昭和30年の写真です。子供が行水(ぎょうずい)をしてる。
林望さんは、それを説明しながら、こう書いています。
「むろんそのころは冷房なんてものはどこにもなくて、
夏になればひたすら暑さに耐えながら、せいぜい井戸水で
冷やした西瓜を食べ・・・・
そういうなかで、行水というのは、夏のなによりの楽しみだった。
当時、私の家は、できたばかりの新式鉄筋アパートの一室にあって、
その頃としてはめずらしくちゃんと内風呂がついていた。
しかし、夏の真っ盛りの午後には、ベランダに、
(アパートで庭がなかったので)金だらいの大きなのを出して、
そこで一つ違いの兄といっしょによく行水をしたものだった。
そういうとき、母は、この写真のお母さんのごとく、
濡れてもいいような軽い服装をして、私どもの世話を焼いた。
そうしながら、母自身も涼を取っていたのである。」
(p72・林望著「ついこの間あった昔」弘文堂)
「いじわるばあさん」の連載は昭和40年~昭和46年でした。
四コマ漫画には、内風呂も、銭湯も、行水もでてきます。
ここでは、行水。
長谷川町子さんなら、どう描いていたか。
①塀をめぐらした庭で、ばあさんがバケツの水を盥に入れてます。
ばあさん『ことし さいごの ギョウズイだ』
②低い植木に着物をかぶせ、背中向きのばあさんは、
盥に坐って、手拭いで背中をゴシゴシとしてます。
その背中には、お灸のあとが点々と背骨とならんであり、
鼻歌らしく、ばあさんの上に音符が気ままに並んでます。
③いきなり、堀の外で、行水しているばあさん。
見物人がニコニコと男・女・子供共6~7人。
後ろをむきざま、驚いている、ばあさんの顔。
④長谷川町子さんが、右手にペンを持ち、両手をあげて逃げてます。
ばあさんが盥から出てバケツで、町子さんに水をぶっかけている。
ばあさん『チクショウ いじわる作者! バックをかきかえたな!!』
ばあさんの姿は、素足に、腰に布を巻いて、垂乳根の上半身は裸。
盥のわきには、下駄が描かれておりました。
( p16「いじわるばあさん」二巻目 )
色っぽい行水もあります。
こちらは四コマの最後から引用をはじめます。
④板塀に囲まれた庭で、奥さんが行水をしてます。
板塀の下の破れ目から、犬が顔をだしている。
奥さんは、豊かな胸をして、両手を上下にひろげ
手拭いで背中をゴシゴシ。髪がたれないように
後ろから布をあてて、額でしばっています。
はい。色っぽくするためか口のわきにはホクロ。
③若い人が、犬の顔の縫いぐるみをもって、
いじわるばあさんに、500円を渡してる。
②ばあさんが、正座させた若者に犬の顔のぬいぐるみを
つま先立ちして、かぶせている。サイズあわせ。
ばあさんの足のそばには、裁縫箱とハサミ。
①ばあさんが、犬の縫いぐるみに糸をとおす裁縫の場面。
( p95「いじわるばあさん」第一巻目 )
はい。新潟県佐渡には、木の大きな盥を小舟に見立てた
観光舟があるそうですが、その木の盥を小さくしたような
家庭版で、よく洗濯につかわれていたものを行水のために
使用していたのでしょうか。現在、気にすると見かけるのは、
浮袋式ビニールプール。これは、子供の夏の定番でしょうか。
話をかえます。
こうして昭和の四コマ漫画を思い浮かべていると、
どういうわけか、気まぐれに、浮かんできたのは、
柳田国男著「木綿以前の事」でした。一度読んで、
印象だけで他はすっかり忘れてる。本棚から出す。
その自序は、こうはじまります。
「女と俳諧、この二つは何の関係もないもののように、
今までは考えられておりました。
しかし古くから日本に伝わっている文学の中で、
これほど自由にまたさまざまの女性を、
観察し描写しかつ同情したものは他にありません。
女を問題とせぬ物語というものは昔も今も、
捜して見出すほどしかないと言われておりますが、
それは皆一流の佳人と才子、または少なくとも
選抜せられたある男女の仲らいを叙べたものでありました。
これに反して俳諧は、何でもない只の人、
極度に平凡に生きている家刀自(いえとじ)、
もっと進んでは乞食盗人の妻までを、
俳諧であるがゆえに考えてみようとしているのであります。
・・・・」
ちょっと『木綿以前の事』は、これはこれで気になりますが、
それは後回しに、もうすこし『いじわるばあさん』続けます。
コメントありがとうございます。
どうも、興味には賞味期限があって、
サルが、枝から枝へ移動するように、
興味もすぐに移ります。一度移ると、
元の枝へ、これがなかなか戻れない。
はい。これがどうやら私の習性(笑)。
今回は読みやすく楽しめる6巻本を
わき道へそれないようそれないよう、
注意をしながら、引用しております。
もうちょっと、『いじわるばあさん』
におつきあい下さい。のりピーさん。
あと少しで、飽きて放り投げる。
私の興味の賞味期限は、単純で、
ウルトラセブンのピコピコなみ。
はい。余談だらけの私のブログですが
『いじわるばあさん』の賞味期限まで
もうちょい、おつきあいしてください。
たらいで 水浴びしました~(#^^#)
あの当時は プラスチック製のなんてなかったから
金盥だったのでしょうね~
コメントありがとうございます。
金盥といえば、浮かぶのは、
すぐに、ドリフターズです。
金盥は、落ちるものでした。
そんな、場面が浮かびます。
とんと、見かけないですね。
はい。『いじわるばあさん』
今日も、つづきます。