そういえば、鎌田浩毅に池波正太郎の短文を引用した箇所があった。
そう思って、『ラクして成果が上がる理系的仕事術』(PHP新書)をひらく。
その第2章「仕事環境の整備術」の3に「『遊び』を確保する」があり、
そのなかで、池波氏の言葉が引用されておりました。
このなかで、鎌田氏は『バッファー法』なる言葉を登場させております。
「バッファー(buffer)とは『衝撃や苦痛を和らげるもの』という意味で、
鉄道業界など、車両の衝突のさいに衝撃を減らすための緩衝装置を指して
使われてきた用語である。・・・・
資料や機器が自由に移動可能であるようなシステムを、
最初からつくってしまう。ここでは自由に移動できることが、
もっとも重要なキー概念となる。たとえば、
ギュウギュウに詰め込まれた箱の中では、モノは移動できない。」(p66)
この数ページ先に、池波氏の文を紹介しているのですが、
そのすこし前から、引用してみます。
「私の場合、原稿を書くさいには、締め切りよりもずっと早めに
書きあげるようにしている。余った時間にゆっくりと熟成させて、
内容をよくしてゆくのである。・・・・・
このようにすると、締め切りを気にしながら書くときにはとうてい
出てこなかったような、斬新な発想が生まれてくるものなのだ。
時代小説家の池波正太郎は、引き受けた連載は、
締め切り日の半月前に原稿を完成していたそうだ。
彼はこう打ち明ける。
どの仕事にも余裕(ゆとり)をもって取りかからねばならない。
余裕とは『時間』である。・・・・・・・・・
小説の場合、締切りの半月前に出来上がることもめずらしくない。
しかし、すぐには渡さない。折にふれて机の上に出して見て、
推敲し、手を入れる。
( 池波正太郎「男のリズム」角川文庫p189~196 )
このシステムは作家だけでなく、すべての知的生産に
携(たずさ)わる人に有効であると思う。
バッファー時間には、自分の無意識とじっくり語りあう
ことができる。そうして自分の奥底に潜んでいる何かを
汲みあげるのだ。・・・・・」(p72~74)
BSフジの、池波正太郎の『鬼平犯科帳』を、
録画して、それを嬉々として見たのでした。
亡くなった方々が、時代劇で活躍されてる。