山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

クモキリソウ属の花たち 御坂山系  平成27年6月23日

2015年06月28日 | 御坂・毛無・天子山系
 初めて北海道遠征の時にクモキリソウを見たは凄いものを見つけたと思ったのだが、その後山梨の山でもあちらこちらに分布していて意外と容易に見られる花であることがわかってきた。一方、今回訪れるジ・ガ蜂・草は現在3ヶ所の自生する山を把握してはいるが決して数は多く無い。そして心配しているのは年々数が減っているように見えることだ。昨年観察に行った時はもしや盗掘なのでは?と思ったのだがそれにしてはおかしい。もっと見つけ易い場所があるのにそちらの株は無傷で盗掘された様子は無く、探しにくい場所で数を減らしている。掘られたような穴も無い。これは鹿の食害なのではないだろうか?


    森の中にひっそりと咲いていたジ・ガ・蜂・ソウ。


    別株


    別株


    こんな小さな株にも花をつけている。この一角はこの花にとって快適な場所なのだろう。


    まさに蜂が飛ぶ花。


    登山道脇で踏まれて痛んでしまった株もある。


    まだ蕾のオオヤマサギソウ


    オオヤマサギソウの葉はほとんどが虫に喰われている。


    蕾のイチヤクソウ


    ウメガサソウ。今年は一株しか見つからない。

 昨年大株が咲いていた場所を訪れてみるが、残念ながら今年は見当たらない。周辺にも大きなものが何株かあったはずだが、中型の株を1株見つけただけで、さらにその先を探したが小さな株を数株見つけたのみだった。掘られたような痕跡は見つからない。鹿の保護柵設置の必要があるのかも知れない。


    昨年の大株は消失しており、見つけたのはこの株のみ。


    ジンバイソウ


    穂を出したジンバイソウ。昨年は1本だけだったが、今年は5本出ている。花が咲くのが楽しみ。


    林道脇に生えたクモキリソウ


    こんなところで大丈夫なのか?と思ってしまうが、クモキリソウはこのようなセメントの上が好きなようだ。



 やはり年々減少しているように見えるジ・ガ蜂・草、何らかの保護が必要なのかも知れない。山岳連盟自然保護グループに報告することとしたい。
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植生保護と維持への取り組み 三つ峠植物観察会  平成27年6月21日

2015年06月24日 | 御坂・毛無・天子山系
 ラン科植物の多くはラン菌と呼ばれる地中にいる菌との共生によって発芽・成長し花を咲かせることが知られている。ラン科植物の種子は他の植物と違って種子の周辺に発芽するための栄養分を持っておらず、地上に落下した時にラン菌と出会わなければ発芽出来ないため、その確率は極めて低い。アツモリソウにおいては、プロトコームと呼ばれる根の状態で地中で数年ラン菌と共生して成長し、地上に葉を出してから花を咲かせるまでにさらに3年以上かかり、合わせて10年もの歳月をかけて花を咲かせる。ラン菌と出会う確率が低いうえに花を咲かせるにも大変な苦労をしている花なのである。





    アツモリソウ

 花が大きくて鮮やかなアツモリソウは徹底的な盗掘に遭い、さらには鹿の大増殖による食害に遭って今では保護地以外ではほとんど観察することが困難になってしまっている。さらに拍車をかけたのが直接の鹿の食害では無く植生の大きな変化である。鹿に植物を食べ尽くされた草原や森は笹やテンニンソウ、ススキ、バイケイソウなど鹿が食べない植物ばかりがはびこる荒れた場所に変ってしまう。このような環境になってしまうと、アツモリソウの増殖や成長、さらに花を咲かせるために必須であるラン菌の活性が大きく低下してしまう事態を引き起こし、花は咲かなくなってしまうのである。現在は保護柵で囲んで食害から逃れる方法がとられてはいるが、いずれの場所も予算不足、人手不足のために対処が遅れて既に手遅れという感が無きにしも非ずである。

 カモメランもアツモリソウと同じような生活史を歩んでいると考えられる。アツモリソウよりも小型で種子が移動し易いカモメランは、ラン菌の活性が強く快適な場所に移動して株を増やすと考えられ、花を咲かせるにはやはり10年ほどの歳月を要する。今年たくさん花を咲かせた場所は10年以上前に種子が定着して花を咲かせるに至った場所なのかも知れない。ラン菌の活性には土壌内にある程度の空気の層があることが必須である。たとえ株を踏まないで人が歩いたとしても、多くの人が訪れることによって土壌が圧縮されることによって空気の層が減ってしまうと、結果的にラン菌の活性に悪影響を及ぼすこととなり花の数が減ってしまうという事態を引き起こしてしまう可能性がある。せっかく咲いた花なのだから多くの人に見て欲しいという気持ちもあるのだが、それによって悪影響を及ぼしてしまうことがあるわけで、そのような配慮をしつつ決して花の群落に踏み込むこと無く愛情をこめてそっと歩いていただきたいと思う。(としか言いようが無い。)


    カモメラン
    

 三つ峠はこのような鹿の食害や、さらに人の盗掘や踏み荒らしから山を保護するために早くから山に柵を廻らせ、植生の保護と維持に取り組んで成果を上げてきた全国でも数少ない場所である。今回は山梨県山岳連盟主催で行われた三つ峠植物観察会・勉強会および清掃登山に植物指導という立場で参加させていただいた。昨年は20人ほどの人数だったが、最近は植物に関心を持たれている方が増えてきたようで、40数名という大人数が参加された。先日富士北麓の森を一緒に歩いたメンバーはほとんどがこの日も参加しており、一般参加で花見隊メンバーも参加した。


    三つ峠御坂側登山口に集合した参加者たち。


    ??イチゴ。植物指導を仰せつかったのにほとんど花の名前わからず、全く頼りにならず。もっと勉強します。


    あいにくの雨となった三つ峠。植生保護には環境が大切であることを説明される三つ峠山荘ご主人中村さん。


    このあたりは昨年草刈りをしたはずなのだが、1年にしてテンニンソウだらけ。


    テンニンソウや笹の除去を行って植生の維持を行っていることを説明していただいた。

 植生の保護と維持には保護柵で囲むだけでは不十分で、増殖力が強いテンニンソウや笹の除去を行わなければいずれはそれらの植物がはびこる山に変ってしまう。それによってラン菌の生息する環境が大きく変化し、アツモリソウやカモメランをはじめとする多くのラン科植物は花を咲かせるだけの栄養分を得られなくなり、開花できなくなってしまう。そのような状況が続くとやがて花は年老いて絶えてしまうことになる。実際に昨年はラン科植物が咲いていたはずの山を何か所か調査させていただき、葉はあるものの全く花を付けそうもない株を多く見て来た。いずれの山も鹿の食害著しく、山が乾燥化してしまってラン菌が生息する環境が損なわれてしまった場所であった。あれらの花たちをこれから守りつつ、さらに開花に至らせることが出来るのかどうか、今後の大きな課題であり、おそらくは保護柵だけでなく何らかの人の手を加えなければ再生させることは困難なのではないかと考えている。


    テンニンソウや笹を除去して山を保護することでこのような瑞々しい元気な葉が茂る環境が維持できる。


    そのような環境があってこそ、この草も元気に花を咲かせることができる。


 富士箱根伊豆国立公園の敷地内にあって草刈りをする作業などやって良いのかという議論が多くあったと聞くが、中村さんを中心とした人たちの尽力によって現在の三つ峠の環境が保持されている。さらに三つ峠ネットワークの方々、日本高山植物保護協会、山梨県山岳連盟をはじめとする多くのボランティアの方たちもこの活動に協力・参加されており、私自身、これからもこのような活動に多く参加して行ければと思っている。

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芦川からの鬼ヶ岳裏ルートを登る  平成27年5月31日

2015年06月01日 | 御坂・毛無・天子山系
 御坂山系のカモメランは山中湖側に偏った山に咲くものだと思っていたのだが、昨年十二ヶ岳にも咲くことがわかった。ならば、同じような環境にあり、現在廃道扱いになっているこちらのルートにもあるのではないか?とずっと思っていたのだが、なかなか訪れる機会が無かった。もしあるとすればそろそろ咲いている頃だろう。本日攻めるのは芦川キャンプ場の奥、水沢山から鬼ヶ岳の西側のピークに至る尾根だ。かつては登山道になっていたはずなのだが今ではほとんど歩く人がおらず、通行不能になっている。

 午前9時、ほぼ完成している水ノ沢山をぐるりと取り巻く林道の橋を渡り、入り口の沢筋を眺めてみると、倒木が多くて突破するには苦労しそうだ。そこで林道工事のために付けられたと思われる右手の尾根に登る踏み跡があったので、これを使って尾根に取り付き、そのまま登ると水ノ沢山山頂に登り付いた。


    数年前に訪れた時はまだ道は出来ておらず橋しか無かったが、ずいぶんと様相が変わった。


    ここが取り付き口のはずだが倒木が多く荒れている。右手の斜面に林道工事のための踏み跡があり、これを登る。


    藪尾根を進むと水ノ沢山山頂に着いた。看板も三角点も何も無い小ピーク。


    ここから先の尾根には道があった。沢筋から登って来るルートも分かれていた。


    大きなダケカンバの木がお出迎え。


    植林帯の脇の急登を登る。道はあるのだが倒木が多い。


    斜面に咲いていたササバギンラン。この界隈には結構な数があった。


    ササバギンラン。


    さらに急登。ここを登り切ると傾斜が緩くなる。

 標高1,500mあたりのところまで登ると森の様子が変わり、ツガの森が広がるようになる。おそらくカモメランがあるとすれば森の雰囲気からしても、標高からしてもこのあたりだろう。しかし、テンニンソウが生い茂っていてこのあたりはかなりの食害に遭っていることが伺える。右の林左の藪と探しながら歩くが、残念ながらお目当てのカモメランは見当たらない。


    標高1,500m付近のツガの林。境界見出標と木に番号が付けられている。


    テンニンソウが生い茂る。鹿の食害に遭った山は鹿が食べないテンニンソウが生い茂る。


    ユキザサ


    花は散ってしまっているがこれはヤマシャクヤク。


    森の中に草地があった。その周辺には花が多かった。


    ミツバツチグリ(だと思う。)


    ツルシロカネソウがたくさん咲いていた。


    ツルシロカネソウ


    コチャルメルソウの実。


    シコクスミレの葉。その他にナガバノスミレサイシンと思われる葉が多数あった。


    ルイヨウボタンがちらほらと咲いていた。レンゲショウマと思われる葉も多数あった。


    ルイヨウボタン


    この斜面ならありそうなものだが・・・残念ながら探し物はこの尾根には無さそうだ。


    鬼ヶ岳から鍵掛に至る正規ルートに抜ける。あったのはこの看板「通行不能」。下りは迷うかもしれないが登りで使うのは全く問題無し。


    鬼ヶ岳に到着。


    登って来た尾根を振り返る。

 鬼ヶ岳山頂に到着したのは午後1時過ぎ、標高差800mほどを登るのに4時間以上もかかったことになる。まあ、毎度のことだが・・・。山頂のミツバツツジはもう散り始めていたが、ドウダンツツジは満開だった。ここで昼食をとり大休憩する。


    ミツバツツジはもう散り始めていた。向こうに見えるのは雪頭ヶ岳。富士山は雲隠れ。


    ドウダンツツジは満開。


    ??ウツギ?

 できれば十二ヶ岳のほうにも足を延ばしてみたかったのだが、本日降りるのは道があるかどうかもわからないバリアンスルート。念のためザイルを持ってきたので谷筋までは下降できるであろうが、沢の中がおそらく大荒れの状態になっていることが予想され、時間がかかると思われる。まだ時間は2時前だが、本日は寄り道せずに下りることにする。


    金山に至るルートの途中の少コブから派生する尾根を下りる。以前に途中まで下りており、ルートらしきものがあるのは確認している。


    ツガの林の広い尾根。ひたすら尾根を外さないように下りるが、毎度のことだが途中で道らしきものは消失。


    ひたすら尾根を真直ぐに下りて行くと、山腹をトラバースするような古い道(?)に出くわした。これを進むと右側に派生する尾根に乗り換えて下りることができた。が・・・。


    炭焼き釜の跡地のところで道が消失。


    かなりの急下りだが下に沢が見える。木の幹や根っこにつかまりながら沢まで下降する。


    沢にはテープが付いていたものの、道らしきものは無い。


    倒木だらけ。予想していた通りだった。倒木の上を超えたり下をくぐったり、何度も渡渉を繰り返しながら沢を下りる。


    休憩しながら小滝が流れ落ちる沢の景色を楽しむ。足がかなり疲れて来た。


    幸いにして右岸に道らしきものがあり、それを下りる。


    ヒメレンゲ


    沢沿いに咲いていたツルシロカネソウ。


    それもつかの間、またしても倒木に行く手を遮られる。渡渉でスリップして左足は膝まで水の中にドボン!


    こんな看板があるがまともなルートでは無い。


    林道に無事到着。午後4時。

 沢の下りは苦労することを予想はしていたものの、予想したよりも大変だった。しかし時間は2時間少々で抜け出たので、まずまずといったところだろう。

 残念ながら今回のカモメラン探しは失敗に終わったが、かつて節刀ヶ岳の尾根にたくさんあったツルシロカネソウ群落は減少の一途をたどっており、同じような環境の森がこちらにも残っていることがわかった。これからも生き続けて欲しいと思う。探索は失敗に終わったものの、このような探索をしなければ新しい出会いにはなかなか巡り合えないだろうと考えており、空振り覚悟で今後も冒険を含めた探索を行って行きたいと考えている。




    今回探索したルート。 沿面距離6.4㎞、累積標高差810m。 登りも下りもバリアンスルート。

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咲き乱れるイワカガミ 毛無山塊  平成27年5月10日

2015年05月10日 | 御坂・毛無・天子山系
 毛無山塊のイワカガミは今年10年に1度の大当たりで、山上は紅白入り乱れた百花繚乱の景色が広がっていると聞いた。しかし、その場所は道の無いバリアンスルート、ただでさえ登るのが大変な毛無山塊にあって、道無き急斜面を登らないとたどり着けない。幸いにしてこの日はミスター毛無山さん、ことK田さんがガイドして案内してくださるとのことで、スピードの遅い私は足を引っ張るのを覚悟の上で参加させていただいた。メンバーはK田さん、うーさん、私の3人。


    本日登るは道無き急斜面。先をリードするK田さんに全く着いて行けない。


    登ること1時間半ほど、標高差400mほど登ったところで稜線に出る。なんとなく道がある。


    イワカガミが現れ始めたと思ったら、その先はイワカガミだらけ。


    白いイワカガミ。葉に明瞭なギザギザがありこれはヤマイワカガミ。


    ヤマイワカガミ


    どっさり。


    薄ピンク色の花。


    こちらも葉の切れ込みが明瞭でベニバナヤマイワカガミと思われる。


    ピンクもどっさり。赤白入り乱れて咲き、百花繚乱の稜線。


    白花接写


    こちらは色の濃いイワカガミ。葉の切れ込みがやや浅く、ベニバナヒメイワカガミかコイワカガミと言ったほうが良いのかもしれないが、同じ場所に咲いているのでベニバナヤマイワカガミということにしておく。


    こっちもどっさり。


    ベニバナヤマイワカガミ。


    とにかく凄い!

 ご案内いただいたK田さんとはここまででお別れし、うーさんと私はこのヤマイワカガミ咲き乱れる山上の楽園を存分に楽しみながら、上に向かって進んだ。K田さんは長い稜線を末端まで下りてみるとのことで登って来た尾根を戻って行かれた。ここから先も急登と急下り、岩の細尾根が続くバリアンスルートの稜線だが、イワカガミの他にも様々な花に出会うことができた。


    岩の細尾根を登る。


    稜線のトウゴクミツバツツジ。向こうに見えるのが毛無山。


    こんなのも咲いていた。


    コイワザクラ。


    見つけました。先日の愛鷹山で出会えなかったトウカイスミレ。


    小さくてひ弱そうなスミレ。


    トウカイスミレ。


    途中の小ピークには古い祠が立っていた。


    稜線の通常ルートに抜け出る。

 稜線の通常ルートに抜け出たのは12時半、花が凄過ぎて、標高差300mほどの稜線を抜け出すのに2時間半も費やして楽しんだことになる。通常ルート上の小ピークで食事休憩した後は、通常ルートを下山した。しかし、このルートにも様々な花が咲いており、全く足が進まない。


    うーさんが白いスミレを発見。


    純白に鮮やかなストライプ、巻いていない葉。


    これはシコクスミレ。


    登山道の両脇に現れた白い花。


    ツルシロカネソウ。


    どっさりのツルシロカネソウ


    ツルシロカネソウ群落。


    フタバアオイの群落もあった。


    ここのフタバアオイの花は色白。

 花を堪能しながら存分に写真を撮りながら下山し、駐車場には午後4時に到着した。まだ3台ほど車が止まっていた。

 バリアンスルートだけにきつい登りではあるが、苦労に見合うだけの赤白ピンクのイワカガミ咲き乱れる凄い花景色を楽しむことができた。今回お誘いいただき、ガイドをしてくださったK田さんに感謝である。


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笠雲とレンズ雲の富士山 新道峠から中藤山  平成26年11月2日

2014年11月21日 | 御坂・毛無・天子山系
 11月1日は長野県岡谷市の岡谷市文化会館カノラホールで1966カルテットを迎えてのカノラウィークエンドコンサートが開催された。コンサートだけに行くのはもったいないので、岡谷市界隈で簡単に登れそうな山に登ってからという計画で、まだ登ったことが無い守屋山山頂で昼食をとって下山、どこかの温泉でひと風呂浴びてからコンサートに出かける予定を立てた。しかし、この日の天候はあいにくの曇り時々雨。前日に山は中止してコンサートのみ行くことになった。メンバーはうーさん、高山君、大久保さんと私の4名。諏訪湖のほとりのソバ屋で夕食をとってから、開場30分前にカノラホールの駐車場に行くと、既に満車で車が止められない。隣にある市役所の立体駐車場に案内されてそこに止めるが、こちらも最上階しか空いていなかった。1966カルテットのコンサートの他にもうひとつイベントが行われていたらしく、そのための大混雑となったようだ。ニューアルバム『Abbey Road Sonata』の曲を中心に約20曲披露してくれたが、今度のアルバムは今まで以上に音楽性と芸術性の高い、ロックながらクラシック曲に近い仕上がりとなっており、あっという間の2時間だった。


    6月に銀座王子ホールで行われたコンサートの時にいただいたポスターにようやくサインが入った。


 長野からの帰り道、中央道で山梨県に入ったあたりで薄雲を透かして月が見え始めた。明日は天候が回復しそうだ。この空の様子だと、うまくすれば朝は雲海の上に浮かぶ富士山が見られるかもしれない。しかし、早朝起きられるかどうか・・・。


 朝7時に起床して三つ峠ライブカメラをチェックすると、予想した通り河口湖を雲が覆い、その上に富士山が立っていた。これから出発してもおそらくはもう雲海は消えてしまっているだろうが・・・どうするか考えている間に時間はどんどん過ぎて行く。準備して出かけることにして、一番手っ取り早い新道峠に行ってみることにする。


    雲に覆われた甲府盆地と釈迦ヶ岳。


    新道峠第2展望台から見る富士山。

 10時新道峠に到着。河口湖を覆っていた雲はもう消えてしまい、富士山山頂には不完全な笠雲がかかっていた。シンボルツリーのある第1展望台に行ってみてビックリ!お気に入りだったシンボルツリーが切られているではないか!!誰がこんな酷いことをするのか、展望を得るために切ってしまったのか?とこの時は憤りを感じたが、木を良く見てみると枝のところが折れ曲がっている。どうやら台風の影響で木が折れてしまったようだ。この木に霧氷が付いたところを富士山をバックに撮影するのが念願の夢だっただけに、倒れてしまって非常に残念である。


    新道峠第1展望台。ショック!お気に入りのシンボルツリーが切られている。


    左側の枝が折れ曲がっており、どうやら台風の影響で木が折れてしまったらしい。


    河口湖の上に現れたレンズ雲。

 ふと河口湖の上を見ると、面白い形の雲が現れていた。レンズ雲だ。いつも通り黒岳の展望台に行くか、それとも9年ほど前の悪天候の日に1度訪れただけでまだ富士山の姿を見ていない中藤山(なかっとうやま)方面に行ってみるか・・・。今後の撮影の事を考えて偵察の意味を兼ねて中藤山に行ってみることにする。小さなアップダウンがあるが、歩き易い尾根道が続く。


    ところどころに開けた富士山展望地がある。


    ここはいまいちだが、霧氷が付けば面白いかもしれない。


    手頃な展望岩が突き出ているが、右手の木が邪魔になって富士山の展望はいまひとつ。


    中藤山直下。好展望だが、中途半端に突き出たカラマツの木がちょっと邪魔。


    中藤山山頂と三角点。カラマツの林が切り開かれていて、やや窮屈な感じがする富士山だが、星の撮影には適度に河口湖の明りが遮られて良いかもしれない。


    中藤山先にある展望地。可哀そうなくらいに木が切られてしまっている。その先にある岩からの眺望は何も遮るものが無い好展望。


    左に河口湖と町、右に富士山というこの構図は中藤山界隈でいちばん良い(と思う。)


    カラマツの紅葉と十二ヶ岳・節刀ヶ岳。中央少し右寄りが十二ヶ岳、その右にチョンと尖っているのが節刀ヶ岳。


    この先は下りで大石峠に至る。ここまでで引き返す。

 中藤山近くの展望地で昼食をとる。富士山頂にかかった笠雲が少し成長し始め、その上にレンズ雲のようなものが出始めたので、もっと面白い形に成長するのではないかと待ってみたが、間もなく笠雲は縮み始めてしまった。本日これにて撤退。


    笠雲の富士山とレンズ雲の河口湖。


    笠雲とレンズ雲の富士山


 3年前だったか、釈迦ヶ岳の山頂で一夜を過ごしたふたご座流星群の夜、富士山の裾野ギリギリのところでカノープスらしき星が写っていた。ほぼ同じ標高で富士山裾野の展望が良い中藤山ならば、ひょっとしたら南の超低空に輝くこの星を捉えることができるかもしれない。
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本栖湖湖畔から佛峠を経て雨ヶ岳を周回  平成26年10月12日

2014年10月15日 | 御坂・毛無・天子山系
 いつだったかは覚えていないが、雨ヶ岳に星空の撮影に行こうとテントを担いで登っている時に、佛峠側のマイナールート(バリアンスルートと言ったほうが良いかもしれない)から登って来たという2人組に出会った。山頂から見るそちら側の尾根は笹が深くてとても歩けるようなルートには見えないが、笹籔は山頂のほんの一部だけで途中までは普通の登山道があるという話を聞いた。ネットで調べてみると、本栖湖湖畔から佛峠を経て釜額(かまびたい)という集落に至るルートはかつての古道で、山梨県の峠道文化の森に指定されているルートだった。さらに佛峠から御飯峠というところまではまともな道があるようで、御飯峠には本栖湖畔と栃代集落を結ぶ道が交差している。問題はその先だろうが、地図で見る限りでは尾根通しの一本道だろう。本ルートがある端足峠(はしたとうげ)側と傾斜もほとんど変わらない。いつか歩いてみたいと思っていたのだがなかなか決心がつかず、遂に行ってみることに意を決して出発する。

 8時20分本栖湖湖畔の駐車場を出発。入り口を探して湖畔のアスファルト道を歩いていると容易に「佛峠ヲ経テ釜額ニ至ル」と書かれた古い標柱を見つけた。入り口こそまともな林道に見えたがその先ですぐに不明瞭な道となり、砂防堤の上を越えて進むと明瞭な道に出た。もう少し先にはこの道に入る入り口があったようだ。


    本栖湖畔から見る雨ヶ岳の三角錐。正規ルートは左側の端足峠から登るルートだが、今回は右側に見えるコブを越えて右の稜線を登る。


    入り口の標柱発見。ここから入山。


    砂防堤の上を越える。このあたりは道が不明瞭。


    そのすぐ先で明瞭な道と合流する。このルートの入り口がおそらくもう少し先にあったのだろう。


    修復したばかりと思われるルート。普通の道です。


    稜線に到着。この少し手前に分岐があって、そこを左に曲がれば佛峠に至ったのだろう。中ノ倉ルートを見るため、もう少し先の分岐まで行って戻る。


    佛峠。本栖湖畔から釜額(かまびたい)に至るルートが横切る。その先の登山道は整備良好。

 佛峠に到着すると、ネットで検索した以上に良好な道がついていた。木の階段道を登って行くと、作業員3人が木階段設置工事の真最中で、雨ヶ岳まで行くことを告げて先に進む。御飯峠のルートを聞いてみたがそこは行ったことがないのでわからないと言っていた。


    思っていた以上にまともなルート。


    大きなブナが立つ。


    ところどころ看板があるが、これは御飯峠まで。


    こちらの面白い看板もところどころに付いていた。


    御飯峠。やや広い森の中の広場。本栖湖畔から栃代に至るルートが横切るが、いずれも明瞭な道だった。

 御飯峠から先はバリアンスルートの様相を呈するようになるが、左手に本栖湖を見ながらひたすら尾根通しに歩くといった感じだ。テープがところどころ付けられているが、最低鞍部に至る手前のピークで右手から来る尾根にもピンクテープが付いている。最初は誤ってそちらのルートに入り込んでしまったが、雨ヶ岳からどんどん遠ざかってしまうので、ここでGPSを取り出して位置を確認するとやはり別尾根に入り込んでいることがわかる。どうやら栃代側からこのピークに登るバリアンスルートがあるようだ。ピークまで登り返して予定のルートに戻り、先に進む。


    林の向こうに見える富士山。


    こちらは雨ヶ岳。聳え立つように見える。


    最低鞍部。ここからが本番、雨ヶ岳の急登が始まる。


    結構な急登。テープがついている。


    最初は急だが、その先は比較的緩い傾斜の尾根が続く。幅広い尾根はところどころ広場のようになっている。


    左手下方に見える本栖湖。


    標高1,700m付近。苔の生えた岩が広がる。クサノ・オウバ・野菊がありそうな環境なので、この岩の上を探しながら歩くと・・・右足が攣った。


    野菊は無く、あったのはバイカオウレンの葉。


    話に聞いていた通り、笹籔は山頂のほんの一部のみ。


    雨ヶ岳山頂到着。久しぶりに味わう達成感のある登山。

 12時50分、雨ヶ岳山頂に到着した。4時間30分かかったことになるが、私にすれば上出来だ。故意に足場の悪いところを歩き足が攣るアクシデントがあったが、あまり疲れは無い。霞の上に浮かんだ美しい富士山が出迎えてくれた。昼食をとって30分ほど休憩して下山だ。端足峠側の正規ルートを下る。


    雨ヶ岳の富士山。


    ダケカンバを前景に入れたこの構図でのダイヤモンド富士を狙っているが、2度山頂泊でトライしていずれも失敗に終わっている。


    山頂直下の紅葉と富士山。


    ナナカマドの実。


    端足峠。高度が下がると富士山も霞んで見える。

 端足峠に到着した時にメールが入る。なんと、花見隊メンバーがムラサキの花を見に山中湖界隈の山に来ているという。2組とも私のブログを見てやって来たそうで、山上でばったりだそうだ。私のほうはまだ下山に1時間ほどかかりそうなので、メンバー行きつけの喫茶店写ば写ばで合流することにする。途中でキッコウハグマの花を見つけて撮影したり、近道をしようとしてかえって遠周りになったりということがあったが、午後3時40分、無事下山。


    小さな株ばかりだが、キッコウハグマ。山梨の山にもあった。


    御飯峠を経て栃代に至る道はここを行けば良いらしい。このあたりで短絡しようとして失敗。かえって遠周りになってしまった。


 写ば写ばに向かい、sanaeさん、みちほさんの花見隊メンバーと合流する。入院・検査を終えたトシちゃんも元気そうでなによりだ。この季節、あまり目ぼしい花も無く、明日の予定は皆それぞれおすすめのところが無くて、ゆっくり山・花談義してこの日は解散となった。

 今年は目ぼしい彗星や天体現象が無いのだが、冬季は星見隊に姿を変えてまた集結したいと思う。それにしても皆さん、山梨が好きですね~。



    今回歩いたルート。反時計回りに周回。  累積標高差1,030m、距離8.7km



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今年こそは・・・ クサ・ノオウ・バ・ノギク  平成26年9月14日

2014年09月14日 | 御坂・毛無・天子山系
 昨年沢を登ってようやく出会えたその花は、既に時期が遅く痛んでしまっていた。今年こそは・・・しかし、急登の沢を登る元気と勇気は無く、昨年は見つけられなかった尾根筋で探すことにする。おそらくはこの山に精通したあの方が登って来られるはずだ。9時半ごろに探し物がありそうな場所で合流する計算で、朝6時15分に登り始める。

 何度も登っている山だが、なにせ急登の連続の山、最近標高差700mほどの山しか登っていない私にはかなり堪えるだろう思っていたのだが、この日は比較的体調良く、ピッチこそ遅いもののあまり疲れずに登れる。滝を見ながら一休みして先に進むと、7時半ごろ後から登って来られた方に声をかけられた。この山の番人、ミスターKさんだ。既に2,000回の登頂を果たしたおられるこの方は、登山ルートのみならずバリアンスルートやそこに咲く花についても精通しておられる。予想よりもだいぶ早く登って来られ、いろいろと情報を聞きながらジン・バイ・ソウがまだ咲き残っているというのでその場所まで案内していただいた。御坂山塊のジン・バイ・ソウは今年夏の暑さに耐えられず開花する前に立ち枯れしてしまった。こちらも今年は花があまり咲かなかったとのことだ。


    咲き残っていたシデシャジン。昨年よりも少ない。


    ツリフネソウはしっとり朝露に濡れていた。


    まだ咲いていないが、キッコウハグマがこの山にもあった。


    滝を見下ろす。


    トモエシオガマ?と思っていたが、これはハンカイシオガマと教えていただいた。


    咲き残っていたジンバイソウ。


    ジンバイソウの花。別角度からも撮りたかったが、周りには葉がたくさん出ており、踏んでは申し訳ないのでこの角度のみ。

 ミスターKさんとはここでお別れ。だが、本命の花を探している頃にきっとまた出くわすことになるのだろう。登山道脇を覗き込みながら、後続の登山者にはことごとく追い抜かれながら、ほぼ予定時間の9時過ぎ、本命の花が咲くと聞いた場所に到着した。岩の上を覗き込んでみると、容易にその花に出会うことができた。その花の名前はクサノ・オウ・バ・ノギク。米粒のような小さな可愛らしい花で、不規則に切れ込んだ葉っぱが特徴の花だ。さらにその奥を覗き込んでみると、想像していた以上にたくさん咲いていた。しかもちょうど見頃だ。


    苔の生えた岩の上にひっそりと・・・


    ちょうど見頃です。


    と思ったら、ひっそりどころでは無い、どっさりと固まって咲いていました。


    葉っぱの形が面白い、クサノ・オウ・バ・ノギク。 小さな可愛らしい花。


    昨年の沢の源頭で見たものよりもこちらのほうがたくさんある。


    先日初めて見たコフウロがこちらの山にもあった。こちらのほうが遥かに山に咲く花の雰囲気が出ている。


    エクステンションチューブ装着して接写。紫色のおしべと赤いめしべがアクセントになっていてとても綺麗な花。

 撮影していると、予想通りミスターKさんが早くも下山してきた。他ルートの情報やバリアンスルートの情報もいただき、この日は山頂に行かずバリアンスルートを下りてみることにする。両側に谷があるその尾根は、谷の源頭に下りるとひょっとしたらノギクがあるかもしれない。そしてイワシャジンも。


    出会えました。イワシャジン。


    テープのついた尾根から外れて沢の源頭に下りてみるが・・・ノギクは見つからず。

 急斜面のバリアンスルートは直下りで早いものの、傾斜がきつく少し膝に堪えた。右側に見える沢に何度か下りてみたが、残念ながらクサノ・オウバ・ノギクには出会えなかった。

 大きな沢筋まで下りたところで、もうひとつのお目当ての花が咲く場所に行ってみた。こちらもちょうど見頃。昨年よりは若干花数が少ないように見えるのだが、元気に咲いている。心安らぐ黄色い花、スルガ・ジョウ・ロウ・ホトト・ギス。


    岩肌から垂れ下がるように咲く黄色い花。


    岩肌を見上げる。


    こちらもちょうど見頃。 スルガ・ジョウ・ロウ・ホト・トギス。


    下から失礼。


    風に揺れる


    沢に垂れ込んで咲くその姿がたまらなく美しい。


    沢沿いに咲いていたテバコモミジガサ。


 今年はちょうど見頃の時期に出会えたクサノ・オウ・バ・ノギク。情報を提供していただいたミスターKさん、そして何度も下見に行ってくれたうーさんに感謝したい。
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御坂山塊に咲くツレサギソウ属の花  平成26年7月28日

2014年07月30日 | 御坂・毛無・天子山系
 もう時期的に遅いかもしれないが、今季最後の紫の蝶舞う花を見に行こうと思っていたところ、山花仲間からメールが入った。御坂山塊の某所に変わった花が咲いているという。中腹はもう終わっているが山頂近くは満開らしい。ならばそちらへ、ということで急遽目的地変更して御坂の山に向かう。

 レンゲショウマを見ながら登って行くと、もう咲いているものもあった。しかし、昨年よりも途中の森の中がなにか草が減ってスカスカになったような違和感を感じる。登山道脇を良く見てみれば、ショウマ類の葉と思われる草に鹿の食害の跡が多数見られた。これからだという時にだいぶ鹿の被害に遭っているようだ。


    レンゲショウマはほとんどが蕾。


    もう咲いているものも少数見かけられた。


    こちらは咲き始めたシュロソウ


    草が減ったような違和感を感じていたが、鹿の食害跡が多数あった。


    ハクサンフウロも少ない。

 山頂近くの草地の中を探すと、白くて目立つその花は容易に見つけることができた。昨年のこの季節に、この近くの山でもう少し小さな株の花を数株みつけたが、その時もとうとうこの花の正体はわからずじまいだった。


    白いサギかトンボが飛ぶようなこの花、やや背が高くて目立つ。


    果たしてこの花の正体は??


    まだ開花していない別の株。


    長く真直ぐ伸びた距(尾の部分)はキソチドリとは違う。

 ツレサギソウかヤマサギソウのいずれかと思われ、図鑑を調べてみると、ツレサギソウの葉は狭長楕円形で鋭頭なのにに対し、ヤマサギソウは線状長楕円形と書かれている。さらに、ツレサギソウは唇弁の基部の両側に突起があり、ツレサギソウ属の中では異色であるとも書かれている。そこで、葉の形態と接写した花の形を良く見てみると、葉の先端は尖っておらず、唇弁の基部には突起が無い。おそらくこれはヤマサギソウであろうと思われる。


    花の接写写真。唇弁(舌のように下に垂れ下がっている部分)の基部に突起は無い。この花の正体はおそらくヤマサギソウ。

 花を正面から見るとクリオネに似ており、「草原のクリオネ」とも呼ばれているそうである。同定が間違っているかも知れないので、詳しい方がいたら教えていただきたい。


 さて、広場で休憩して下山だ。別ルートを下りてみると、そちら側はレンゲショウマがたくさんあり、ちらほらと咲き始めていた。8月中旬、おそらくは見頃を迎えて楽しませてくれることだろう。


    ?


    クガイソウ


    フシグロセンノウはまだこれから。


    レンゲショウマの蕾。こちら側のルートのほうが多い。


    咲き始めたレンゲショウマ


    同上。
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彗星を追って 極寒の天子ヶ岳  平成26年1月10日‐11日

2014年01月14日 | 御坂・毛無・天子山系
 ラブジョイ彗星はピーク時4等級ほどだった明るさから現在は6等級ほどまで光度を下げている。双眼鏡でも見えにくくはなったが、未だ十分に撮影することは可能である。年末・年始の休み中に富士山からやや距離を置いた南部町の山から富士山の全容とともに撮影しようという計画は体調不良と根性が出ずに果たせなかった。おそらく、今回が最後のチャンスになるであろうと思う。強烈な寒波が押し寄せ、冬型の気圧配置となっておそらくは澄んだ星空が見られるであろう3連休を狙って、予告した通り天子ヶ岳に登る。

 仕事を終わらせて午後出発し、田貫湖を出発したのは午後3時になってしまう。もう日の位置は低く、田貫湖には山の影が伸び始めている。長者ヶ岳を越えて天子ヶ岳に向かうが、長者ヶ岳までは道が良くてあまり遠く無かったと記憶していた。登山を始めたばかりの頃にテント泊の練習として初めてテントを張ったのが長者ヶ岳山頂である。ダイヤモンド富士になる日を狙って山頂泊したが、雲に遮られて富士山すら見えなかった。その次に訪れたのは南アルプス栗沢山で凍傷になり、治りかけたところでリハビリで登り、天子ヶ岳を周回して下りた。今回が3度目となる。重いテントを背負わずとも未明に山頂を目指すことも考えたが、そうするとおそらくは寒さに尻込みして登らなくなってしまう公算が高い。ならば無理してでも山頂泊を選択し、金曜日の午後から登ることにした。できれば長者ヶ岳山頂で夕暮れを迎えたいが、時間的に難しいかもしれない。

    午後3時田貫湖湖畔を出発。駐車場にはもう山の影が下りる。


    バンガローの中を抜けて稜線の東海自然歩道に抜ける。


    まだ陽の残る樹林帯の中。


    長い木の階段道。長者ヶ岳まではまだ2kmほどあり、意外と遠いことに気付く。

 思ったよりも長者ヶ岳は遠く、林の中で夕暮れを迎えてしまう。富士山を見ると中腹に雲をまとい、今シーズンでは最高ではないかという凄い焼け方をしていた。展望地を探すが良さそうな場所が見つからず、止む無し、林の中で三脚とカメラを構える。長者ヶ岳山頂ならばきっと良い写真が撮れただろうが、残念。しかもデジタルカメラの特性で、赤系統の色があまり出ないのも残念だ。

    中腹で夕暮れを迎えてしまう。


    夕暮れの富士山。もっと真っ赤に焼けていたのだが、赤系統に弱いデジタルカメラは色が出ない。


    長者ヶ岳山頂に到着したのは5時半過ぎ。もうすっかり真っ暗。


    長者ヶ岳山頂から見る富士山


    富士山の左上に輝く明るい星は木星。右側にはオリオン座が昇る。

 長者ヶ岳山頂で30分ほど休憩と撮影の後、天子ヶ岳に向かう。ここから標高差120mほど下ってまた同じくらい登り返すと天子ヶ岳に到着する。気合を入れ直して夜道を出発する。幸いにして単独登山者の足跡がくっきりと残っており、それを追いかけて道を進む。月光に照らされた雪の稜線は白く光って美しく、空気が澄んで眼下の街灯りがひときわ鮮やかに見える。こういう景色を見ながら山中を単独で歩いていると、自分が森の中に同化され、自然の一部になったような感覚を覚える。1時間ほどで天子ヶ岳山頂に到着。月光に照らされた森が綺麗だったので、テント設営の前に森の情景をカメラに納める。

    月光照らす天子ヶ岳の森


    森の上に広がる月と星の情景


    天子ヶ岳の森に昇るオリオン座


    天子ヶ岳展望台から望む夜富士。富士山頂の上に輝くのは木星と双子座。


 周辺をひととおり撮影し終えてからテント設営する。時間はもう7時半を回っていた。想定した以上に冷え込んでおり、テントの中でバーナーを焚いて暖をとり、夕食となる。外気温を腕時計の温度計で測ってみると、既に振り切っていて測定不能だった。氷点下10℃以下まで冷え込んでいるということだ。3シーズンシュラフにシュラフカバーでなんとかなるだろうと思っていたが予想以上に冷え込み、持ってきた服は全部着込んでホッカイロを張って寝るが、腰から腿のあたりが寒くてあまり眠れず、何度も目を覚ました。そして未明3時に起床する。バーナーを焚いて暖をとってから軽く食事を済ませ、3時半、激寒の外に出て三脚とカメラを構える。予想では彗星が姿を現すのは未明4時頃だ。
 
     未明の富士山。右上に高く昇っているのは牛飼い座アルクトゥールス、富士山頂に小さく輝くのは彗星を探す目安となるヘラクレス座ラスアルゲティという星。


    200mmレンズで捉えた富士山頂。右に昇るのがラスアルハゲという星。同じ高さで左に彗星が姿を現すはず…と思ったら既に富士山白山岳の脇に彗星が登場していた。


    富士山白山岳の上に姿を現したラブジョイ彗星


    富士山頂を舞うラブジョイ彗星。かなり小さくなったように見える。


    同上


    62mmズームだともうほとんど見えないほどに小さい。


    頻用する17㎜だとほとんど写らない。左手に昇って来たのはこと座のベガ。

 彗星が富士山から遠ざかった頃に再び森の中に入ってみる。木星が北西の空に沈んで行くところだった。頭上には北斗七星と春の大曲線が高く昇っていた。寒さを忘れてすっかり撮影に没頭し、2時間もテントの外にいた。風が吹かなかったためか、あまり寒さを感じなかった。薄明の始まった5時半、テントの中に戻る。

    天子ヶ岳の森の星空。中央低空に輝く明るい星が木星。


    頭上に昇る北斗七星と春の大曲線


    水平線が明るみ始め、薄明の始まった富士山

 朝食をとって暖をとって夜明けを待つ。夕食の時に誤ってこぼした水がテントの隅でカチカチに凍りついていた。水平線が赤く染まって来たところで再びテントの外に出て日の出を待つ。昨日の夕暮れのように赤く染まるのを期待したが、この場所では日の出の角度が悪く、富士山の斜面にはあまり朝日が当たってくれなかった。

    日の出前の富士山


    日の出。この季節は天子ヶ岳からだと富士山に朝日が当たらない。

 7時半、テント撤収し下山開始。ゆっくりと山を楽しみながら歩く。長者ヶ岳の先で田貫湖休暇村に下りる道があり、まだ歩いたことがなかったのでそちらを歩いてみた。こちらも整備の行き届いた道だった。これならば、夜中に歩くにも問題は無さそうだ。田貫湖のダイヤモンド富士は何度か撮影したが、まだ撮れていない山上からのダイヤモンド富士も見てみたいと思う。

    朝の天子ヶ岳の森


    長者ヶ岳から見る富士山


    田貫湖湖畔から見る富士山


    同上(いつもダブルダイヤモンド富士を撮影しているのがこのあたり。)


 ラブジョイ彗星を追うのはおそらく今回が最後になると思う。山上からの撮影にこだわったが、結局富士山と一緒に最もまともに撮れたのは富士宮市白糸の滝付近から見上げたカットだった。貫ヶ岳、天子ヶ岳と2つの山上から彗星を狙ってわかったことだが、富士山の裏側にある御殿場から相模原、厚木、さらに川崎・横浜といった都会の町灯りが明る過ぎるために、山上から見るとその明りが富士山頂を越えて広がってしまっている。そのために、山の上から撮ると富士山頂付近の空の明るさに彗星の輝きが薄くなってしまっているようだ。むしろ見上げる富士山で光害の少ない空を狙ったほうが彗星は撮り易いのかもしれない。   
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源頭に咲くイワシャジン 再び毛無山塊の沢へ  平成25年9月23日

2013年09月25日 | 御坂・毛無・天子山系
 スルガジョウロウホトトギスを見に行った時に、ガイドしてくださったK田さんから毛無山塊に咲く珍しい黄色い花の情報をいただいた。支脈の沢を登って行くとあるらしく、イワシャジンもたくさん咲いていると伺った。時期的にそろそろ咲き始めた頃だろう。まだ慣れない沢登りだが、行ってみることにした。

 午前中の仕事を片付けて毛無山の駐車場から出発したのは12時近くになってしまう。沢沿いの道を進み、前回まだ蕾だったスルガジョウロウホトトギスの群生地に下降してみる。見頃は若干過ぎているが、立派に花を着けてくれた。

    三たび毛無山の沢を登る。


    この日は水が澄んでいて沢の流れが美しい。


    スルガジョウロウホトトギス群生地


    立派に花を着けてくれました。


    下から見上げるスルガジョウロウホトトギス

 目指す沢はさらに上流の支脈だ。ほとんど枯れた沢だと思っていたが、入って見ると水量はさほど多くは無いが水が流れていた。


    枯れた沢と思っていたが水が流れている。


    ゴロゴロの石の上をひたすら遡上する。

 沢幅が次第に狭くなり、傾斜が増してきたところで小さな滝が何本か現れた。水量は少ないので靴を少し濡らす程度で遡上していったが、遂に、滝壺に入らなければ私の技術では遡上出来ない滝に出会ってしまう。


    このくらいの滝は難無く登れる。


    さらに谷が狭くなり、かなり奥までやって来たという雰囲気。


    そして遂に・・・この滝は滝壺に入らなければ登れない。

 両脇が崖になっているが、取り着き易そうな左側の崖に取り着いた。高さは4mほどだ。ところが、この崖は岩がもろく、手を掛けるとガラガラと崩れ落ちてしまう。崖の上の木の根っこまでなんとか手が届いたが、その先の斜面の傾斜を見て、これは登れないと判断した。しかし、今度は下りるのが大変だ。足場も手を掛けるところも岩がもろくて、いつ崩れてもおかしくない場所だ。2m滑り落ちるのを覚悟して下降し、なんとか沢まで下りた。

 あきらめて下山、も考えたが、時間はまだ2時だ。100mほど下ると左岸の尾根筋に取り付けそうなところがあったので、今度は尾根に取り付いて登る。こちらは道こそ無いが炭焼き釜の跡が点在していて登り易い。沢音を左手に聞きながら登って行くと沢に下りられる場所に出たので、再び沢筋に戻って遡上する。既に水は少量しか流れておらず、もう滝は無い。やがて水は枯れて石だけの沢になる。源頭まで登り詰めたようだ。

    尾根筋にあった炭焼き釜の跡


    沢に下降するところにも炭焼き釜の跡


    水はだいぶ細くなり、もう滝は無い。


    水は無くなり、源頭に至る。

 標高は1500mほどまで上がった。苔の生えた石の上を探すがお目当ての花は見つからない。右岸の切り立った岩に近付いてみると、そこにはイワシャジンが涼しげにぶら下がっていた。なんとかイワシャジンには出会うことができた。

    沢の源頭に咲いたイワシャジン


    岩肌に咲いたイワシャジン


    源頭の岩肌に咲くイワシャジン


    岩にぶら下がるイワシャジン


    もう少し登るとこのガレた沢も終わりそうだ。

 時間は3時半、もうそろそろ下山開始しなければ。左岸の尾根に取り付いてそこを下りて行くと・・・その先は沢に切り立った急傾斜の尾根になっていた。こんな時に限ってザイルを持っていない。いや、ザイルがあっても距離が長く、下降は難しいかもしれない。隣の尾根に取り付くことも考えたが、もしそちらも切り立っていたら・・・時間が時間だけにここで判断を誤ると山の中でビバークということもあり得る。ここは尾根を戻って沢筋に下りることにした。

 元の沢に戻ったのは午後4時。ゴロゴロの岩の上を黙々と下降し、左岸の尾根の傾斜が緩くなったところで尾根に取り付く。炭焼き釜の跡地を通過し、あとは尾根を下りて登山道に下りた。なんとかヘッドライト点灯しないで済む時間の5時半、駐車場に到着した。

    夕暮れ迫る富士山。下山途中の登山道から。


 沢を間違えたのか、それとも高度が足りなかったか、お目当ての花には出会えなかった。その花の名前はクサノオウバノギク。絶滅危惧種の花ではあるが、それほど派手な花では無い。もう1ヶ所、歩き易い場所の情報もいただいているので、今度はそちらを探してみたいと思う。
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スルガジョウロウホトトギス再び 花見隊集結  平成25年9月7日

2013年09月09日 | 御坂・毛無・天子山系
 先週見つけたスルガジョウロウホトトギスはまだ少し時期が早かった。今週か来週が見頃だろうが、次週の3連休は既に予定があって難しそうだ。数日前に雨が降ったばかりで沢の増水が心配なのだが、今回を逃すと花見隊とともにこの花を見る機会はおそらく来年に持ち越しとなってしまう。メンバーに連絡をとってみると、7日の土曜日ならば集結できそうだ。

 朝6時、朝霧高原道の駅に集合としたが、私たちが到着したのは6時半近くとなってしまう。コンビニで買い物をして入山口の駐車場に到着したのは7時半ごろ。しかし、この時間が遅れたことが幸いして、駐車場で毛無山山塊を知り尽くした人物にお会いすることができた。私が毛無山に登るたびに確立8割でお会いするその方とは・・・ミスター毛無山、ことK田さんだ。ジョウロウホトトギスを探しに出かけた先週も、この方にお会いできればきっと情報を持っていると予想されるので会えないかと思っていたのだが、私のほうが出発が早かったようでK田さんは私の車が止まっているのは確認したそうだがルートが違いお会いできなかった。この日はちょうど出発準備中のK田さんにお会いでき、遂に毛無山登頂2,000回を達成されたそうだ。そしてこの花の話をすると良くご存じで、この日のガイドを買って出てくれた。なんと幸運なことだろうか。昨年はバスで大人数でやって来てこの花を見に来たツアーもあったそうだ。我々も11人という大人数なのであまり批判はできないが、山や花を荒らすようなメンバーでは無いことは確かだ。8時少し前に入山口を出発する。


    下山後のお楽しみに、小川にスイカとメロンを冷やして行く。


    入山口近くに咲いていたシデシャジン。思っていたよりも花は小さい。


    数日前に雨が降って増水しており、渡渉に若干苦労する。


    増水していてやや水の勢いが強いが、美しい沢の流れ。


    前回見つけた下流側の花。痛んでいるものも、まだ蕾のものもある。ここは花が遠くていまいち。


    さらに上流の群生地。咲いたものもあるがまだ大部分は蕾だ。


    スルガジョウロウホトトギス、正面から。


    前回ホトトギスの仲間と記したこの花、そうではなくてイワナンテンという、これまた珍しい花だった。(サクラスミレさんに教えていただきました。)


 先週私が見つけた場所はまだ蕾のものが多く、若干時期が早かった。K田さんは私たちが花を見ている間にさらに上流に遡上して咲いている場所を探してくれ、花見隊メンバーはところどころザイル下降しながらその場所に行って花を楽しんだ。そして、前回私が行かなかった場所(双眼鏡で探したが花を見つけられなかった場所)でちょうど満開・見頃の素晴らしい株を探してきてくれた。存分に花を眺め、撮影してこの日は十分に満足した。メンバーもここまでで満足し、ちょうどお昼ごろになったので軽食をとって下山となった。こんなに良い花を見られるとは、全てK田さんのおかげである。毛無山塊のガイドをやらせたら、この人の右に出る人はいないだろう。


    岩から垂れ下がる群生のスルガジョウロウホトトギス。


    満開、美しい。やすらぎのひととき。


    下から覗き込むスルガジョウロウホトトギス。


    沢に垂れ下がるスルガジョウロウホトトギス。


    美しい沢の流れ。


    大きな滝の脇にも咲いているが、ここには近付くことができない。


    滝の脇の岩壁に咲いたスルガジョウロウホトトギス。

 下山後、小川で冷やしておいたスイカとメロンを持ってきて、以前から計画していたスイカ割り大会を行う。トップバッターは花見隊隊長の私がやったが、遥か左に逸れた。そして4番手のトシちゃんが見事にスイカ割りに成功する。もう少し大きいスイカが欲しかったのだが、遅い時間にスーパーに立ち寄ったところ、小玉1個しか残っていなかった。しかし、甘くておいしいスイカだった。

    スイカ割り大会。4番手でトシちゃん登場。


    お見事!命中。


    手際良くスイカを切り分けるみちほさん旦那さん。


    ご苦労様でした。いただきま~す。


    本日もハゲ見、じゃなくて花見にハゲみました。


 毛無山塊はほとんど富士山や星空の撮影のために登っていたが、このような稀少な花が咲くことを最近知り、また新たな楽しみができた。偶然だが、途中でクモキリソウ属の葉を発見、さらにK田さんに別の花の情報もいただいた。K田さんのおかげでたいへん充実した花見隊山行だった。お世話になりました。
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冬の鬼ヶ岳周回(後編)  平成25年2月24日

2013年02月27日 | 御坂・毛無・天子山系
 根場いこいの里から雪頭ヶ岳を経て約4時間かかって鬼ヶ岳山頂に到着した。時間は12時半、ここから鍵掛峠への尾根道を進む。夏場ならば富士山の眺望を楽しみながら、岩場が混じった少しばかりのアルペン気分が味わえる楽しい道だが、冬はどうなっているのだろうか?進行方向を見るとかなりの雪が積もっている。幸いなことに数人で歩いたと思われるトレースがあって、ラッセルはしなくて済みそうだ。


    鬼ヶ岳山頂の岩と富士山


    これから進む鍵掛峠への稜線。結構な雪がある。


    小さいが雪屁ができていた。御坂山系では珍しい。


    トレースに感謝。先頭を歩いた人はさぞかし大変だっただろう。

 緩く下ってまた登り、その先は急傾斜の下りとなる。柔らかい雪で足をとられまくり、3度もスリップ・転倒する。下り切ったところで前方に展望の良い岩場が出現する。この日は誰も岩に登った様子は無く、雪を踏みつけて岩に登り、ここで休憩しつつ富士山を撮影する。この間に鬼ヶ岳山頂にいた若者二人に追い抜かれ、その後は下山するまで山上では誰にも出会わなかった。

    展望岩から見る雪頭ヶ岳の斜面と富士山


    上ズーム  足和田山越しの富士山


    裏側に広がる南アルプス・八ヶ岳と甲府盆地

 岩の上に登ってみるとかなり風が強く、ゆっくり休めるような場所では無い。写真を撮ったらさっさと下りて先に進む。展望岩の下を大きく回り込んで下り、また登り返す。ピークを越えて少し進むとまた展望の良さそうな岩が出現、ここも誰も登った様子は無い。ここはスルーしようかと思ったのだが、折角雲が晴れて午後にしては珍しいすっきりした富士山が見えているのに写真を撮らないのはもったいない。一旦は通り過ぎたが、戻って岩の上に登り三脚を立てる。先ほどとは角度が変わって足和田山の全景と西湖の一部が見えるようになる。午前中の雲はすっかり晴れ、綺麗な富士山が「撮ってくれ」と言わんばかりに立っていた。

    これから歩く稜線。登り返してその先を下って鍵掛峠。ピークを越えるとまた素晴らしい眺望が得られる展望岩あり。


    鍵掛峠近くの展望岩から見る足和田山越しの富士山


    歩いてきた稜線を振り返る。右が雪頭ヶ岳、中央が鬼ヶ岳。

 その先の鍵掛峠への下りは雪と岩が混じった、ところどころロープ場がある歩きにくい道だった。岩にアイゼンをひっかけて転ばないように注意しながら、ロープを使わせていただいて慎重に通過し、ようやく鍵掛峠に到着、時間は午後2時20分だった。鬼ヶ岳から2時間ほどかかったことになるが、撮影時間を除けば1時間半はかかっていない。これもトレースがあったおかげだが、もし無かったらさらに30分以上は余計にかかっただろう。峠の下には富士山の展望台があるので、そこまで行って腰を下ろしてゆっくり休む。

    鍵掛峠への下り。岩と雪がミックスした道で、ロープが張られた場所がある。


    鍵掛峠。向こうは王岳への稜線。


    鍵掛峠の林から望む富士山


    鍵掛峠展望台。峠の下、根場へ下りる途中にある。木が切られていて展望岩に乗ることができる。


    鍵掛峠展望台から望む富士山

 展望岩側の斜面は稜線と違って風が吹かず、休憩には絶好だった。しかし、ここはまだ標高1,500mほどあり、根場までの標高差は600m、下山には1時間少々時間がかかる。山の上にはもう誰もいないようで、人の姿は無く声も聞こえない。時間はもうすぐ3時、あまりのんびりもしていられない。この先は歩き易い良い道なのでアイゼンをはずして下山開始する。

    鍵掛峠の道は広くて歩き易いが、西側斜面にはまだ結構な雪があった。アイゼン無しで足早に下りる。


    根場いこいの里の萱葺屋根の家と富士山。3時53分到着、思ったよりも早く着いた。

 やや急ぎ足で登山道を下り、1時間ほどで根場いこいの里に到着した。持って行ったラーメンは食べずじまいで下山してしまったので、駐車場の傍らにあるおみやげ物屋さんでソバをいただいた。お店のおかみさんに山の上は雪が深かったという話をしたら、2週間ほど前に来た登山者は鍵掛峠の先が腰まで雪があって登れずに引き返してきたと言っていた。今日はまだ良いほうだったようだ。この程度の時間で歩けたのは先行した登山者のおかげ、重ね重ね感謝である。


 さて、この日は十四夜の月が登って来る日だ。田貫湖あたりで富士山山頂あたりに月が登って来るはず。ソバをいただいた後は朝霧高原・田貫湖方面に向かって車を走らせる。(十四夜・十五夜の冬月に続く)
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冬の鬼ヶ岳周回(前編)  平成25年2月24日

2013年02月26日 | 御坂・毛無・天子山系
 写真の枚数が多いので、前編と後編に分けてお届けする。

平成25年2月24日

 前日と同様に朝から強い風が吹き荒れた。青空は広がったが、自宅から見る南アルプスには雲がかかっている。出かけるなら御坂山塊が無難そうだ。昨日三方分山から見た王岳・鬼ヶ岳の山並が白くて美しく見えたのを思い出す。広い駐車場のある西湖のほとり、根場いこいの里にまずは行ってみることにする。


    根場いこいの里から見上げる雪頭ヶ岳と鬼ヶ岳。向こうの赤いバスは登山にやって来た団体さん。

 いこいの里から見上げる雪頭ヶ岳、鬼ヶ岳、さらに王岳に続く稜線は、下から見上げる限りではさほど雪が無いように見受けられた。ちょうどバスでやって来て出発の準備をしている15人ほどの団体さんや、他にも数グループが登山の準備をしていた。こちらもさっそく準備して団体さんより一足先にスタートする。向かった先は雪頭ヶ岳への直登コース。こちらのルートは鍵掛峠のルートよりも歩きにくい半面、登山客も少ない。8時半スタートし、根場いこいの里のかやぶき屋根の建物を左に見ながら、道標に従って右に曲がり堰堤広場・雪頭ヶ岳方面に進む。堰堤広場を過ぎると植林帯の中の雪道に変わる。少し行くと枯れた沢を対岸に渡ってまたすぐに渡り返すところがあり、テープがたくさんついてはいるものの、ここだけ若干わかりにくい。さらに樹林帯の中の道を進み、大きな岩のところを左に曲がって登って行くとカラマツの樹林帯に変わる。標高は1,200m付近、カラマツ林の向こうに富士山が見え出し、ここで一休みする。

    堰堤広場。右手に登山道がある。


    雪の登山道。堰堤の向こうに見えるのが雪頭ヶ岳。


    ヒノキ樹林帯の中を行く。


    大きな岩に突き当たり、看板に従って左折。


    歩き始めて1時間ほど、カラマツに樹林帯に変わる。


    カラマツ林の向こうに見える富士山。

 カラマツ樹林帯は日当たりが良いためか雪は少なかったが、尾根に取り付いて西側斜面の紅葉樹林帯に入ると雪が増えて来た。登山道にはところどころツルツルのアイスバーンが現れ始め、さすがにアイゼン装着しないと滑ってしまう。軽アイゼンを装着して雪頭ヶ岳への急登を登り、11時40分、歩き始めてから3時間かかって雪頭ヶ岳に到着した。ここで後続の若者2人組に抜かれたが、彼らはノーアイゼンで登って来ていた。

    カラマツ林から見上げる雪頭ヶ岳。まだちょっと距離も標高差もある。


    登山道はところどころアイスバーンになっており、さすがに危険を感じて軽アイゼンを装着。


    雪頭ヶ岳の急登。左手のロープを使わせてもらう。


    西側の広葉樹林帯は雪が深い。トレースに助けられる。


    雪頭ヶ岳頂上付近の草地


    山頂から見下ろす西湖と富士山。残念ながら雲がかかってしまう。

 雪頭ヶ岳は眺望に恵まれており、眼下に見える西湖の他に左手には河口湖、その遥か向こうの富士の裾野には山中湖を望むことができる。さらに右手には広大な青木ヶ原樹海とさらに右手に本栖湖、そして竜ヶ岳、雨ヶ岳、毛無山、長者ヶ岳へと続く山並が一望できる。三脚を立てて写真を撮りながら食事をとり、ここで大休止する。

    東側の眺望。遠く山中湖まで望むことができる。


    西側の眺望。本栖湖とその先の毛無山・天子山塊が一望できる。


    冬の陽

 30分ほど休憩して隣の鬼ヶ岳に向かう。その先の下りはかなりの急斜面、しかもアイスバーンの上に雪が積もっていてアイゼンが効いてくれない。へっぴり腰で木の枝や根っこにつかまりながら慎重に下りたが、この場所が今回のルートの中で一番怖かった。そこを下ると今度はハシゴ登りだが、その先の鬼ヶ岳への道は問題無く登れた。雪頭ヶ岳で追い抜かれた若者2人は鬼ヶ岳山頂で昼食休憩中だった。相変わらずのノーアイゼン、こういう道にはかなり慣れているようだ。

    眼前に迫る鬼ヶ岳。しかし、足元はアイスバーンと雪の急斜面。


    ハシゴを登る。


    ハシゴの上の展望地から見る十二ヶ岳と御坂山塊。右下は手前が西湖、向こうが河口湖。


    同じ場所から見上げる鬼ヶ岳。もう少し。


    鬼ヶ岳山頂


    鬼の角と富士山

 富士山には雲がかかっていたので、三脚を出さずに手持ちで数枚撮って彼らよりも一足先に鬼ヶ岳を出発した。もちろん、その後簡単に追い抜かれたが、その先の鍵掛峠への尾根道は想定以上に雪が深く、岩の混ざった悪路になっていた。(後編に続く)
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精進湖越しの富士山は? 雪の三方分山  平成25年2月23日

2013年02月25日 | 御坂・毛無・天子山系
 甲府盆地はビュービューと風の吹き荒れる寒い朝となった。冬型の気圧配置の時は行きたかった北八ヶ岳は難しい。登り易い御坂山系に行くことにしたが、どこに登るかは決まらないままにひとまずは精進湖方面に向かって車を走らせる。ふと思い出したのが「写ば写ば」に飾らせていただいてあった写真の事。2月に入ってから店内の写真を全て栗林先生ご自身の写真に変えたそうで、写真を取りに来て欲しいという連絡をいただいていた。ならば、精進湖の上の三方分山を周回してそのあとに食事を兼ねて写ば写ばに立ち寄らせていただくことにした。愛用していたキャノンEOS40Dの調子があまりにも悪く、1ランク上のEOS7Dに機種を変更し、今回が初使用となる。

 精進湖のほとりに車を止めてまずは7Dの試し撮りをする。シャッター音が小気味良く、モニターに映った画像で確認するとかなり綺麗に撮れているように見えた。(実はこれはモニターの性能が良いためで、後にパソコンで見ると若干手ぶれと後方のピントが甘いことがわかる。)9時半、湖畔を出発し女坂峠に向かう。

    精進湖湖畔から見るパノラマ台方面。かなり雪が着いている。


    民家の間の道を抜けて登山道(旧中道往還)に入る。


    登山道に入るとすぐに雪道となる。アイスバーンでは無いのでアイゼンは終日装着せず。


    中道往還とは東海道と中仙道の中間にある道という意味らしい。古くは商業や軍事のために使われていたらしい。

 女坂への道はジグザグにつけられていて歩き易く、雪の積もる道ではあるがアイゼン無しで歩けた。1時間ほど歩いて女坂峠に到着する。ここで一休み。三方分山が目の前に見えるが、かなりの急登に見える。

    雪の積もる中道往還


    女坂峠手前の樹林帯から見上げる三方分山。


    女坂峠。別名阿難坂。甲府方面から2つの峠を越えて精進湖に至るこの道は、このあたりが一番の難所だったらしい。


    峠に立つお地蔵さん。かつて身重な女性が道中で子を産んだが母子共に亡くなってしまい、ここに子を抱いた地蔵を建てたと伝えられている。何故かお地蔵さんは首が無い。

 さて、いよいよ三方分山への急登となる。さらに雪は深くなるが、トレースがしっかりとあって、道もジグザグにつけられていてさほど辛くは感じない。急登を登り切って笹の混じる緩い傾斜になると山頂は間もなくだ。11時半山頂に到着、湖畔からちょうど2時間くらいだった。この頃には朝の強風が嘘のように止み、日差しにはぬくもりを感じる。山頂にいた単独登山の先客は穏やかな天気に日向ぼっこしながら気持ち良さそうに昼寝していた。

    山頂への登り。


    笹が混じり、傾斜が緩くなると山頂は間もなく。


    三方分山山頂


    富士山側の眺望が開ける。この時間には霞んではいるが富士山が見えていた。

 山頂で20分ほど休憩してパノラマ台方向に進む。恐れていた下り斜面は雪が少ししか無かったものの、雪解けのドロドロ道でスリップに十分注意しながら下りる。30分ほどで精進峠の展望台に到着したが、この頃には富士山山頂には雲が巻いてしまっていた。精進湖を真下に見下ろしながらその向こうに富士山が立つこの場所の景色は、このルートの中で一番のお気に入りだが今日は不発に終わってしまった。カメラ手持ちで数カット撮影し、先に進む。

    精進峠展望台から見下ろす精進湖。富士山は残念ながら雲に巻かれる。


    左手に見える王岳と鬼ヶ岳山塊。向こうの山も結構白い。


    右手にはこれから歩くパノラマ台への山並。結構遠いし、アップダウンもある。

 この先はいくつかのアップダウンが続く。そしてパノラマ台入口からの道と合流して最後の緩い登りとなるが、雪の量は本日歩いた中でこのあたりが一番多かった。登り切ったところで本栖湖外輪山の周回コース、中之倉峠への分岐があり、これを過ぎるとすぐにパノラマ台だ。中之倉峠コースも下見してきたが、籔道では無くてきちんとした道が続いていた。

    パノラマ台への最後の登り。雪はこのあたりが一番多かったが、トレースはしっかりある。


    中之倉峠への分岐。今回はこのコースも確認しておきたかった。


    パノラマ台。富士山は残念ながら霞と雲の中。


    冬の御坂山塊。明日はあっちを歩いてみようかな??

 山頂には先客が二人休憩していた。私は方位版の向こう側の土台石に座って軽食をとっていたが、間も無く烏帽子岳方面から10人ほどの団体さんがやって来た。記念撮影をするらしく、方位版周辺に集まって旗かなにかを準備し始めた。どうみても私が居るのは邪魔になる。さっさと切り上げて下山することにする。下山道は雪はあるがアイスバーンは無く、快調に歩いて40分ほどでパノラマ台入口に到着した。その後は「写ば写ば」に立ち寄り、ゆっくりと昼食をいただき、栗林先生と写真談義を楽しむ。新メニューか、グリーンカレーはとてもおいしかった。

 11月に雨ヶ岳に行った時、中之倉峠側から雨ヶ岳に登って来た人に出会った。山頂直下は笹籔らしいが、距離はほんの少しだけで普通に登れると聞いた。同じところを登って来た登山者の記載が「望の富士」にもあった。ということは、烏帽子岳からパノラマ台を経て中之倉峠まで行ければ、雨ヶ岳、竜ヶ岳を越えて本栖湖外輪山を1周出来るということになる。もちろん私の足で1日で歩くには無理な距離なので、テント1泊ということになるだろう。気になっていたパノラマ台からのルートを確認するのも今回の目的の一つだった。気候が良くなった頃に、時間が許せば歩いてみたいと思う。
 
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ダイヤモンド富士ならず、しかし・・・ 雨ヶ岳(2日目)  平成24年11月10日-11日

2012年11月13日 | 御坂・毛無・天子山系
 富士の裾野から昇る木星、オリオン座と冬の大三角形、そして未明に昇って来る二十七夜の細月、さらにダイヤモンド富士を狙って前日の夕暮れ時に雨ヶ岳山頂に到着しテント泊した。空が澄み、薄雲が流れ行く空の上に満天の星が広がり、久しぶりの星空を堪能した。

 明けた11日の未明3時半に起床する。そろそろ富士山の裾野から月が昇り始めている頃だ。しかし・・・テントの外を見て唖然とする。前夜の星空はどこへやら、霧におおわれて真っ白な世界が広がる。富士山も、月もいったいどこへやら・・・??。気温-4℃、想定した通りの氷点下、結構寒い。テントに戻ってバーナーを焚き、暖をとりながら早目の下山に備えてシュラフやシュラフカバーを詰め込む。4時を過ぎた頃にテントの外を見てみると、時折富士山頂が霧の間から姿を現し、その上にはうっすらと月らしき影が透けて見える。それほど厚い霧では無いようで、空を見上げれば前夜楽しませてくれた木星と冬の大三角形がうっすらと透けて見えていた。数カット撮影してテントに戻り、今度は朝食を摂る。

    うっすらと見えた月と富士山頂


    霧の空に透けて見えた木星と冬の大三角形

 すっかりあきらめていた午後5時40分、再びテントの外を覗いてみると、南から東の空にかけて真っ赤に焼けていた。そして流れ行く霧の切れ間から富士山が姿を現す。見事に雲海の上に富士山が浮かんでくれた。空高く二十七夜の月が輝いている。

    霧の間から姿を現した朝焼けに立つ富士山


    朝焼けに昇る二十七夜の月


    見事に雲海の上に富士山が出た。


    雲海に立つ朝焼け富士


    雲が湧き上がり、富士山に絡み付く。

 これでダイヤモンドが輝いてくれれば最高なのだが、富士山の後ろ側にはあいにくの厚い雲がかかっている。雨ヶ岳山頂にあるお気に入りの木を前景にして三脚を固定し、その時をじっと待つ。時間は午前7時を回った。そろそろ時間だが・・・富士山頂がわずかに明るくなった程度で、ダイヤモンドは輝かなかった。しばらく見ていると富士山頂で明るくなった光こそが太陽で、雲が薄くなった富士山の右上で雲を透けて輝いていた。

    朝焼けが終わり、空は晴れたが富士山の裏には厚めの雲がかかる。


    この雲を透けて朝日が輝いてくれれば・・・念願の雲海上のダイヤモンド富士だが・・・。


    この構図でダイヤモンド富士を待つ。山頂が少し明るくなっているのが、実は太陽。ダイヤモンドは輝かず。


    富士山頂を過ぎたところで透けて見えた太陽。

 空は次第に雲が増え始めていた。富士山も時折山頂がすっぽりと雲におおわれたかと思えば、また姿を現す。午後からは雨の予報なので早々にテント撤収し、午後7時45分、下山開始する。スリップしそうな急斜面に注意しつつ、1時間で端足峠到着。A沢貯水池周辺の撮影ポイントをチェックしながらも、10時前に駐車場に到着した。

 山の景色は登ってみなければわからない。天候が崩れる前、そして回復してくる時にはこのようなドラマチックな展開となることがあるのだが、ほとんどの場合は空振りに終わる。しかし、こういう景色を見てしまうと見込みが薄いのを承知でまた来たくなる。中毒のようなものだろう。
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