対談集は、お気楽に読めるのが好き。ありがたいのは、
あとでよみがえる印象に残る言葉があったりするとき。
佐藤忠良・安野光雅『ねがいは「普通」』(文化出版局・2002年)。
このなかで、安野光雅さんが語っておりました。
安野】 司馬遼太郎さんがあるとき
『絵に描いてあるリンゴと本物のリンゴを比べたとき、
絵のリンゴのほうがいいってことは、どういうことなんだろう』
って謎をかけるんです。
『絵に描いたリンゴは食べられもしない。それなのに
絵のリンゴのほうがいいっていうのは、どういうことなんだろう』
って。
カレイの干物の絵を描く人がいるでしょう?
ではカレイの干物をキャンバスにはりつけたほうが
いいかっていうと、そうはならない。
( p22~23 )
そういえば、『謎かけ』って『問題を出す』ってことですね。
「問題を出すということが一番大事なこと、うまく出す。」
( 「対話 人間の建設」小林秀雄・岡潔 )
「問いはそのままに答へであり」
( 伊東静雄の詩「そんなに凝視めるな」の一行 )
「問いはそのまま答えなのだ」
( 杉本秀太郎著「見る悦び」p378 )
もどって、山根基世さんが佐藤さんに質問していました。
山根】 最近、佐藤先生は、木のデッサンだけを集めた本を
お出しになりましたが、彫刻家がなぜこんなに
デッサンやスケッチをよくなさるのですか?
( p63 )
その質問の下には、注がありました。
「『木』こどものとも539号/2001年2月、福音館書店刊
佐藤忠良の木のデッサンと、詩人・木島始の文による絵本。」
はい。気になるので古本で注文しました。これは、
後に表紙がしっかりした絵本になっておりました。
最初のページには、描く木の写真です。
次のページには、描いている佐藤忠良氏の写真。
その右ページに、言葉が添えられておりました。
おおきな木は
なにを かんがえているのかな
おおきな木を
えに かくと
おおきな木は
いろいろ はなしをしてくれる
そして、木の根っこのデッサンからはじまって
だんだんと枝が描かれ、木のこぶし、木々の様子。
そして、枝に緑がすこしずつ現れだす芽吹きの様子。
最後の頁は、写真でした。
スケッチブックを片手に、佐藤さんが右手で木に触れて
見あげております。木島始さんの文は
ありがとう
また くるよ