和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

宝の持腐れ。

2025-01-18 | 古典
読むのも何なので、本棚を整理していたら、こんなのが出てきました。
金子武雄著『 日本のことわざ 評釈(一) 』(大修館書店・昭和33年)。
はい。古本で安くて、それで触手が動き買ってあって、
そのままになっておりました。いつかは読もうと買った本です。

こういう時は、とりあえずパラリとひらいてみる。
パラリとひらくのも『 他生の縁 』。ということでひらく。

『 苦しい時の神だのみ 』が目に入りました。
ああいいなあ。そう思えたので、はじめから引用。

「 大体似た意で、次のようなさまざまな言い方もある。

     叶(かな)はぬ時の神だのみ
     術(じゅつ)ない時の神だのみ
     困った時の神だのみ
     せつない時の神だのみ (北条氏直時分諺留)
     悲しい時の神祈り (本朝二十四孝)
     叶はぬ時の神たたき (松の落葉)
     悲しい時の神たたき (金屋金五郎浮名額)
     せつない時の神たたき (根無草)   」


このように、いろいろな箇所からピックアップされた言葉が並びます。
(全部のことわざが、これほど同類をならべてあるわけではなかった)
さらに次をつづけてゆきます。

「  総括すれば、苦しい時、思うようにならない時、
   途方に暮れた時、困った時、せつない時、悲しい時、
   こんな時に神に救いを求める、というのである。

   『神たたき』は神の注意を呼び起してしきりに祈ることの意らしい。
   ・・・・・・
   ・・よほどの神の信仰者でない限り、ふつうの人は神を忘れている。
   あるいは神に祈りはしない。そう思う通りにならなくとも、
   どうというほどのことはないからである。

   ところがせっぱ詰って途方に暮れ、せつなく、悲しく、苦しい時、
   やっぱり神にとりすがろうとする。
   自分の力ではどうにもならないとさとるからである。
    ・・・・
   ・・ふだんほとんど神を忘れ、あるいは思わない者が、
   そんな時になって急に神だのみするのは、当人には
   なんだか照れくさく、はたからみるとおかしい。
   それでもやはり神にとりすがるのが人情の真実である。
   そこに人間の身勝手と弱点とが見られる。
   この諺はそうした事象を指摘しているのである。

     Some are atheists only ㏌ fair weather.
                 The river past, and God forgotten.

   西洋のこういう諺も、同じような事象を指摘している。
   『 ある人々は日和のよい時だけ無神論者である 』、
   『 川を渡り終わると神は忘れられる 』という意であろう。 」
                       ( p146~147 )


このように、同類の英語の格言がある場合には、
それを各諺の説明の中へ入れておられます。
はい。買っておいてよかった(笑)。
ちなみに、この本は、何回か文庫にもなっているようです。
はい。本棚の整理はしてみるものですね。
そのまま宝の持ち腐れとなるところでした。

はい。ここまで来たら『 宝の持腐(もちぐさ)れ 』も
知りたくなります。こちらは
『 日本のことわざ 続評釈(二) 』の方にでてきます。
こちらも、面白かったので最後に引用してみたくなりました。
うん。全文引用したいけれど、最後の箇所だけにします。

「 『宝の持腐れ』という事象が起きるのは、宝を持っている者が、
  それが宝であることを知らない場合もあり、
  宝を用いる能力を持たない場合もあり、
  宝を用いる機会を得ない場合もあり、
  宝を用いようとする意欲のない場合もあり、
  宝は用いなければ宝ではないことを知らない場合もあろう。
  これらの場合、これをわらって、この諺が用いられるのである。 」
                      ( p171 「続評釈」 )


この最初の本の方にある『 はしがき 』にある言葉も忘れがたい。
はい。そこも引用しておきます。

「 諺は、批評の文芸であり、そうして、
  日本文芸の起源から今日に至るまで、
  一つのジャンルとして、日本文芸の中に、
  かなり重要な位置を占めているものと思っている。
  本書においても、主としてそういう見地から扱ったつもりである。 」

なるほど、重要な位置の在りかを『 評釈 』として
丁寧に、ツボを押さえるようにして説明されています。
それで、読み甲斐の、手ごたえが感じられるのですね。

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1 コメント

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ことわざ (きさら)
2025-01-18 20:22:28
ことわざは 楽しいですね。

私は 失せ物探しの時
いつも 神様に祈っています。
何の神様か?
一応 上の方にいらっしゃると想定しているので
キリスト教っぽいかもしれません。

不思議なことに たいていの失せ物は
しばらくすると 見つかります。
何年かして見つかることもあり。

「宝の持腐れ」は 「豚に真珠」と同じような意味かな~ 「目からうろこ」は 聖書に登場するって
最近まで知りませんでした。
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