長谷川洋子著「サザエさんの東京物語」(朝日出版社)の
はじめの方に、それはありました。ここは引用しておきます。
洋子さんが、町子さんから聞いた話がでてきます。
「『サザエさん』という庶民の家庭漫画を描き続けながら、
『家庭漫画って清く、正しく、つつましく、を要求されるでしょう。
だけど、それって私の本性じゃないのよね。
だから≪ いじわるばあさん ≫のほうが気楽に描けるのよ。
私の地のままでいいんだもの』
とよく言っていた。・・・」(p13)
あらためて、長谷川家の年表を見てみます
1965(昭和40)年 『サザエさん』TVドラマ化( 江利チエミ主演 )
1966(昭和42)年 『意地悪ばあさん』(「サンデー毎日」連載)
≪ 連載期間は 昭和42~昭和46年 ≫
1967(昭和42)年 『意地悪ばあさん』TVドラマ化( 青島幸男主演 )
町子、入院、胃がんの手術
1969(昭和44)年 『サザエさん』TVアニメ化 ( フジテレビ )
1970(昭和45)年 ノイローゼの学生による長谷川家放火未遂事件
1974(昭和49)年 『サザエさん』朝日新聞連載終了
1978(昭和53)年 『サザエさんうちあけ話』朝日新聞連載
1979(昭和54)年 NHK朝の連続ドラマ「マー姉ちゃん」放映
はい。だいぶTVと漫画連載とがダブっている時代。それならば、
CMからの『本歌取り』ということにして、意地悪婆さんの視点。
まずは、とりあげるCMを紹介。
『飲んでますか』(昭和39年・三船敏郎。武田薬品アリナミンのCM)
『私にも写せます』(昭和40年・扇千景。8ミリフィルムカメラのCM)
『オー、モーレツ』(昭和44年・小川ローザ。丸善石油のちコスモ石油のCM)
これらCMの時代と、いじわるばあさん。
①一合徳利を右手で突き出しながら
ばあさん『のんでますかァ』と笑顔で
②玄関先で、帰ってきて靴をはいたままの長男が
その姿を黙って見ている。
③背広を浴衣に着がえている長男。
④ちゃぶ台の料理を前にして、あぐらをかき
徳利をかたむける長男
長男『しかし、まけるオレも わるいにゃ わるい・・・』
背後の壁には、『禁酒』の張り紙。
( 「いじわるばあさん」二巻目p7 )
つぎは、パチリと写している四コマ。
①自転車にまたがった若者が、ばあさんに
火事だと知らせている。
②カメラをもって、門をでるばあさん。
③消防署員がホースを二人して伸ばす作業中。
煙の先をみて、ばあさんのセリフ
『こりゃ いける!』
『クスリ屋の主人、ウラのごいんきょ!』
④ストリップ劇場から煙が出ている。入口の両脇には、
胸をはだけた裸での大きな立て看板。「関西ストリップ」
の文字。下をむいて、頭をかきながら出てくる人。
野次馬が見ている中、ばあさんはカメラで撮影中。
( 「いじわるばあさん」第四巻 p71 )
うん。これは、残念ながら8ミリじゃなかった。
さて、おつぎは、『白いパンティがチラリ』の
昭和44年「丸善ガソリン100ダッシュ」のCM。
パンティが出てくる四コマ漫画は、いろいろ選べます。
うん。どれにしようかと迷います(笑)。これにします。
海外旅行の巻・ニューヨーク。
①エンパイヤステートビルの絵。
エレベータの途中で『さア 屋上だ』
②エレベータが開いています。
ばあさん『スミマセン しばらく持っていただけます?』
おばさん『いいですとも おばあちゃん!』
二人とも着物をきています。
③ドアを押して開いている ばあさん。
みんなして、屋外へ出るところです。
④屋外には柵がはりめぐされ、有料の望遠鏡のようなものもある。
ばあさん『この上は、風が強いって聞いたもんで』と
着物の前を押さえている。
おばさんは、両手に荷物をもっていて、顔が真っ赤(白黒ですが)。
着物の帯から下が、強風でみごとにめくれあがっている。
( 「いじわるばあさん」第三巻 p15 )
うん。お口直しで、もうひとつ。
①おばさん『スターが来て ロケやってるんですって!』
ばあさんもいっしょに、買い物かごを持ちかけ出してる。
②見物客が大勢いる方へ、ばあさんが、かけている。
③『どうだった?』とタバコ屋から、おばさんが出てくる。
ばあさん、プンプンしながらの帰りぎわ、
『なんだ、あんなの!あたしのほうが、よっぽどキリョウがいいよ』
④タバコ屋のおばさんが、群集をかきわけて撮影をのぞく。
青島幸男扮する主人公が、若い男の襟首を持ち上げてる。
おばさん「テレビの『いじわるばあさん』!」
見物人はみなして、ニコニコ顔。
はい。テレビと四コマ漫画の、豪華共演。
昭和の現在進行形での笑いが聞こえます。
コメントありがとうございます。
この、のりピーさんのコメントで
さっそく、思い浮かんだ四コマが、
①長男の嫁がお茶を入れながら、
『おかあさんごせいがでますね』
②『なにができますの』
ばあさんは、針仕事に余念がない。
③庭で洗濯を干している。
④物干し竿には、大漁旗ほどの
パンティがひろげてある。
通りがかりの男性二人が声をそろえて
『ウハ~、すげえ おくさん』
(p7「いじわるばあさん」第一巻)
うん。そういえばと本棚から取り出したのは
花森安治著「一銭五厘の旗」(暮しの手帖社)。
この初版発行は昭和46年10月10日とあります。
そのあとがきには
「ここにあつめた文章は・・・いちばん古いのは、
昭和33年の5月・・新しいの45年10月・・である」
はい。いじわるばあさんが旗幟鮮明にした
四コマじゃないかと、連想はひろがります。
ボーッとしてれば、いろいろと思います。
私には、これが『いじわるばあさん』の
『パンティの旗』に見えてきました(笑)。