している。

本書ではラーメンを例に食べ物のおいしさの評価には主観的な側面だけでなく、客観的な側面もあるということについての論考もされている。火の見櫓の美しさを考える上でも参考になる。料理は芸術かどうか、このことについての周到な論考も論理的にものを考えるための参考になると思う。

なかなか興味深く、おもしろい本だった。


 


U1は何しに対馬へ? 青春の想い出

2022-09-09 | A あれこれ





 1981年、この年の日本建築学会の大会の会場は九州産業大だった。東京発16:45(この時刻はメモがあった)、博多着09:11(ネットで調べた)の寝台特急「はやぶさ」熊本行き。


福岡08:45発 対馬行き(1981.09.28) 

建築学会大会の後、対馬へ向かった。この時は台風が接近中で、この直後の便から欠航した。離陸から着陸までシートベルトをしたままだった。飛行機(YS11)はかなり揺れた。

U1は何しに対馬へ?




撮影日1981.09.28

石屋根を見るために。