宮本常一著「野田泉光院 旅人たちの歴史1」(未来社)
読了(笑)。
愉しく発見がある読書でした。
この一箇所を引用。
「やはりこれは生活や技術の問題になるのですが、
文化というものを見て行く場合に、幅広くそういう
ことに気をつけて見ていただきますと、
今まで見落とされているいろんな問題が解決つく。
今まで解ったように思いながら、実は私なんか、
そういうことがみんなわからなくてね。なぜだろう、
なぜだろうと思い続けておったことがたくさんあるんです。
それが藩の記録や庄屋文書には出てこないで、
こういう優れた紀行文を読むことで、いくつも不明な所を
明らかにするきっかけをつかむことができるんです。
ただ非常に記事が短いものだから、見落すんですけれど、
これは皆さんが旅をしておって、旅の中の疑問と、
こういうものとがうまくぶつかり合った時に
解決の糸口が出てくるんだと思うんです。
私はこの修行日記を読み出して、
さかんにこの書物を激賞しますけれど、
他の紀行文の中には、これがないんです。
なにゆえこれが泉光院のものの中に出てくるのかというと、
泉光院が自分で金を払って宿へ泊まるってことがなかった
ということだろうと思うんです。
頭を下げて泊めてもらわなきゃ泊まれない旅をしておった
こと、それが人の生活を裏側から見て行く機会を与えた
ってことにあるのじゃないかと思う。
文章は非常に短くっても、実に的確に大事な問題を
おさえておった。これはこの人のえらさにあると思う。
と、もう一つは、さっきいったように、
この人はどう見てもわれわれの考えられないような
旅を平気でやっているんですね。行きつ戻りつですね。
これは一見すると無駄なようだが、その中から
これだけ的確にものをつかめる旅が生まれて来た
んだろうと思う。
なにか折りがあれば、これだけ切り離して、
一冊にして単行本で出す。そして、これにつけられている
註ではなくて、今いったような註をつけて皆が
読める機会を作ったら、私は菅江真澄なんかより
はるかにレベルの高い資料のように思うんです。」
(p201~202)
うん。読めてよかった。感謝したくなります。
読了(笑)。
愉しく発見がある読書でした。
この一箇所を引用。
「やはりこれは生活や技術の問題になるのですが、
文化というものを見て行く場合に、幅広くそういう
ことに気をつけて見ていただきますと、
今まで見落とされているいろんな問題が解決つく。
今まで解ったように思いながら、実は私なんか、
そういうことがみんなわからなくてね。なぜだろう、
なぜだろうと思い続けておったことがたくさんあるんです。
それが藩の記録や庄屋文書には出てこないで、
こういう優れた紀行文を読むことで、いくつも不明な所を
明らかにするきっかけをつかむことができるんです。
ただ非常に記事が短いものだから、見落すんですけれど、
これは皆さんが旅をしておって、旅の中の疑問と、
こういうものとがうまくぶつかり合った時に
解決の糸口が出てくるんだと思うんです。
私はこの修行日記を読み出して、
さかんにこの書物を激賞しますけれど、
他の紀行文の中には、これがないんです。
なにゆえこれが泉光院のものの中に出てくるのかというと、
泉光院が自分で金を払って宿へ泊まるってことがなかった
ということだろうと思うんです。
頭を下げて泊めてもらわなきゃ泊まれない旅をしておった
こと、それが人の生活を裏側から見て行く機会を与えた
ってことにあるのじゃないかと思う。
文章は非常に短くっても、実に的確に大事な問題を
おさえておった。これはこの人のえらさにあると思う。
と、もう一つは、さっきいったように、
この人はどう見てもわれわれの考えられないような
旅を平気でやっているんですね。行きつ戻りつですね。
これは一見すると無駄なようだが、その中から
これだけ的確にものをつかめる旅が生まれて来た
んだろうと思う。
なにか折りがあれば、これだけ切り離して、
一冊にして単行本で出す。そして、これにつけられている
註ではなくて、今いったような註をつけて皆が
読める機会を作ったら、私は菅江真澄なんかより
はるかにレベルの高い資料のように思うんです。」
(p201~202)
うん。読めてよかった。感謝したくなります。