和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

つるかめ、つるかめ

2024-12-02 | 詩歌
庄野潤三の短編に「丘の明り」がありました。
家庭の子供たちとの話がとりあげられているのですが、
『 こうちょく 』の話しから、死後硬直へと入った際に、
『 縁起でもないことを口にした時は 』という箇所がありました。

ちょいと、すぐに忘れるので引用しておきます。

 『 ああ、そう 』
 とんでもないことをいひ出したものだ。
 そこで私たちは急いで『 つるかめ、つるかめ 』といった。
 縁起でもないことを口にした時は、
 すぐにかういつておかないといけない。
   『 つるかめ、つるかめ 』
   『 つるかめ、つるかめ 』
 それで、私の質問は途中で立ち消えになつてしまった。

この短編は、最後になっても気になる箇所がありました。
どうしてだか、『 わらべうた 』が出てくるのです。
はい。こちらも引用しておくことに。


  これで三人の話はおしまひである。・・・・・

  ところで昨夜、お風呂にひとりで40分も入つてゐた下の男の子が、
  やつと出て来て、湯上りのタオルを身體に巻きつけたまま、
  急に間延びのした聲で、

 『 向うお山で ひかるもーのは 』

  とうたひ出した。  
  さういひながら、廊下をこいらへ歩いて来る。

 『 つきか ほーしか ほーたるかー 』

  おや、妙なうたをうたひ出したな、と私は思つた。
 『 何だ、それ 』
 『 学校でならつたの 』
  そういつて、下の男の子は、

 『 つきならばー おがみまうすが
   ほたるなんぞぢや あーかんべー 』

  と、しまひまでうたつた。
 『 唱歌か 』
 『 うん。わらべうた 』
  下の男の子は、部屋から音楽の教科書を取つて来て、台所で私に見せた。
 『 向うお山で 』といふ題で、
  譜の上のところに関東地方のわらべうたと書いてある。

 『 もう一回、うたつてみてくれ 』
  私がそういふと、下の男の子は、
  身體にタオルを巻きつけたままの恰好で、うたつった。・・・・



『日本わらべ歌全集』から数県の目次をみてみましたが、
『向う・・・』というわらべ歌はあるにはあるのですが、
 どうやら、これは庄野潤三氏の創作わらべ歌のようです。


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