映画とライフデザイン

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映画「さよなら渓谷」 真木よう子&大西信満

2013-06-27 05:00:06 | 映画(自分好みベスト100)
映画「さよなら渓谷」を劇場で見た。
モスクワ映画祭コンペにも出品されるという。

胸にしみるいい映画であった。
吉田修一の原作は未読、先入観のない状態で見た。ミステリーの要素もあるが、それ自体読みやすい。でも謎解き自体を楽しむのではなく、映画に漂う無情の響きを堪能する映画だと思う。 

尾崎俊介(大西信満)と妻のかなこ(真木よう子)が扇風機がまわりつづける部屋で抱き合うシーンからスタートする。2人は都会から離れた緑豊かな渓谷の古びた団地で暮らしていた。隣の部屋の女性が逮捕された。子供を殺した容疑者であった。団地のまわりには報道関係の人たちが取り巻いていた。
その直後、俊介が警察に事情徴収を求められる。隣の女性が俊介と関係があったと自白したのだ。俊介は何も関係がないと言い釈放された。

事件の取材を続けていた週刊誌記者の渡辺(大森南朋)は、隣家に住む俊介が事情徴収を受けたことを知り、俊介の身辺を調べ始める。

俊介は昔大学野球のスター選手であった。しかし、卒業半年前に大学を中退している。何かおかしい。以前勤務していた証券会社にいる彼の先輩に事情を聴く。なんと15年前に起きた集団レイプ事件の加害者の一人だったのだ。記者仲間(鈴木杏)は被害者の女性が事件後どうなったかの足跡を追っていた。結婚が破談になったあと、一人の男性と結婚するが、男はDVであり、家庭内暴力の被害を受ける。そして半年前から失踪しているらしい。いい人生を送っていないようだ。

幼児殺害事件は一つの通報により新たな展開を見せる。隣の女性と俊介が以前から不倫関係にあったという。この通報をしたのは、妻のかなこであった。事情徴収を受けた俊介はついに隣の女性と関係があったと自白するのであるが。。。

扇風機がまわりつづける団地の一室で2人は激しい愛欲に狂っている。こんなに抱き合う2人というのは、関係をもちはじめて間もないのかとふと考える。「ナインハーフ」ではないが、付き合い始めほど愛欲に狂う。ずっと付き合う2人がここまで狂うことはない。その後俊介が事情徴収を受けるが、どう考えても隣の家の女性とは関係ないだろうと思わせる。事情徴収から帰宅した後も激しい愛欲が続く。

それなのに妻がたれ込むというのだ。
「この逆転って何??」不思議な衝撃を受ける。

そののち、一つの予想が成り立つ。たぶんそうだろう。
その通りになる。謎解きはやさしい。
でもどうしてこんな風になるの?そういう予想を確かめるように映像が続く。

セリフは少ない。沈黙が続く長まわしが多い。
でも凡長ではない。
セリフがなくても、2人のしぐさで伝えてくれることがたくさんある。
これこそ映画の醍醐味ではないか。

真木よう子は好演ですばらしいが、自分は大西信満をほめたい。
無言のまま漂う雰囲気がいい感じだ。
赤目四十八滝心中未遂」で主人公を演じた時と似たような役柄である。ともに世捨て人である。あの時もセリフが少ない中で、ナイーブな主人公の気質をうまく演じた。あの作品も素晴らしいが、これも絶品だ。

最後、大西信満の表情を見ながら、終わり方は、こうなるんじゃないかと想像した。
その通りになった。
高峰秀子乱れる」を思い出した。

さよなら渓谷
無情の響きを堪能する


赤目四十八瀧心中未遂
尼崎の場末アパートにいる大西の世捨人ぶりがいい


乱れる
終わり方が同じように鮮烈

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