和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

『日々訥々』歌集の京都。

2023-04-03 | 詩歌
古本だと、思いもかけない本と出会えます。

清水千鶴著「日々訥々(ひびとつとつ)」風媒社・2014年。
帯には「90歳の第一歌集」と小さくありました。

清水千鶴(しみず ちづる)
 大正13年1月18日京都市生まれ。
 旧制女学校時代、石川啄木の歌に触れ短歌を詠みはじめ、今日に至る。
 一切の同人、社中に与せず、無所属を貫く。京都市在住。

本の最後の著者紹介には、簡単にこうありました。気になり
「揺れて歩く ある夫婦の166日」エディション・エフ・2020年。
という本を、これも古本で買ってみる。
こちらは、写真集と文とが入り混じった一冊。
息子さんが、両親を撮った写真と文との一冊。
こちらからも引用。

「 母、清水千鶴は歌人だ。・・・ただ一人で歌を詠み続けてきた。

 ・・・89歳の誕生日を目前にした2012年の秋、
  母は突然歌集をつくりたいと言い出した。・・・

  母の思いを確かめた。母はこう言った。
 『 14歳から詠みはじめて来年で75年になるのえ。
   そろそろ人様の目に触れても恥ずかしくない
   歌もいくらか残せてますやろ。これはと思う
   歌を選んでお父ちゃんにも見せたげたいし  』

  ・・・その痕跡が残されていた。
  一日に少なくとも数十の歌を詠み大学ノートに記していく。
  その日の終わりにその日いちばんの歌を一首選び別のノート
  に写し取る。そうやって一日一首を75年つくり続けてきたのだ。

  『 そら難しかったわねえ。駄作の山からマシなんをひとつ
    選ぶのは。けど、よう続けてこられました。  』

   母は大学ノートの山を前に笑った。・・・・

  『 日々訥々とうめき続けた結果やねえ 』

   とまた笑った。
   それで母の第一歌集の標題は『日々訥々』に決まった。

   ・・・それらの歌の多くは身近な日常を詠んだものだった。
   どれも捨て難かったが、丸一年をかけて366首にまで絞り込んだ。

   ・・・2014年3月28日に上梓された。満90歳・・・・      」

                        ( p17~19 )


うん。私には選びようもないのですが、京都在住ということなので、
京都に関係するような歌なら、こりゃ選びやすそうです。
ということで、それを紹介することに。

   花売りのリヤカーに溢るる菊の花町の地蔵に赤きを選ぶ   p199

   路地を出づれば大の火の文字見えしまちマンション立ちて空の狭まる
                               p246

   父母の御霊を送る五山の火招くがごとく闇に吸わるる    p249

   機を織り日々を糊せし一角のさびれて京の良きまちくずるる p270

   六条河原しぐるる昼を托鉢の僧の呼び声尾を引きてくる   p312

   大原へ一里を示す標石を芯に燃えをり野の彼岸花      p330



はい。これくらいにします。
   



コメント (4)
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