和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

テニヲハ。筆圧。そんきょ。

2021-06-08 | 枝葉末節
尻切れとんぼになってしまいかねないけれど、
枝葉末節に話がひろがるのは、楽しみですね。

goo ブログを拝見させてもらっていると、
花や風景や、食事や調理やと様々楽しめ、
それだけで満腹感があります(笑)。

さてっと今読みかえしているのは
鷲尾賢也著「編集とはどのような仕事なのか」(2004年)
なのですが、エピソードを読むのはたのしい。

どれもが、編集者と著者とのやりとりになります。
ここでは、3つのエピソード。

「大河内一男さんの原稿で・・・
ワープロ、パソコンのない時代である。
入稿練習ということで、200字詰めのくしゃくしゃの束を、
先輩のAさんから渡された。・・・
社会政策の大権威、かつ元東大総長である大河内一男さんの
原稿はどこかテニヲハがあやしい。はじめはおそるおそる、
直してもいいですかといっていたが、あとは脱兎のごとく
リライトしてしまった。大家でも、文章のうまくない先生は
いるということをはじめて知った。」(p208~209)

ここでは、元東大総長の肩書をもってきておりますが、
なあに、一般の方々の文章は、どれもテニヲハがあやしいのだと
言っているように読めます(笑)。
はい。ほかならぬ私自身、自分のブログを読み直すと、
間違いだらけのテニヲハをまず直すことから始めます。

2つ目のエピソードは、向井敏さん

「本といえば谷沢永一さんの書庫もすごかった。・・
結局、谷沢さんとは一冊も仕事をしなかった。
その代わりというのもおかしなはなしだが、
谷沢さんと学生時代からの友人である向井敏さんとは
長く仕事をさせていただいた。・・・・
おそらく谷沢さんのご紹介だったと思う。・・・
すぐさまPR雑誌『本』の連載エッセイをお願いした。・・

ただ困ったのは、声がとても小さかったことだ。
電話には苦労した。また筆圧がよわいため、
鉛筆での原稿がFAXでは読みとれないということがままあった。
原稿はあまり早くなかった。というより遅かった・・・」(p219)

うん。遅筆の方は短命なのかもしれません。

3つ目のエピソードは安岡章太郎。

「・・・その後、安岡さんは『群像』で『果てもない道中記』を
連載した。その取材にも同行したのだが、いつもメモなど一切とらない。
カンヅメになっていただくこともあった。・・・・

調子にのると、安岡さんはおかしな格好になる。
相撲の蹲踞(そんきょ)のように腰を浮かせて書くのである。
そうなったらしめたもので脱稿も間近い。・・・」(p229)


はい。けっきょく、エピソードの力はすごいと思います。
この鷲尾さんの本を、すっかり忘れてしまったとしても、
安岡さんの相撲の蹲踞の姿だけは、思い浮かびそうです。
はい。夢にも出てきそうな気がしてくるのでした(笑)。


最後に料理の話。
わたしは自分で調理しなくって、もっぱら食べる方。
そういうのが、ブログで人の調理を見ている。
なんだかなあ、と思うこともありますが、
それでも美味しそうな料理を見ると満足しています。
それでもって、文章作法と調理方法とがダブる記述があると
なんとかく、気になるのでした。
今回は、こんな箇所。

「だいたい原稿のことを、編集者は『生(なま)原稿』という。
生なのである。生のまま刺身で食卓に上げるのがよいのか、
それとも酢で締めたほうがいいのか、あるいは焼いたり、
煮たりしたほうがいいか、読むというのは、
その判断を総合的に下すことなのである。」(p114)

うん。そういえば長田弘の詩集に『食卓一期一会』がありました。
また、いつか引用できますように。ということで、今回は
枝葉末節でも、光るエピソードを引用してみました。






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2 コメント

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Unknown (kaminaribiko2)
2021-06-08 16:49:33
谷沢永一のお住まいは我が家の近く、安岡章太郎は私の郷里高知県出身者ということで、今日も興味深く読ませていただきました。美味しいとこ取りをさせていただいているようですね。

もちろん歌人小高賢の編集者としてのエピソードも…。
返信する
読みごたえ。 (和田浦海岸)
2021-06-08 17:51:34
こんにちは。カミナリビコ2さん。

鷲尾さんのこの本は、
まるで小見出しだけできれいに
仕上げたような本になっているので、
ページを読み比べてると、なんだか、
どんどん底が深くなるゆく感じです。

もうすこし関連づけて楽しまないと、
終われないそんな気がしてきました。
返信する

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