和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

司馬さんの謎かけ。

2021-05-24 | 本棚並べ
対談集は、お気楽に読めるのが好き。ありがたいのは、
あとでよみがえる印象に残る言葉があったりするとき。

佐藤忠良・安野光雅『ねがいは「普通」』(文化出版局・2002年)。
このなかで、安野光雅さんが語っておりました。

安野】 司馬遼太郎さんがあるとき

 『絵に描いてあるリンゴと本物のリンゴを比べたとき、
  絵のリンゴのほうがいいってことは、どういうことなんだろう』
  って謎をかけるんです。

 『絵に描いたリンゴは食べられもしない。それなのに
  絵のリンゴのほうがいいっていうのは、どういうことなんだろう』
  って。

 カレイの干物の絵を描く人がいるでしょう?
 ではカレイの干物をキャンバスにはりつけたほうが
 いいかっていうと、そうはならない。
          ( p22~23 )


そういえば、『謎かけ』って『問題を出す』ってことですね。

 「問題を出すということが一番大事なこと、うまく出す。」
   ( 「対話 人間の建設」小林秀雄・岡潔 )

 「問いはそのままに答へであり」
    ( 伊東静雄の詩「そんなに凝視めるな」の一行 )

 「問いはそのまま答えなのだ」
    ( 杉本秀太郎著「見る悦び」p378 )


もどって、山根基世さんが佐藤さんに質問していました。

山根】 最近、佐藤先生は、木のデッサンだけを集めた本を
    お出しになりましたが、彫刻家がなぜこんなに
    デッサンやスケッチをよくなさるのですか?
             ( p63 )

その質問の下には、注がありました。
「『木』こどものとも539号/2001年2月、福音館書店刊  
 佐藤忠良の木のデッサンと、詩人・木島始の文による絵本。」

はい。気になるので古本で注文しました。これは、
後に表紙がしっかりした絵本になっておりました。

最初のページには、描く木の写真です。
次のページには、描いている佐藤忠良氏の写真。
その右ページに、言葉が添えられておりました。

  おおきな木は
  なにを かんがえているのかな

  おおきな木を
  えに かくと

  おおきな木は
  いろいろ はなしをしてくれる

そして、木の根っこのデッサンからはじまって
だんだんと枝が描かれ、木のこぶし、木々の様子。
そして、枝に緑がすこしずつ現れだす芽吹きの様子。

最後の頁は、写真でした。
スケッチブックを片手に、佐藤さんが右手で木に触れて
見あげております。木島始さんの文は

  ありがとう
  また くるよ
コメント
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