平成20年6月6-7日 天候晴れ
梅雨時にしては珍しく、天気予報で週末晴れそうだ。7日の土曜日は良さそうだが8日には雲が広がるらしい。となると、ねらい目は6日の金曜日の夜空。アストロガイドとカシミール3Dで天の川の位置を調べると、深夜11時ごろから横岳から見る赤岳が良さそうだ。細い月は9時半には西の空に沈み、星空撮影には絶好の条件となる。ただ問題は何時に横岳に到着できるか。午前中の仕事と雑務を片付けて、甲府を出発したのは午後3時近くになってしまった。
美濃戸口を過ぎて美濃戸まで車で行く。途中を大きなザック担いで林道を歩いている若者がいたので乗せてあげると、赤岳鉱泉で働いている人だった。山の情報を聞くと、今年は雪が多く、1週間前はまだツクモグサは咲いていなかったという。昨年同時期にはまだほころびかけた頃だった。本日の宿泊先を聞かれたので行者小屋に泊り、空を見て横岳に星空を撮影に行くと答えた。さて、美濃戸には午後4時到着、昨年ホテイランを見られずに悔しい思いをしたので、赤岳山荘に駐車料金を払うかたわら、念入りにホテイランの咲いている場所を聞いて行く。南沢沿いの意外と近い場所に一輪咲いているのを見つけた。ゆっくり探してはいられないので、帰り際に探すことにして先を急ぐ。途中で左に曲がって沢から離れて道がつけられている箇所があるのだが、間違えて倒木をまたいで直進してしまった。その先には滝が2つ、一つは幅3mほどあり、徒渉はやや危なそう。どうみても道を間違えたのだが、滝の向うに細い踏み跡らしきものがあるので、たぶん左手に登って行けば道に出るはず。と勝手に決めつけて滝を渡り、獣道のような道を伝って左斜面を登る。しかし、2段ほど上まで登ったが道は見当たらず、おかげで滝の源頭を見ることができた。さらに沢を遡上するように斜面に沿って進み、もう一段上に登ったところでようやく登山道に出た。体力・時間ともだいぶ消費する。

強行突破して渡渉した南沢に注ぐ滝。どう見ても道間違ってるだろう。
そんなこともあって、行者小屋に到着したのは6時45分だった。空を見上げると曇り空、赤岳や横岳には大きな雲がかかり、山頂は見えない。しかし、時折雲の切れ間から青空が見え隠れする。夜になって空気が冷えれば、雲は下に行くに違いない、そう言い聞かせて夕暮れの地蔵尾根をヘッドライト点灯し、登り始める。樹林帯の中は雪があるので、昼間ならばアイゼン不要だが夜なので簡易アイゼン装着して登る。途中は完全に雲の中、白い霧が目の前を流れてゆく。稜線下の地蔵が待つ展望台に到着したのは8時40分ごろだった。雲の彼方に薄明かり、細い三日月の光が見えるようになってきた。1年ぶりのお地蔵さんと対面し、ひと息入れていると、パッと雲が飛び、阿弥陀岳が姿を現す。そして諏訪の町明り、沈み行く三日月。空を見上げると阿弥陀の右上にふたご座のカストルとポルックスが輝いている。天の恵み、お地蔵さんに感謝する。しばし夜の景色を眺めて再び登る。
地蔵尾根を登り切ったところで赤岳を見上げると、さそり座が縦に登り、全容を現していた。しかし時間はまだ早い。狙うのはさそりが赤岳に寝そべるように傾き、その左に天の川が輝く時間。横岳への登りのハシゴと鎖が心配だったので、慎重に通過して中腹の平らになった場所まで行く。時間は10時、ほぼ予定通りの時間に無事到着できた。この頃には雲はすっかり晴れ、凄い星空が広がっていた。登って来た甲斐があった。本日はボーナス前借りでCanonの新しいレンズ(値段10万円!)に変えてきたので、どういう写り方をするのかも楽しみだ。三脚とカメラセットし、長時間露光撮影しつつ、寝所を確保、といってもどうせ徹夜で撮影なので、持って来たのはツエルトとシュラフカバー、マットのみ。あとはダウンジャケットとカッパで寒さを凌ぐ。だいぶ雪を踏んだので足先が冷たく感じ、ホッカイロを貼ったのみであまり寒さを感じずに一夜を過ごすことができた。

赤岳の夜(ホワイトバランス日陰) 甲府盆地の町明かりが強い。
狙っていた甲府盆地側の天の川は、甲府盆地の明りが明るすぎて期待通りに写ってはくれなかった。しかし、赤岳の真上を通り過ぎて行くさそり座は圧巻だった。そして深夜2時過ぎ、赤岳の右側に出た天の川は見事だった。時折雲が流れて視界が遮られる中、幸運なことに1枚だけレンズが薄く結露したおかげで木星が幻想的な光を放ってくれた。これも天の恵みだ。

木星輝く

天の川輝く

スター・ダストとカシオペア座 岩峰は横岳。
1時間ほど横になったほかは(予定通り)眠ることも無く朝を迎える。赤く染まる赤岳を期待したのだがあまり染まることなく日が登る。5時半、ツエルトを片付け、もう一つの目的、横岳のツクモグサを見に行く。10分ほど上に登ると長い鎖のつけられた斜面があり、そこはまだ雪渓が残り、凍りついていた。鎖につかまりながら慎重に通過し、登り切って左側の斜面にツクモグサがたくさん咲く場所がある。そこは踏まれないように緑のロープが張られている。近付くと、昨年の倍くらいあるだろうか、まだ花は開いていないものの、たくさんのツクモグサが土の中から顔を出していた。ふさふさと毛の生えたその姿は可愛らしくて愛嬌たっぷりだ。今年も会うことができた。来週ごろから見頃を迎えそうだ。

朝の赤岳

赤岳と富士 一段登ったところから撮影。

横岳のツクモグサ 昨年に比べて花の数は今年のほうが多い。

まだ蕾のツクモグサ
地蔵尾根の分岐まで下り、さてどうするか。まだ時間は7時前だが、寝不足で体がだるく、歩くのは結構辛い。3年前に1度登っただけの赤岳が目の前に聳えている。とりあえず赤岳展望荘まで行って休憩。元気は無いがこの日は雲海の上の抜群の眺望、赤岳山頂からは権現岳の上に南アルプスが見えるはずだ。だるい体を引きずって赤岳に登る。8時半赤岳山頂到着、予想通り雲の上に姿を見せる南アルプス、雲巻く権現岳の眺望を楽しむことができた。9時には下山開始するが、全くピッチ上がらず文三郎尾根を転ばないようにダラダラと歩く。行者小屋で軽食をとり、南沢を戻るが、上りの時は沢沿いにずっと歩いてきたと思ったのだが下りは沢の左側の林を歩く道だった。どうも上りながら2度道を間違えたらしい。ホテイランのあるあたりで登山道周辺に気をつけながら歩いていると、目的地の手前で1本発見、さらに渡渉してすぐのところにもう1本、道をはずれて斜面を見渡すと数本咲いており、計6本自力で見つけることができた。赤岳山荘のおかみさんに教えてもらったあたりは数人のカメラマンが撮影に夢中で、またホテイラン探しを目的に来ていた3人組のおばさんたちは、なんと、19本も見つけたという。ちょうど最盛期だったようで、こんなにたくさん咲いているとは思ってもいなかった。稀少なランをたっぷり堪能し、美濃戸駐車場に午後1時半到着。眠い目をこすりながら、顔に張り手をくれつつ車を運転し甲府に戻る。夜間強行登山でちょっと危険だったが充実した山行だった。

赤岳頂上小屋から見る山頂。向うに甲斐駒・仙丈が見える。

赤岳山頂から見る権現岳と南アルプス

南沢に咲いていたホテイラン
梅雨時にしては珍しく、天気予報で週末晴れそうだ。7日の土曜日は良さそうだが8日には雲が広がるらしい。となると、ねらい目は6日の金曜日の夜空。アストロガイドとカシミール3Dで天の川の位置を調べると、深夜11時ごろから横岳から見る赤岳が良さそうだ。細い月は9時半には西の空に沈み、星空撮影には絶好の条件となる。ただ問題は何時に横岳に到着できるか。午前中の仕事と雑務を片付けて、甲府を出発したのは午後3時近くになってしまった。
美濃戸口を過ぎて美濃戸まで車で行く。途中を大きなザック担いで林道を歩いている若者がいたので乗せてあげると、赤岳鉱泉で働いている人だった。山の情報を聞くと、今年は雪が多く、1週間前はまだツクモグサは咲いていなかったという。昨年同時期にはまだほころびかけた頃だった。本日の宿泊先を聞かれたので行者小屋に泊り、空を見て横岳に星空を撮影に行くと答えた。さて、美濃戸には午後4時到着、昨年ホテイランを見られずに悔しい思いをしたので、赤岳山荘に駐車料金を払うかたわら、念入りにホテイランの咲いている場所を聞いて行く。南沢沿いの意外と近い場所に一輪咲いているのを見つけた。ゆっくり探してはいられないので、帰り際に探すことにして先を急ぐ。途中で左に曲がって沢から離れて道がつけられている箇所があるのだが、間違えて倒木をまたいで直進してしまった。その先には滝が2つ、一つは幅3mほどあり、徒渉はやや危なそう。どうみても道を間違えたのだが、滝の向うに細い踏み跡らしきものがあるので、たぶん左手に登って行けば道に出るはず。と勝手に決めつけて滝を渡り、獣道のような道を伝って左斜面を登る。しかし、2段ほど上まで登ったが道は見当たらず、おかげで滝の源頭を見ることができた。さらに沢を遡上するように斜面に沿って進み、もう一段上に登ったところでようやく登山道に出た。体力・時間ともだいぶ消費する。

強行突破して渡渉した南沢に注ぐ滝。どう見ても道間違ってるだろう。
そんなこともあって、行者小屋に到着したのは6時45分だった。空を見上げると曇り空、赤岳や横岳には大きな雲がかかり、山頂は見えない。しかし、時折雲の切れ間から青空が見え隠れする。夜になって空気が冷えれば、雲は下に行くに違いない、そう言い聞かせて夕暮れの地蔵尾根をヘッドライト点灯し、登り始める。樹林帯の中は雪があるので、昼間ならばアイゼン不要だが夜なので簡易アイゼン装着して登る。途中は完全に雲の中、白い霧が目の前を流れてゆく。稜線下の地蔵が待つ展望台に到着したのは8時40分ごろだった。雲の彼方に薄明かり、細い三日月の光が見えるようになってきた。1年ぶりのお地蔵さんと対面し、ひと息入れていると、パッと雲が飛び、阿弥陀岳が姿を現す。そして諏訪の町明り、沈み行く三日月。空を見上げると阿弥陀の右上にふたご座のカストルとポルックスが輝いている。天の恵み、お地蔵さんに感謝する。しばし夜の景色を眺めて再び登る。
地蔵尾根を登り切ったところで赤岳を見上げると、さそり座が縦に登り、全容を現していた。しかし時間はまだ早い。狙うのはさそりが赤岳に寝そべるように傾き、その左に天の川が輝く時間。横岳への登りのハシゴと鎖が心配だったので、慎重に通過して中腹の平らになった場所まで行く。時間は10時、ほぼ予定通りの時間に無事到着できた。この頃には雲はすっかり晴れ、凄い星空が広がっていた。登って来た甲斐があった。本日はボーナス前借りでCanonの新しいレンズ(値段10万円!)に変えてきたので、どういう写り方をするのかも楽しみだ。三脚とカメラセットし、長時間露光撮影しつつ、寝所を確保、といってもどうせ徹夜で撮影なので、持って来たのはツエルトとシュラフカバー、マットのみ。あとはダウンジャケットとカッパで寒さを凌ぐ。だいぶ雪を踏んだので足先が冷たく感じ、ホッカイロを貼ったのみであまり寒さを感じずに一夜を過ごすことができた。

赤岳の夜(ホワイトバランス日陰) 甲府盆地の町明かりが強い。
狙っていた甲府盆地側の天の川は、甲府盆地の明りが明るすぎて期待通りに写ってはくれなかった。しかし、赤岳の真上を通り過ぎて行くさそり座は圧巻だった。そして深夜2時過ぎ、赤岳の右側に出た天の川は見事だった。時折雲が流れて視界が遮られる中、幸運なことに1枚だけレンズが薄く結露したおかげで木星が幻想的な光を放ってくれた。これも天の恵みだ。

木星輝く

天の川輝く

スター・ダストとカシオペア座 岩峰は横岳。
1時間ほど横になったほかは(予定通り)眠ることも無く朝を迎える。赤く染まる赤岳を期待したのだがあまり染まることなく日が登る。5時半、ツエルトを片付け、もう一つの目的、横岳のツクモグサを見に行く。10分ほど上に登ると長い鎖のつけられた斜面があり、そこはまだ雪渓が残り、凍りついていた。鎖につかまりながら慎重に通過し、登り切って左側の斜面にツクモグサがたくさん咲く場所がある。そこは踏まれないように緑のロープが張られている。近付くと、昨年の倍くらいあるだろうか、まだ花は開いていないものの、たくさんのツクモグサが土の中から顔を出していた。ふさふさと毛の生えたその姿は可愛らしくて愛嬌たっぷりだ。今年も会うことができた。来週ごろから見頃を迎えそうだ。

朝の赤岳

赤岳と富士 一段登ったところから撮影。

横岳のツクモグサ 昨年に比べて花の数は今年のほうが多い。

まだ蕾のツクモグサ
地蔵尾根の分岐まで下り、さてどうするか。まだ時間は7時前だが、寝不足で体がだるく、歩くのは結構辛い。3年前に1度登っただけの赤岳が目の前に聳えている。とりあえず赤岳展望荘まで行って休憩。元気は無いがこの日は雲海の上の抜群の眺望、赤岳山頂からは権現岳の上に南アルプスが見えるはずだ。だるい体を引きずって赤岳に登る。8時半赤岳山頂到着、予想通り雲の上に姿を見せる南アルプス、雲巻く権現岳の眺望を楽しむことができた。9時には下山開始するが、全くピッチ上がらず文三郎尾根を転ばないようにダラダラと歩く。行者小屋で軽食をとり、南沢を戻るが、上りの時は沢沿いにずっと歩いてきたと思ったのだが下りは沢の左側の林を歩く道だった。どうも上りながら2度道を間違えたらしい。ホテイランのあるあたりで登山道周辺に気をつけながら歩いていると、目的地の手前で1本発見、さらに渡渉してすぐのところにもう1本、道をはずれて斜面を見渡すと数本咲いており、計6本自力で見つけることができた。赤岳山荘のおかみさんに教えてもらったあたりは数人のカメラマンが撮影に夢中で、またホテイラン探しを目的に来ていた3人組のおばさんたちは、なんと、19本も見つけたという。ちょうど最盛期だったようで、こんなにたくさん咲いているとは思ってもいなかった。稀少なランをたっぷり堪能し、美濃戸駐車場に午後1時半到着。眠い目をこすりながら、顔に張り手をくれつつ車を運転し甲府に戻る。夜間強行登山でちょっと危険だったが充実した山行だった。

赤岳頂上小屋から見る山頂。向うに甲斐駒・仙丈が見える。

赤岳山頂から見る権現岳と南アルプス

南沢に咲いていたホテイラン